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カメーリア・モレッティの場合

読んでいただいてありがとうございます。タイトル変更いたしました。原石が好きな女性もいいじゃないか、ということで。

「カメーリア、明日の準備はどう?」

「だいたい終わったよ。ってゆーか、こんな直前に急に持ち場を変えられたのって、何かあったのかな?」


 カメーリアと同僚のダニエラは、夜会の準備に大忙しだった。

 元々、今回の夜会では表に出ない裏方に配置されたはずだったのに、急に上の上らへんからの指示で、表と裏の人員がごっそり入れ替わった。

 真面目侍女組と嫁ぎ先探し組が入れ替わったので、真面目侍女組は面倒くさいと思いつつも文句を言うことはなかったが、向こうの侍女たちは侍女長に文句を言ったそうだ。

 この夜会で嫁ぎ先を見つける気満々だったのだろう。


「何か、普段王宮にあまり来ない人が出席するらしいわよ」

「え?誰?」

「宝石伯爵」

「本当?へー、それは確かに珍しいかも」


 王宮に勤めて早二年のカメーリアだが、噂の宝石伯爵を見たことはない。というか、伯爵は領地での商売が忙しいので、王宮に来ることがないのだ。来ても、国王陛下に挨拶だけしたら帰っていくのだとか。

 残っていたら誰かしらに捕まるので、それが嫌でさっさと帰っているという噂もある。


「何にせよ、明日も無事に終わってほしいわ」

「だよね」

 

 カメーリアとダニエラの部屋は隣なので、疲れた身体を引きずって一緒に帰ると部屋の前で別れた。といっても、これから食事をして使用人用の大きめの風呂に入るので、どこかでまた会うだろう。


「あー、疲れた」


 首を回しながら軽く自分で肩を揉む。肩が凝りまくっていて、ものすごく重く感じる。

 カメーリアはイスに座ると、机の上に置いてあった何の飾り気もない小さな木箱を開けた。


「癒されるぅぅ」


 木箱の中には、小さな石が綺麗に並べられていた。


「宝石伯爵かー。伯爵領に行ったら、こういう石がごろごろ落ちてるのかな?」


 カメーリアが眺めているのは、宝石ではなくその原石の方だ。

 普通は、カットしたり磨いたりして形を整えてから商品として売りに出されている物だが、カメーリアが持っているのは、磨いてもいない取り出したままの原石そのものだ。

 といっても、売り物に出来る物ではなくて、弾かれた物。

 言ってしまえば、宝石になれなかった捨てられていた石。

 カメーリアの領地には宝石を磨いたり細工したりする加工職人が住んでいて、幼い頃からカメーリアはその仕事をキラキラした目で見ていた。ゴツゴツとした石が綺麗な丸い宝石になって、美しいネックレスや指輪に変わるさまを見てはしゃいでいた。

 貧乏な男爵家、しかも三女には宝石なんて回ってこない。

 長男の嫁とか、せいぜい長女までだ。

 それにカメーリアは原石が加工されていく様子を見ていることは好きだったが、それを身に着けたいとは思っていなかった。

 そんな時、職人がぽいっと綺麗な石を捨てるのを見た。

 職人からしたら、それは品質が低く、加工して装飾品にするような石ではなかったが、カメーリアにとっては、色のついた綺麗な石だった。

 捨てるのならもらっていいかと聞くと、好きなのを持っていけと言われて、色とりどりの石を選んでもらってきた。

 それからたまに綺麗な石を拾ってきては、大切に保管していた。

 それらをこうして自分で作った箱に入れて、大切な宝物として王宮まで持ってきたのだ。

 普通なら宝石を持っていることで盗られるおそれもあるのだが、カメーリアの持っているのはあくまでもちょっと綺麗な石程度の価値しかない物ばかりなので、そんな心配もない。

 ただ、カメーリアが眺めて心が癒されるだけの代物だ。


「うーん、しかし宝石伯爵、えっと確か、何だっけ……?シェ?ジェ?ジェントーレ伯爵、だったかな?」


 うろ覚えな部分があるので、後で調べよう。

 名前はともかく、宝石伯爵の領地には稀少な宝石鉱山があり、そこでは最高品質の宝石がたくさん取れるのだと言う。しかも、種類も豊富だとか。

 そんな場所なら、きっといらない原石もたくさん落ちていそうな気がする。


「いつか行ってみたいなぁ」


 この時は、のほほんとそんなことを考えていたのだが、カメーリアは翌日、ある意味、運命の人と出会うことになるのであった。



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