星空からの客人
旅車を走らせ、川沿いについて予定どうり、シュヴとスレイは魚釣り、モンドとイブは山で狩りとなった。
旅車の中に釣り道具や狩り用の弓と矢はある、といことは、どうやら前の持ち主は魚や肉は自分で毎日調達しているスタイルだったようだ。
「う~ん、いないな~」
モンドは贈知魔法『狩人の眼光』生物の大まかではあるが、場所、種類、大きさなどを見ている。
「足跡すらないです~、ご主人様」
イブは下つまり地面を見ながらそう言う。
モンドが今いる獲物を探し、イブが獲物の痕跡を探す
とりあえず今は、そういう役割分担だが、狩人の眼光が映すのは食べ物にならない動植物ばかりで、獣や鳥の鳴き声はおろか足跡や糞すら見つからない。
枯れ木が多いとはいえ、鬱蒼と生い茂る森林には不釣りあいなほど静寂に満ちた空間は恐ろしく不気味であった。
モンドは獲物はないという判断と早くこの場を立ち去りたいという思いから
「イブ、一旦帰るか」
イブの帰ろうと提案する
「はい、ボクも早く帰りたいです」
イブもモンドと同じことを考えてくれたのか賛成してくれた。
二人が帰る途中モンドは偶然、ふるぼけた、しかし小奇麗な本を見つけ、拾い上げた。
「ご主人様、なんですかそれ? 」
イブが銀色の髪をゆらし、首をかしげる。
「ああ、これは多分だが『星喚書』だな」
「星喚書ってあの星喚書ですか! ご主人様! 」
『星喚書』とは、この世ならざるもの『星来者』を呼び出す本で、役書魔法に無くてはならないものだ。
しかし、『星喚書』があれば誰でも呼び出せるというわけではない、呼び出すのに相応しい実力と、呼び出す星来者との相性が良くなければ出てくれないものだ。
役書魔法で呼び出した星来者は『役物』と言う
役書魔法は資質の要素が強く『六芒星の秘術』だが本質的には『星質』に近い少し変わった魔法だ。
モンドには、こんな所にそんな物があるかはわからないが、せっかくなので星喚書で星来者を召喚してみようと思い、本の中から召喚方法のページを探した。
星喚書にはかならず召喚方法のページがあり、その方法はさまざまだ。
「お、あった、あった」
モンドは召喚方法のページを見つけた。
「どんなのが来るか楽しみです! 」
イブはワクワクした様子で答える。
「こればっかりは、俺でも出せないかもしれないな」
モンドがそう言うと
「ご主人様はすごいですから、きっと出来ます! 」
イブはそう返した。
イブの期待を裏切らないよう、出てきて欲しいもんだな
モンドはそう考えながら、召喚方法のページを読み進める。
「うん、うん、ふ~ん、なるほどぉ、名前を呼ぶだけか……」
モンドが頷きながらにそう言うと
「なんだか、すっごくお手軽ですね」
イブのその言葉に
「ま、楽でいいじゃん」
と答え
「リ……リリト・スグブス! 」
星喚書に書いてあった召喚方法どうりにやってみた。
…………
……
「何も起きないな」
モンドがそう言った瞬間
星喚書が急激に強く光り出す。
「ぬわ! 」
「きゃ! 」
モンドとイブが驚きの声を上げている間に二人の目の前に豊満で扇動的なつまりボン・キュ・ボンな裸の赤く長いウェーブがかった髪の女性が現れた
現れた女性は閉じていた赤い瞳をゆっくり開けた。
まさか本当に現れるとは……
そんな事をモンドが考えると
「あなたが持ち主様ですねー! 」
女性はモンドの腕にいきなりだきついてきた。
「ぬお……ちょ! 」
モンドは自分たちの探していた胃袋を満たすための肉ではなく股間をふくれあがらせる肉の感触に驚きの声を上げる。
「ちょ、ちょ! お前がリリト・スグブスか? 」
動揺しながらもモンドがそう聞くと
「は~い、持ち主様ぁ~、リリトで~す」
妙に色気のあるしゃべり方でそう答えた。
「ちょっと! ご主人様が嫌がってますから離れてください~!! 」
イブは怒りの含んだ声音でそう言うと、モンドからリリトを離そうとひっぱた。
「ちょっとぉ~あたしにはそっちの趣味はないんだけど~」
リリトが邪魔そうに言う
「まあ、とりあえずリリト離れてくれ、あと服も来てくれ」
モンドは状況の収拾と自分の股間を鎮めるためリリトにそう言うと
「は~い」
とリリトはしぶしぶといった感じでモンドの腕から離れた。
「ほい」
リリトがそう言うと自身の体の周りが光りだしたかと思うと、森林であるこの場にはふさわしくない肩と胸元が大きくあいた黒いワンピースになった。
「そういえば、持ち主様の名前は? 」
リリトがそんな事を聞いてきたので
「モンド・ムッボシだ」
モンドは答えると
「じゃあ、モンドって呼ぶね」
リリトは親しげに、そう言ってきた。
「どうします? 」
イブが小声でモンドに言う
「とりあえず、連れて帰るしかないだろう」
モンドはそう小声で答えた。
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旅車が川沿いについてしばらくたったころ。
魚はまだ一匹も釣れていない
魚がまだ一匹も釣れていないシュヴは、まるで磨き上げられた最高級のダイヤモンドのように濁りひとつない、綺麗な美しい川を眺めていた。
「綺麗すぎる……」
シュヴはそうつぶやいた。
魚が生息する川はある程度濁っている、プランクトンを小魚が食べ、小魚を大きい魚が食べ、そして大きな魚の糞や死体をプランクトンが分解する、そういう食物連鎖が正しく成りたっている川が生き物が多くよく魚が釣れる場所だ。
シュヴは透明なビンをもってきて川の水をすくい取ると
まるで何もないかのようなぐらい、透明だった。
「プランクトンはいなさそうだな、しかたがないイブとモンドが帰ってきたら場所を変えるか」
不自然をとうりこして異常とも見える川の状態に、魚が釣れる釣れない以前に、なにか、もっと別の、本能に近い部分でここにいたくないとシュヴが思っていると。
森からモンドとイブ、そしてシュヴが知らない赤髪の黒いワンピース姿の女がでてきた。
誰だあいつ……。
シュヴはそう思い、三人のもとへ駆けよった。
「おい、モンドなんだこいつ? もしかして、食べるつもりなのか?! 」
シュヴが驚くようにそう言うと
「そんなわけねーだろ! 」
モンドが大きめの声で言ったあと
「性的になら食べてもいいよ」
リリトがそう言って、妖艶に笑う
「やめてください! リリトさん! 」
そう言った、イブ怒ったような顔をしている
「どういうことだよ」
混乱したようにシュヴがそう言うので
「と、とりあえずスレイが来てから一緒に車の中で話すよ……」
モンドは苦笑いしながらそう返した。