おまけ2.秋は温泉(リーファ7才 秋)
「リーファ、久しぶりに温泉に行かない?」
「行く! 行くいくっ! アリスも一緒にいい?」
「もちろんよ、アリスちゃんは温泉が初めてだから楽しんでくれると嬉しいわ」
あたしは転生者だから温泉は初めてじゃないんだけど……でも、温泉は好きだ。
何というか温泉って非日常って感じがして好き。
普段からお風呂は入ってるんだけど、温泉のあの広くてのびのびとして……ゆったりと流れる時間が心地いい。
普段の忙しさを忘れてゆっくり過ごせるのがいいのかな。
こっちの世界の温泉はどんなのか分からないけど、楽しみだなあ。
「アリスも一緒に温泉、入ろうね!」
『うん、どんなところか楽しみ』
楽しみのあまりあたしを抱いてほっぺをすりすりしてくるリーファに、あたしはほっぺを舌で舐めて楽しみだという気持ちを返した。
「うふふ、2人とも仲がいいのね。妬けちゃうわ」
……しまった、エファさんがいたの忘れてた。
「うんっ、アリス大好き! でもママも大好きだよ?」
「ふふふ、ありがとうねリーファ」
エファさんはそう言うと、あたしが舌で舐めたほっぺとは逆側にキスをする。
リーファはそんなエファさんに喜びを伝えるため、微笑み返した。
うん、エファさんたちはやっぱりいい親子だなあ。
そして1週間後、あたしたちは馬車に揺られて山奥の別荘に向かったのだった。
それにしてもプライベートビーチもだけど、山奥に別荘って……やっぱりリーファ一家はすごい……。
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「それじゃ、僕は先に入らせてもらうよ」
「ええ、いってらっしゃい。ここのお湯は疲れに効くからゆっくりとね。わたしも後から入りに行くわね」
「アリス、だいじょうぶ?」
『うう……』
馬車に揺られて2時間ほどの行程だった。
山道だけあって道で荷台がガタガタ揺れ、あたしは前よりも車酔いしてしまいダウンしている。
そのため、リーファはあたしが元気になってから温泉に入りたいと言い、あたしの回復を待ってくれているのだ。
親子水入らずの邪魔しちゃうなんて……酔いやすい自分が恨めしい。
ちなみにここに来た目的はリースさんの体調回復だ。
普段の仕事が激務なため疲れが貯まっているらしく、2泊3日で体調を整えるらしい。
その間の執務は執事さんが代わってくれるみたいなんだけど……ほんと、何でもできるなあの人……。
「ねえねえアリス、虫さんの声が聞こえるよ」
『え……?』
リーファはあたしを抱いて縁側に連れていってくれ、壁にもたれかかりながらあたしをぎゅっとしてくれる。
この世界も秋になると虫で賑やかになるんだね……まだ夕方前なんだけど、生態がちょっと違うのかな。
リーファに抱かれながら虫の鳴き声を聞いていると、自然と心が落ち着き、段々と酔いもさめてくる。
「~♪」
リーファは虫の鳴き声に合わせて歌い始め、あたしにはそれが子守歌のように感じられ、次第に瞼が重たくなってくる。
あたしはそれに抗えず、リーファの胸に顔を預けて、次第に意識が薄れていった。
「あらあら、アリスちゃん疲れてたのね」
「しーっ、起こしちゃかわいそうだよ」
「そうね、アリスちゃんが起きたら温泉に入りましょう。わたしはパパと一緒にちょっとだけ入ってくるわ」
「うん」
そんな2人の会話もあたしの耳にはあまり入ってこなかった。
そして、あたしが30分ほどうたたねをして、起きるまでリーファは傍にいてくれたようだ。
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「……ふぅ、やっぱりここの温泉は疲れが取れるわね」
「うんっ、なんだか元気になる気がする!」
『ふわぁ……』
あたしはリーファに抱かれながら、ゆったりと温泉に浸かる。
確かにこの温泉に入ると身体が軽くなり、力が漲ってくるようだ。
「ふふ、アリスちゃんも気に入ってくれたようね」
「うん、こんなに幸せそうな顔、初めて見たかも?」
えっ、あたしそんなに顔が緩んでた?
でも、すごくリラックスができるのは確かだし、気も緩んじゃうのかも。
「ここの温泉には魔力が含まれてるらしくて、それが健康にいいと言われてるの」
「へー、だからこんなにきもちいいのかな?」
魔力ってそんな効能もあるんだ……さすが異世界温泉、ってところなのかな。
あたしたちの世界でもいろいろな効能のある温泉があったけど、それ以上に多くの効能がある温泉が各地に点在してそう。
いつか温泉巡りをしてみたいなとちょっと思ってしまった。
……それにしても。
やっぱりエファさんの胸の大きさに目が行ってしまう。
だって、ちょうどぷっかりと浮かんでるんだもん……否が応でもね?
「あら」
『あっ』
そして気づかれてしまう。これじゃ前の二の舞じゃない!?
「アリスちゃん、やっぱりママが恋しいのかしら?」
いやいやいや、違います! あたしの胸がないから羨ましいと思うだけで!
しかしエファさんはあたしを抱いているリーファごとあたしを抱きしめる。
エファさんの胸と、リーファの胸にサンドイッチにされるあたし。
柔らかいものと柔らかいものに挟まれて、徐々に抵抗できなくなる。
「ママ、だめ!」
そんな状況にリーファが一喝する。
よ、よかった、助かっ……。
「アリスはあたしの! だからあたしがおっぱいあげるの!」
『は!?』
リーファはあたしを胸に埋めながら、そんなことを言いだす。
何言ってんですかこの子は!?!?!?
「リーファ、おっぱいはね、結婚しないと出ないのよ?」
「うー……じゃあ私、アリスと結婚する! それならいいでしょ?」
「そうねえ……それならいいんだけど、結婚するにはちゃんと成人してからでなきゃ」
「はーい……」
なんてこと約束してるの!?
でも、おかげでリーファはあたしを離してくれたので助かった……?
な、なんで疲れを癒すために温泉に来てるのに逆に疲れてるのあたし……。
そんなハプニングがありながらも、2日目はちゃんと温泉にじっくり浸かれて日頃の疲れは吹っ飛んでいったのだった。
リースさんやエファさん、リーファも帰るころにはすっごく元気になっていて、この魔力のある温泉の効果はすごいなと、改めてここは異世界なんだなと感じる。
そして温泉効果なのか帰りの馬車は全く酔わなかった。
この温泉、リーファの家にも欲しいなと思いながら、あたしたちはまた日常に戻るのだった。




