全てを蹂躙する龍
モンド、リリト、フォレナの三人は、セヴェル街を覆い尽くすしてなお、ありあまる大きさケートスの上に乗り、そのケートスが点に見えるほどの巨大で天高く舞い踊る『ゲンブ』と対峙する。
「にしてもでかいな」
モンドは、まだ遥か向こうにいるのに、まるで目の前にいるかのように見える、浮いた大地そのものを前に、言葉がもれ出てしまう
「ケートス、『夕暮れの空』だ」
フォレナがそう言うと、遠い先で目が痛くなるほど強い真っ赤な光がが輝いたかと思うと、みるみる小さくなっていき、最後にはゲンブの体に当たる
ゲンブの体に小さな穴あき、無数の欠片が散らばるが、すぐに欠片は穴を埋め何事も無かったかのようになる。
「ちまちまダメージを与える方法はダメか……」
フォレナは苦虫を噛み潰したような表情になる
今までゆったりと動いていたゲンブが急に素早く動き始め、ケートスの上空に移動する
「一体、何が目的なんだ? 」
モンドは、空の半分を覆い尽くすゲンブ仰ぎ見ながらそう口にする。
「わかんない、でもこちらの様子を伺っている」
同じく、上を見るリリトが眉をひそめ目を薄める
「様子を伺っている? そんな必要があるのか? 」
悔しいながらも、ただ通り過ぎるだけで全てが消えるゲンブが警戒する姿があまり想像できないフォレナは怪訝な顔になる
「さあな」
モンドはそう言いながらも、完全に選択を見誤った後悔する
ゲンブという魔物は小さいが山脈をコントロールするという性質が厄介なのだ、あのデカイ体がすべて魔物の本体であるなら楽に片づけれるが、そうでないため倒してしまうとコントロールを失った超質量の物体が空から落ちるということになる、つまり圧倒的な物理エネルギーが発生してしまう、そうなるとどんな影響が出るかわからなかったし、リリトの『欲深き黒い獄焔』で焼き尽くせる確証もなかったモンドは、ゲンブは早く移動できないとたかをくくってしまい、しばらくは様子見と考えていたが
予想以上に素早い動きで上をとられてしまった、こうなるとさらに厄介である、たとえ一撃で細切れにできても、元が大きすぎるため、破片の一つ一つがおそらく人一人分の何倍もある、そんなものが落ちればセヴェル街は大惨事になってしまう、犠牲は仕方がないと割り切れないモンドは思考が硬直してしまう
「リリト……ゲンブをバラバラにしたらどのぐらいで消滅させられる?」
モンドは、ダメもとでリリトに聞くと
「竜人の形態なら20分、竜の形態なら10分だと思う」
つまりモンドはリリトが形態変化したら魔力の量が減るという誓約のため、半分の魔力で20分もしくは3割程度の魔力で10分、時間を稼ぐことが必要、落下の時間と、モンドの『盾無歌』を合わせてもかなり厳しいタイム、そもそもリリトが言った時間にはあまり根拠がないので、かなり余暇時間を見積もらないと安全とは言い難い。
モンドがいろいろ考えて頭を抱えていると
「なあ考え中のところ悪いが、何か考えているなら知恵を貸すぞ」
フォレナは真剣な眼差しでモンドを見つめる
「ああ、どうにかしてゲンブを上に押し上げれることはできないか? 」
とりあえずモンドは、一番理想的な案を求める
「……、ゲンブはお前たちを警戒して、遠くから様子を伺っているんだろ? ならお前たちが上に上がれば上がるほど、ゲンブも上に行くんじゃないのか? 」
フォレナが少し考えるように下あと、そう言う
「試す価値はあるな」
モンドがそう言うと、フォレナはケートスに指示を出し上にのぼる
すると、ゲンブも上にのぼった
「よし行ける! そのまま限界まで上にとんでくれ! 」
モンドが希望に満ちた声を出す
そのまま、グングン上へ上へ、のぼりつづける
世界の大地すべてが見えるようななった頃、『現界』と『星界』の境界の近くまで来る
「リリト、俺が奴を砕いたら、すぐ竜の形態になれ、そして破片全てを『欲深き黒い獄焔』で焼いた後、すぐに人の形態になれ」
モンドはリリトの目を見据える
「うん」
リリトは頷く
モンドは円と特殊文字を描き
『「竜巻」』
そう唱えると
数多の風の刃が螺旋を描き、ゲンブを粉々にした瞬間
リリトはモンドの十倍程の大きさのな赤黒く力強い竜の姿になり、大きく吐いた『欲深き黒い獄焔』で空を真っ黒にいろどる。
その後、すぐ元の姿になると
「聖よ、無防なる汝らに守りなる恵みを『盾無歌』」
モンドがそう唱えると、見えない壁が、空一面に広がる「聖よ、無防なる汝らに守りなる恵みを『盾無歌』」
モンドはそう唱え、黒い炎につつまれた岩を受け止める
すぐに黒い炎に燃やしつくされるが
またモンドは『盾無歌』を使う
これを何度も繰り返し、岩、つまりゲンブが操っていたジュワン山脈の破片はすべて消滅した。
セヴェル街の被害は人的物的共に0だ。




