第13話 夜中の訪問
少し低めのガサガサした声の響きに、サクラとタキは顔を見合わせる。
「声…低くない…?美少魚のはずよね…?」
「だとしても、どうする、開けるのか?」
サクラはタキの手を掴んで立ち上がると、1人でドアの前に立ち深呼吸をする。
「…あなたが、美少魚だっていう証拠はあるの…?」
すると、少しの間のあと、ゆっくりと返事があった。
「証拠…?美少魚って言えば、君に伝わると聞いて来たんだけど」
サクラは後ろを振り返りタキと目を合わせたあと、ゆっくりとドアを開錠して開けた。
「やあ、こんにちは」
ドアを開けた先に立っていたのは、薄い金髪に黒色の線のメッシュが入った青年だった。
体つきは中肉中背で背は高く、そして目の瞳部分が真っ黒で大きいのが印象的だった。
「…あなたが…2番目の…美少魚…?なんで…?男性なわけ??」
「僕は、フィレシアからここに来るよう言われただけさ。なんでって聞かれても、僕には答えられない」
青年はおどけた顔をして、肩をすくめてみせる。
「だって、私が聞いてたのは美少魚だよ。つまり、美少女の子がくるってことでしょ?現に、オレンジちゃんは可愛かったし」
「美少魚が美少女だけとは、限らないんじゃないかい?ほら、美少年という言葉もあるだろ?」
「あぁ……美少年…」
サクラは青年を上から下までじっくりと見ると、顔で視線を止める。
「確かに、一般的にあなたは美少年のグループに入るかもしれないけど、もう少し目が中心よりの方が好みかな〜…それにこんな夜中に来るなんて、非常識過ぎない??」
「厳しいなぁ〜けっこう美少年だと思うんだけど。それより、名前をつけてもらえない?」
「名前ね……決めたわ、あなたの名前はクロよ。目も髪の毛も黒いし、何よりも今夜中だし!」
「オーケー。クロね。…覚えやすい名前だ」
サクラは、苦笑いをするクロを家の中に招き入れた。
「クロ、こちら私の友人のタキよ。訳あって、今は私の家にいるの」
「タキさん、よろしく。イケメンだね〜、モテるんじゃないかい」
「いや、そんなことはないよ。こちらこそ、よろしく」
タキとクロは手を伸ばし合い、握手をした。
「あ、クロくん、あなたのお部屋はあそこよ。今は夜中だし、もし眠かったらどうぞベッドで寝て」
「ありがとう。じゃあ、早速だし部屋で休ませてもらおうかな」
クロが部屋に入ったのを見届けたあと、タキがサクラに近寄り顔を近付け声を潜める。
「おい、もし俺がいなかったら、どうしてたんだ?!いくら魚とはいえ、見知らぬ男と一緒に過ごすのは危なすぎるだろ!」
「私だって、知らなかった!さっきも言ったとおり、5匹とも全員美少女の女の子だと思ってたから!…まさか、男の子なんて…」
「彼は、男の子なんていう歳じゃないだろ??!成人してる、1人の男だ!」
タキはサクラから離れ、口元を手でさすったあと、大きく息を吐きサクラにまた顔を近付ける。
「いいか、何かあったら俺に言えよ」
「分かったわ…」
それから、彼の正体のヒントらしきものは、もうあったぞ」
「えっ、何?!」
「彼は一見モデルのようにスタイル良く見えるが、体の比率に対して手足が一般的より長い。特に腕だ」




