離地踊天
雲一つない、澄み渡る青空が広がる朝、セヴェル街の隅にある旅車の中でモンドが食器を洗う、陶器がこすれあう音が響く。
「ふう、やれやれ」
全ての食器が、指で擦ると小気味いい音が鳴るまで洗い、リビングの椅子に座り一息つくと
「よっ、お疲れ」
シュヴが、モンドの頬に冷たい水が入ったコップをくっつける。
「うお! 」
冷えた感触が不意に襲い、モンドは驚いてしまう。
「はは、わりい、わりい」
シュヴはそう言って笑い、水の入ったコップを机に置く」
「やめてよね~、ほんとに」
モンドは不機嫌そうにいながらに言いながら、コップを持ち、水を一口飲む。
そんな中突然、よく響く甲高い音が鳴り響く
「なんだこの音? 」
モンドは耳を立てながらそう言う
「これは、避難勧告のサイレン! 」
シュヴはそう言って、立ち上がり、外に慌てるように出た。
「お、おい! どういうことだ!?」
モンドはシュヴの後を追う
「あ、ああ、このサイレンはヤバイ事態になった時に鳴らされる音だ」
シュヴがそう言っている間に、二人は外に出た。
その後、イブ、リリト、スレイの三人も出てきた。
「避難勧告だって、何があったんだろ? 」
今なお鳴り響く、危機感を煽るサイレンの音をBGMをしてるに思えないほど気の抜けた声をリリトは出す。
「たぶん、少し待てば兵隊さんが来て、説明してくれると思いますよ」
イブはそう答えた
ほかの旅車からも多くの人が出てる中、しばらく待つと、一人の兵士が息を切らしながらモンドたちの方に向かって走ってきた。
「ジュワン山脈にて、神話級魔物が顕現! こちらに向かっていますので、直ちに避難を! 」
兵士ははっきり力強くそう宣言すると
モンドたち以外の人々は、尻に火がついたように旅車戻り、そのうちの半数がそのまま旅車を運転し、セヴェル街を去っていった。
残った半数も仲間が到着次第、街を出て行くつもりなのだろう。
モンドは、贈知魔法『狩人の眼光』で命の反応を見ると小さいが強い魔物を感知し、贈知魔法『遠淵視界』で遥か遠くのその場所を見ると、ちょ超巨大な岩、というにはあまりに大きすぎる、巨峰がいくつも連なり、宙に浮いているようなものが見えた。
「なあシュヴ、なんかでかい山が動いているんだけど」
モンドがそう言うと
「おそらく『ゲンブ』だな……『宙に蠢く山脈』とも言われ、本体は人の半分ぐらいの大きさだが『離地踊天』という能力により山脈にとりつき大地から切り離し自由に動かせるようになり超弩級の大きさの存在になる、だからジュワン山脈にでもとりついんだろうな」
シュヴが少し考え込んだ後、そう答える
「ジュワン山脈ってどれぐらいでかいの? 」
モンドは空を見つめる
「確か……セヴェル街の1000倍はあるな」
落ち着いた声でシュヴがそう言う。
「1000倍! 」
モンドは、セヴェル街という普通に歩いて端から端まで移動すると約5日はかかる大きさを誇るセヴェル街の1000倍という大きさに驚き目を見開く
「テラテッラで一番大きい山脈ですもんね……」
スレイが現実感のない大きさに、軽くつぶやくようにそう言う。
「まあ、まともな奴に相手ができる規模の敵ではないな」
シュヴはそう言いながら、モンドとリリトを見つめる
「そうだな、一応見てくっか」
まともな奴でないモンドは、まともな奴でないリリトの手を引き
「聖よ地に這う私たちに天へ飛び立つ恵みを『飛天歌』
と唱え
「え、ちょ!」
リリトの声を無視して、セヴェル街を覆う黄色い体のケートスを突き抜けると
ちょうど、セヴェル街の街長である『フォレナ・バレーナ』がケートスの上に座り込んでいた
「な、何だお前ら!? 」
フォレナはいきなり現れた二人組に驚く
「もぉお、一言ぐらいってよね! 」
不機嫌なリリトを無視して
「久しぶりですね」
モンドは、フォレナにそう言っておく
「あの時の少年……? 」
フォレナの目が皿のように丸くなる
「無視~」
リリトが半目になりながら、モンドを責める
「わるい、わるい」
モンドがリリトに軽く謝る
「もう」
リリトはそう言って、モンドを許す
「まあ、そういうこと俺たちも手伝うよ、フォレナ街長」
モンドが、そう言うと
「お前ら……」
フォレナは言いかけた言葉を止める、モンドとリリトの異次元に強い力を感じ取ったのだ。
「頼みます」
藁にもすがりたいフォレナはそう言って、二人に頭を下げる
山脈がゆっくりと確実に三人に近づく中、モンドとリリトそしてフォレナの共同戦線が始まる。




