↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/53

マネカレザルモノ

 『テラテッラ』は『ナシオン集合(しゅうごう)国(こく)』という国一つしかない。


 そして五つの州(しゅう)に分けられている。


 北の『ノルテ』


 西の『オエステ』


 東の『エステ』


 南の『スル』


 そして、中央(ちゅうおう)の『セントロ』


 ノルテ州の最高権力者であるマルスコイ・ボーブルは仕事部屋である報告を受けている。


「うむ……それは本当なのか? 」


 マルスコイという男は部下をとても信頼する人柄(ひとがら)だ、しかしその報告のあまりの衝撃と絶望に疑念の声が漏(も)れてしまった。


「誠(まこと)に残念でありますが……事実です」


 部下と思われる男がそう言うと


「そうか、場所は」


 マルスコイは悲嘆(ひたん)に暮(くれ)れているわけにもいかないので部下にそう聞くと


「リオンダリ区です。」


 部下がそう答えると


「そうか……」


 リオンダリ区は人里(ひとざと)離れた僻地(へきち)、とりあえず人的被害は最小限に抑(おさ)えられそうだ。


 マルスコイはそう思い、少しだけ安堵(あんど)の声を漏(も)らす。


「とりあえず、避難命令を出し、対策本部を立ち上げろ」


 マルスコイは部下に迷わずそう言う


「はい、わかりました」


 部下はそう言って一度お辞儀(じぎ)したあと、部屋を出た。


 だいぶ前からリオンダリ区の異変については耳にしていた、しかしここまで凶悪なものが現れるとは予測を大きくこえていた、果たして我々(われわれ)は星(エトワル)からの驚異(きょうい)にどれだけ対抗(たいこう)できるのか。


 約230年前、たった一体でノルテの7割をわずか一日で更地(さらち)に変えた招(まね)かれざる星来者(エトヴニル)、『無貌の獅子(リッツォニヒルリェフ)』とも呼(よ)ばれる『ニャルラトテップ』が二体も現(あらわ)れるという報告にマルスコイはそう思った。



......................................................



 モンドとイブは、シュヴとスレイに、リリトが現(あらわ)れた顛末(てんまつ)をこと細(こま)かに説明した。


「つまり、こいつは役物(ヴェルチュ)なのか」


 リリトを指さしながらシュヴはそう言う。


「うん!  そうだよ~」


 リリトが笑いながら、そう言う


「なぁモンド、こいつ出しっぱなしだが代償(だいしょう)とか大丈夫なのか? 」


 シュヴはモンドにそう聞く


「代償って? 」


 モンドがそう言うと


「はぁ、役書(えきしょ)魔法は役物(ヴェルチュ)を出している間(あいだ)何(なに)かしらの代償(だいしょう)を払い続けなければいけないんだよ、だから出しっぱなしで大丈夫かって聞いたんだよ」


 シュヴが呆(あき)れたように言うと


「う~ん、どうなの? 」


 モンドがリリトに聞くと


「あ、この姿(すがた)なら代償(だいしょう)はないよ」


 リリトの説明に


「だってさ」


 モンドがシュヴにそう言うと


「だってさ、じゃあねぇーよ! お前さぁ、星喚書(グリムアール)ってなんで本の形(かたち)をしているか知ってか、自分が今から呼び出そうとしている役物(ヴェルチュ)がどういう能力で、どういう代償かってのを把握(はあく)するためにあるんだぜ?  それをお前はさ~、ろくに中身も見ずテキト~に召喚(しょうかん)してさ、もし危険な奴(やつ)だったらどうするつもりだったんだ! 」


 シュヴがモンドのことを叱(しか)ると


「ごめんなさい! ご主人様に役書(えきしょ)魔法を早く見てみたいって急(せ)かしたのはボクです! 怒るならボクにしてください! 」


 イブが目に涙を浮(う)かばせながらそう言うと


「あ! いや! べつにモンドを怒っているわけじゃないぞ、ただオレはもっと責任感をもって行動しろって言っただけで……」


 シュヴが首に手をやりバツの悪そうな顔をする。


「いや、俺の行動はシュヴが言うとうり、浅(あさ)はかなものだったし、きっとイブがいなくても同じことをしたと思うよ」


 モンドがそう言うと


「うんまぁ、オレの言葉もきつかったかもな」


 シュヴも続けてそう言った。


「まあまあ、とりあえずリリトさんの星喚書(グリムアール)はみんなで確認(かくにん)してみましょう」


 スレイがそう提案してきた。


「うんまぁ、そうだな、リリト悪いけどいったん星喚書(グリムアール)になってくれ」


 モンドがリリトにお願(ねが)いすると


「はーい」


 リリトがそう言った直後。


 リリトの体が光ったと思うと、一冊の本が置かれていた。


 モンド、シュヴ、イブ、スレイの四人はリリトの星喚書(グリムアール)の中を見てみる。


「お、二つ名みたいのがあった」


 モンドがそう言うと


「『始(はじ)まりの女(おんな)』、『根源の龍(ナチャーロドラコーン)』、『常闇(とこやみ)の女王(じょおう)』ですか……」


 スレイが読み上げる


「ずいぶんと、ご大層(たいそう)だな」


 シュヴそんな事を言う。


 ふむふむ……。

 

 そうか……。


 へ~……。


 …………


 ……

 

 しばらくたちリリトの星喚書(グリムアール)にだいたい目を通しおえた。


 すると星喚書(グリムアール)が光りだし


 リリトが現れた。


 服は着ている、よかった……。


 モンドがそう安心(あんしん)すると


「ああん! あたしの全部みんなに、すみずみまで見られちゃった……」


 リリトが無駄に色気のある声を出す


「ちょっと、変態みたいな声を出さないでください」


 イブがそう言うと


「変態って失礼ね~」


 リリトがそう返した


「まぁ、危険はないようだし、なかなかの強さだし、捨てる必要はないな」


 シュヴがそう言うと


「捨てるつもりだったの! ひっどお~い」


 リリトがそう返す


「まぁ、そう怒んなって」


 シュヴが笑いながら言うと


「怒ってないよ~」


 リリトは陽気に返す。


「ま、とにかくリリトの話が終わったとこで、次は移動する場所についてだな」


 シュヴがそう言うと


「移動する場所? 」


 リリトがシュヴにそう聞くと


「ああ、お前は知らないか、オレたちは今、魚や肉がないから、それがある場所を探しているんだよ」


 シュヴがそう言うと


「ここには、なかったの? 」


 リリトがシュヴに質問する


「ああ、なんでか知らないが、なかったんだよな~」


 シュヴがそう答える


「なんでだろうね」

 

 リリトがそういったのと同じぐらいのタイミングで


「地図をもってきました」


 スレイが、そう言う


「お、どうも」


 シュヴがそう言いながら地図を広げる


「オレたちがいるのはここだな」


 地図には一つの大陸が描(えが)かれており、シュヴはその北の部分を指でさす。


 リ……リオンダリ区か……


 モンドがそう思った瞬間。


 突然(とつぜん)はげしい閃光(せんこう)、轟音(ごうおん)、衝撃(しょうげき)がモンドたち五人を襲う。


 モンドたち全員は驚いたあと、すぐに何があったか見るために外へ出た。


 すると


 そこには


 大きな、どす黒い獣、しかし頭の部分は顔のない人間のような姿をした異形(いぎょう)の化物(ばけもの)がいた。


 しかも二体もだ。


 その異形の化物二体は何もせず、ただじっと佇(たたず)んでいる。


「なんだ、あいつらは? 」


 モンドがそう言うと


「あいつらは『魔物(ヴィス)』だな……」

 

 『魔物(ヴィス)』それは、役書(えきしょ)魔法以外の方法(ほうほう)で現(あら)れた星来者(エトヴニル)、基本的には一、二日で消えるもので、自然的(そぜんてき)に現れるため災害の一種として扱(あつか)われている。


「しかも、ありゃニャルラトテップだな、ということは神話級(ミートドマレ)か」


 シュヴがそう言うと

 

「神話級(ミートドマレ)? 」


 聞きなれない単語にモンドはそう質問した


「ああ、一級、二級ってあるだろう」


 シュヴのその言葉に


「ああ」


 モンドはそう返す。


「その上に特級(とくきゅう)があるんだが、さらに上に幻級(ファントムドマレ)その上に伝承級(フォルクローレドマレ)そして一番上に神話級(ミートドマレ)があるんだ」


 シュヴの説明に


「ほお~」


 モンドがそう返す


 二人がのんきにしゃべっている間に


 ニャルラトテップ二体がこちらに気づいた。


 こちらに攻撃をするつもりだ


 聖なる言葉を唱え


「『盾無歌(スクテュム)』」


 と言いニャルラトテップ二体の周(まわ)りを障壁でかこむ


 ニャルラトテップ二体はそんなのお構(かま)いなしに攻撃を行(おこな)った


 この攻撃は『闇にほえる狂音(オプスクリダスゴロス)』といい、果(は)てしなく強力な音波を一つの方向にまとめたもので、その威力は一体で大きな山を十個は平地に変えてしまうほどだ。


 しかし、モンドの盾無歌(スクテュム)にはヒビ一つはいらない。


「へ~、顔なしなのに声で攻撃か、おもしろいな」


 モンドが盾無歌(スクテュム)を解除すると


 ニャルラトテップは互(たが)いに別の方向へ気をなぎ倒し大きな音を響(ひび)かせながらながら高速で移動する。


「別れやがった」


 モンドがそう苦(にが)い顔で言うと


「あ、じゃあ、あたしが一体やるね」


 リリトがそう言う


「お、助かるね」


 モンドのその言葉のあとでリリトの体に変化が起きた。


 白くしなやかだった手足が黒く膨(ふく)れ上がり鱗(うろこ)と鉤爪(かぎづめ)のある手足になり、真っ黒な大きなコウモリのような翼と太く長い尻尾をはやし、口から牙(きば)がはえ、額から天を刺すように黒い角(つの)をはやし、白目の部分が真っ黒になっていた。


 まるで竜人(りゅうじん)だな……


 そう思うと同時にモンドの魔力が半分ぐらいになった。


 これは、リリトが竜人の姿になると発動する持ち主の魔力が半分になるという代償によるものだ。


 しかし、モンドは半分の魔力でもニャルラトテップを簡単に始末できるので、あまり気にならなかった。


 リリトは高速で空を駆(か)けニャルラトテップに一瞬で追(お)いつく


 そして、大きく息(いき)を吸(す)い


 大量の黒い炎、『欲深き黒い獄焔《ジャドノスチョルヌィプラミャ》』を吐(は)き出す。


 この黒い炎は万物(ばんぶつ)を完膚(かんぷ)なきまでに燃(も)やし尽(つ)くし、リリトが許可しないかぎり永遠に絶対に消えることはない。


 

 ニャルラトテップはぐもった苦悶(くもん)の声を上げながら、のたうち回っていたが十秒もしないうちに消えてなくなってしまった。


「瞬殺(しゅんさつ)するとか」


 まさか、竜人の形態(けいたい)で神話級(ミートドマレ)をあそこまで簡単に消すとは……


 シュヴはリリトの予想外の強さに驚く。


 一方(いっぽう)、モンドは速敏歌(デヌンジャショ)で自身の速さを上げ、自分の指を噛(か)みちぎり血液をニャルラトテップにつ


「『終命呪(ハニヤハヤ)』」


 と言う


 終命呪(ハニヤハヤ)は生命力そのものを削(けづ)る魔法、その効果で

 

 ニャルラトテップは急に倒れこみ苦しそうな唸(うな)り声を上げた。


「半分の魔力だとこんなもんか」


 そう言うと


 聖なる言葉を唱え


「『盾無歌(スクテュム)』」


 そう言うとニャルラトテップの周りに障壁(しょうへき)ができた。


 その、障壁(しょうへき)には少しだけ穴があいており。


円と文字を書き


「『灼弾(カロルエフェラ)』」


 そう言うと


 超圧縮(ちょうあっしゅく)した炎熱の塊(かたまり)を障壁の穴に放(ほう)り込(こ)み、すぐに穴を閉じる


 炎熱の塊が急激(きゅうげき)に膨張(ぼうちょう)、つまり爆発した。


 障壁に囲(かこ)まれた熱と衝撃は逃げることなくニャルラトテップにすべて襲いかかる。


 弱ったニャルラトテップはその猛攻(もうこう)に十秒もたえ切れず、消滅した。


「ふう、思ったより弱かったな」


 モンドがそう言うと


「そうだね」


 竜人形態(りゅうじんけいたい)を解いたリリトがそう返(かえ)す


「お前らが、無駄に強すぎるんだよ」


 シュヴが二人に対してそう言う


 さっきまでこの世の終わりのような顔をしていた、イブとスレイがこちらを見て。


「勝ったんですか……? よかったぁ助かったぁ」


 スレイは そう、安堵(あんど)する。


 イブは何も言わなかったが


 このぐらい強くなりたい


 そう思っていた。




......................................................


 


 マルスコイ・ボーブルは対策本部(たいさくほんぶ)で信じられないようなことを耳にした。


「も、申し上げます! ニャルラトテップが、し、消滅しました! それも、自然にではなく人の手によります! 」


 報告をしに来た男もまるでありえないことを、無理やり言わされているように見える。


「な、なに! どういうことだ! 」 


 マルスコイは声を荒(あ)げる


「も、目下(もっか)調査中です! 」


 男はそう答えた。


 どういう……ことだ……。


 マルスコイだけでなく、この場にいる全員がそう考えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。