慣れないことは……
スレイが熱を出して体調を崩したため、朝ごはんの用意をするモンドとイブ
「さ~て、パンは終わったし、次はスープだな」
モンドはそう言うと、引き出しから野菜スープの元である粉を出す
「とりあえず、お鍋に水を入れますね」
イブは、大きめの鍋になみなみと水を限界まで注いだあと、火力最大で熱する。
「とりあえず、水多いし、粉もたくさん入れとこ」
鍋の中に、モンドは野菜スープの素を全部入れる。
「じゃあ、ボクは野菜を切りますね、こう見えて刃物の扱いには自信があるんですよ~」
自信満々な顔でイブは、皮が剥かれておらず、洗っもいない野菜に、剣で物を切るように勢いよく包丁を振り下ろす。
バンバンバンバン
何度も包丁がまな板に打ち付けられる音が響き、ボロボロと野菜が落ちる
「じゃあ、俺は目玉焼きでも作るかな」
卵を無駄に力強くボウルに叩きつけ割る、殻のカスが結構入ったが、もちろん気にしない。
さらにモンドは火力最大で熱したフライパンに大量の油を入れ、卵を投入する
スープが鍋から吹き出る
「わ! わ! わ! 」
イブは慌ててガスを止める
「ふう~セーフ」
イブはそう言って、再び火力最大にして、見る影もなく、ぐちゃぐちゃになった野菜を一気に投入する
…………
しばらくして焦げ臭い匂いが、二人の嗅覚を刺激する
「あ! パン! 」
モンドは慌ててパンの方を確認したが時すでに遅し
「コゲコゲになちゃった……」
真っ黒になったパンを持ち、少し涙目にモンドはなる
また、焦げ臭い匂いが立ち込める
「あ! 卵! 」
目玉焼きも真っ黒になっていた。
「…………」
モンドは、肩を落として沈黙する
「ご主人様……は、初めてならみんなこのぐらいです! 」
イブのカラ元気な、慰めも今のモンドの傷を深めるだけであった
そうこうして、野菜スープも出来上がった。
モンドとイブは自分たちが作った料理を口に運ぶ
「マッズ!」
「うべえ」
モンドとイブは料理を吐き出してしまう
炭の味しかしないパン
外はゴリゴリ、中はデロデロな砂みたいな感触もする目玉焼き
煮えきってない野菜があり、なおかつ溶けた野菜のせいでドロドロで味が異常に濃いスープ
正直、料理と呼べる代物ではなかった
まずい料理を泣きそうな顔で、戻しそうになりながらも二人はお腹に詰め込む
「最悪な朝食だった……」
顔をしかめながらモンドがそう言う
「はあ、早くスレイちゃん、治ってくれないかな……」
すっかりスレイの味が恋しくなったイブは遠い目でそう言う
「後片付けしなきゃな……」
モンドが億劫な雰囲気で立ち上がると
「はあ」
イブも老人のように立ち上がる
フライパンについたコゲに悪戦苦闘しながら皿洗いを終えた、少し後に
「ただいまー」
シュヴの声が聞こえた
しばらく間をおいて、シュヴと大量の荷物を抱えたリリトが台所に入ってきた。
「お前ら、なんでこんところにいるんだ? 」
シュヴは普段は、台所にいない人物二人がいたため、怪訝な顔つきになる
「自分らで朝ごはんを作った」
モンドは早口でそう言う
「で、お味の方は? 」
シュヴは、興味ありげに聞いてくる
「…………」
モンドとイブは苦い顔で沈黙する。
「そうか……」
全てを察したシュヴはそれだけしか言わなかった。
「そんなにまずかったの? 」
リリトは、無邪気な笑顔出そう言ってくる
モンドとイブはその発言に針で突かれたような表情になる
「まあ、そんなことはどうでもいいだろリリト、そろそろスレイの服が汗でベトベトになっている頃だからイブとリリトは拭いてやってくれねえか? 」
そう言って、シュヴはテキパキとおかゆの準備をする
「わかりました」
「うん」
イブとリリトの二人は、そう言ってスレイの元へ向かう
「俺は? 」
モンドは自分を指でさしながら、シュヴにそう聞くと
「そうだな~」
シュヴはしばらく考え込んだあと
リンゴの皮を素早く丁寧に剥いたあと、おろし金をとりだし
「とりあえず、リンゴでもすりおろしてくれ」
おかゆを作りながらモンドにそう言った
とりあえず、突っ立ているのもあれなので、黙々とリンゴをペースト状にする
完全にすりあろしたあと、スプーンを持って、スレイの部屋へ向かう
トントントン
扉を三回ノックしたあと
「入っていいか? 」
扉越しに聞こえるよう、少し大きめの声でモンドがそう言う
「ひゃあ!? 」
スレイの驚くような声の後
「今はまだダーメ」
リリトの声が扉越しに聞こえた
しばらくしたあと
「もういいですよ」
イブの声が聞こえたため
「じゃあ、はいりまーす」
ドアノブに手をかけ回し、ガチャリという音がした後、軋むような音を上げながら扉を開け、中に入る
椅子に座っているイブとリリト
リンゴのように真っ赤な顔のスレイが、毛布で口元を隠している姿が、モンドの目に入った。
「はい、リンゴ」
ベットの近くにある机に優しくモンドが置くと
「あ……あの、アーンってしてもらってもいいですか、ご主人様? 」
赤い顔をさらに赤くした、スレイが恥ずかしそうに毛布を力強く掴む。
「え、まあ、いいけど」
モンドはそう言って、ペースト状のリンゴを、スプーンですくう
スレイは起き上がり、座った状態で目を閉じ、口を小さく開ける
モンドは、スレイの赤く小さい口にスプーンを入れる
スレイは、口を閉じ、舌でリンゴを舐めとる
モンドは、食べ終わった頃に、スプーンを引きまた、リンゴをすくう
それを何回か繰り返していると
「おーい、オレ特製の卵がゆができたぞー」
シュヴの声が聞こえた
シュヴはアツアツのおかゆをテーブルに置く。
「リンゴ食わせている最中だったか……せっかくだしモンド、お前が食べさせてやれ、きっとそのほうがスレイも喜ぶしさ」
シュヴがそう言うと
「え~、もう、今回だけだからね」
そう言った、リリトは頬をふくらまし、不満そうな顔になり
「よかったねスレイちゃん」
にこやかに笑いながらイブは言い
スレイは無言だが、瞳は、恥ずかしそうにうるませながら、嬉しそうに輝かせ、お願いするように力強かった。
モンドには正直に言うと、みんなの反応が良くわからなかったが、スレイは嬉しそうなので
「ああ、わかった」
そう言って、おかゆをスプーンですくいとり
「フーフーフー」
よく冷ましたあと
スレイに食べさせた。
モンドは、ニコニコしながら、おかゆを食べるスレイを見て
これから家事、少し手伝おうかな……
と思った。
このあとは、シュヴがスレイの代わりを努め、一日が過ぎ
次の日の朝、スレイの体調はすっかり元どうりになった。




