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45歳元おっさんの異世界冒険記  作者: はちたろう
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第百三十三話

 あれからすぐにゴブリンを三匹発見してあと必要な魔石は二個だ。


「あと二個だったら、もういいよね?」


「あたしはまだ探してもいいと思うけどなぁ」


「まだ時間もありますし、もうちょっと頑張りませんか?」


「ほかの魔物を狩るのもいいぞ」


 今はまだ昼くらいか。


「じゃあ、一度休憩してそれからもうちょっとやるか」


「やった!いいところ探そう!」


 言うが早いかタニアが飛び出していく。


「私もお腹が空きました」


 タニアとニーナはお昼ご飯に慣れたなぁ。ガルトはまだ違和感があるみたいだけど、異論は無いようだ。


「あったよ!付いてきて」


 タニアが早速休憩場所を見つけたらしい。付いて行くと小川が流れる日当たりの良い場所だった。


「ささっ、早く準備しよ。リュウジ、色々出して」


「わかったから、ちょっと落ち着けって。周りは大丈夫なんだよね?」


「心配しなくても大丈夫。だから早く早く」


 森の中にいるけど、ここは迷宮の中だから椅子とかテーブルはやめておくか。地面を均してからテ

ント用のグランドシートを出して街で買ったサンドイッチと飲み物を出す。


 皆で鎧も脚甲も外さずにグランドシートに座って休憩だ。


「うーん、美味いねぇ」


「これはどこで買ったんですか?」


「これは、正門から一本入ったところにあった屋台だよ」


 今日買ってきたサンドイッチは、オーク肉を薄切りにして焼いたものを何枚か重ねて野菜と挟んであるやつだ。基本、塩で味付けがしてあるんだけどフライドガーリックや香草なんかでちょっと濃い目に味付けされているから驚くほど美味しい。因みにパンはフランスパンのような外側が硬くて内側は比較的柔らかいものだ。横から切れ目を入れてサンドしてある。


「確かに美味いな」


 ガルトも周りを警戒しながら食べている。本当はガルトの行いが正しいんだろうなぁ。タニアとニーナは二人でお喋りしながら楽しそうに食事している。そういう僕もあまり気は張ってない。

 三十分程度で食べ終えて探索再開となった。


「探索できるのもあと二、三時間かな?」


「そうですね」


「よし、お腹も満たったし頑張ろう!」


 タニアが元気になってる。今日はまだあまり戦闘になってないけど、大蟻の巣みたいなところとか樹木邪人とかいつもと違ったことが起こったから精神的に疲労が来てたのかな?


「あ、いた」


 突然タニアが立ち止まり、僕たちを呼ぶ。


「ほら、あそこにゴブリン四匹。ニーナ、やるよ。リュウジ、いつも通りに」


 タニアの視線の先、二十メートルほど。棍棒や錆びた剣を持ったゴブリンたちがいた。


「はい」


「わかった。ガルトも一緒に行くよ」


 頷いて盾と戦斧を構えるガルト。僕もいつでも行けるように盾と剣を構える。


「…炎矢(ファイアアロー)!」


 小さな声で炎矢を発動するニーナ、同じくして矢を放つタニア。時速百五十から二百キロは出ている二人の遠距離攻撃。糸を引くようにゴブリンに吸い込まれていく。負けないように走り出す。


「いくよ!」


「ああ!」


 命中した二匹が倒れると、残った二匹が弾かれた様に走ってきた。僕たちを睨む目に殺意が迸る。


「怒ってるねぇ」


「それはそうだろう」


 でもまあ、そんなことはもう慣れた。今ならホブゴブリンとだって余裕をもって戦える気がする。


「ふん!」


「はっ!」


 ガルトは盾を前に出して体を隠し、ゴブリンの攻撃を受け止めると同時に真上から戦斧で真っ二つにする。


 僕も体の前で盾を構え、来る攻撃に合わせて弾く。ガツンという衝撃と同時にギィンと金属同士がぶつかった音がする。盾が魔鋼製になったからな。ゴブリンの錆びた剣を弾いて隙ができた。そのまま右足を踏み込んで、横から剣を薙いで首を落とす。


 あとは魔石を取り出すだけだな。ニーナとタニアが倒したゴブリンからも魔石を取り出して計四個。合計五十二個。これだけあれば大丈夫だろう。


「ありがとう、皆。魔石は集まったな。それじゃ、街に帰って休もうか」


「わかった」


「そうだね。次は新しい迷宮だ」


「リュウジさん、また一緒にやりましょうね」


 ニーナの言葉を聞いたタニアの目が光った気がした。


「じゃあ、あたしとガルトはその間出掛けてくるからね」


「そうなのか?」


 タニアがそう言ったとたんニーナの顔が真っ赤になる。


「そ、そんなことしなくても…いいですよぉ……」


 まあ、きっとそういうことなんだろうなぁとは思ったが、図星だったのね、ニーナ。


「気ぃ使ってくれてありがとな、タニア」


 僕がニーナの頭をポンポンと叩きながら言うとニーナが背中に顔を埋めてきた。恥ずかしさが限界に達したんだな。



 そんなことを話しながら迷宮の出口に向かって歩いていると、先行していたタニアが急に真顔になって振り返る。


 あれ?なんか蜂の羽音がするような気がする。


「やばい!なんでこんなところにいるんだ!?リュウジ!、ガルト!戦闘態勢だ!早く!」


「なんだ?」


 疑問に思いながらも盾と剣を構える。


「ニーナ!ちょっと下がって炎矢の準備!三連で!」


「はい!」


 素直なニーナは、詠唱を始める。


 ガルトの方を見ると彼も真剣な表情で前方やや上の方を睨んでいる。


「蜂だ。大死蜂ジャイアントキラービー。一匹だといいが…」


 大死蜂。言葉だけ聞くとでかい蜂。蜂がでかいってだけでヤバい気がする。今まであまり空を飛ぶ敵と戦った経験がないからな。


「リュウジ気を付けて!針で刺されると死ぬよ!」


 羽音が大きくなってきて、大死蜂が見える。


「うわぁ、何だあれは…でかいスズメバチ、か?」


 見た感じはとても大きいスズメバチだ。黒と黄色のストライプ柄で見てると首筋がぞわぞわする。それがゆっくりとこっちに来てる。大きさはガルトより一回り大きいから体長は三メートルくらいか。それが一匹。あんなのに組付かれたら逃げ出せないぞ。お尻の先から針を出したり引っ込めたりしている。太さは僕の腕と同じくらい!

 顎も凄いから噛みつかれたら千切れるな。


「タニア!あれ、やれる?逃げる?」


「ごめん!もう見つかってる!やんなきゃ死ぬだけ!頑張れ!」


「わかった!」


 やんなきゃ死ぬのか…まだ死にたくはないからなんとか生き残ろう!


「ガルト!二人であいつを引き付けよう。攻撃はタニアとニーナに任せる。相手は飛んでるから僕たちの攻撃は当たらないと思おう!」


「わかった!死ぬな!」


「ガルトもな!」


 二人同時に駆け出す。大死蜂がこっちを見てるのがわかる。凄い圧だ。これが殺気なのかね。


「こっちだ!」


 ガルトが盾を戦斧で打ち鳴らし大死蜂の気を引く。上手いことこっちに向かってきた。僕はガルトから離れ、大死蜂の横合いを取れる位置に移動する。


 大死蜂は、ガルトに向かって急降下して掴みに行く。そうはさせるか!


 蜂の羽音は恐怖心を煽る。まずは羽を狙ってみるか!


「はっ!」


 剣を振った瞬間、大死蜂が横にずれる。なんて速度だ。これは大変そうだぞ。

 空振りしたけど、結果ガルトに組み付かれなかったからよし!


「ふんっ!」


 ガルトが戦斧を振るがこれも避けられてしまう。が、避けた先に矢が飛んでいる。タニアだ。


 当たる!と思ったら羽音がして避けられてしまう。攻撃当たるか、あれ?


「ガルト!ニーナの攻撃が当たるように誘導する!ガルトはそのままで!」


「わかった!」


「タニア!合わせてくれ!」


 大声で叫びながら攻撃を繰り出すが、全部避けられる。攻撃の手を緩めると組み付いてこようとしてくるからずっと動いてないと危険だ。


 ガルトを起点にして僕が攻撃しながら動いていく。タニアはそれを見て矢を射る方向を調整してくれる。これで避けられる方向は限定できた。あとはニーナが当ててくれるのを祈る。


 しかし、僕かガルトが攻撃を食らったら終わりだな。今のところは相手の攻撃は避けることができている。と言うか、攻撃させないように三人で何とか牽制している。


「ニーナ!」


「はいっ!」


 僕が袈裟切りで剣を振る。タニアは大死蜂が大きく避けることが無いように大死蜂の外側に矢を放つ。ガルトは盾でプレッシャーを掛けてくれる。


 ニーナの炎矢が三本それぞれちょっとズレた軌道で飛んでくる。頼む!当たってくれ!


 誘導は上手に出来たはず。ニーナの炎矢もいいところを狙っているように見える。タニアは矢が無くなる勢いで射ている。


 剣を引き戻して盾を構えて防御姿勢で待ち構える。ガルトも盾と戦斧を構えていつでも攻撃できる態勢でいる。


 ニーナの放った炎矢の一本は大死蜂の胸に吸い込まれるように突き刺さる。もう一本が羽を貫通するのが見えた。


「やった!」


「まだだ!」


 ガルトが戦斧を振り下ろす。


 地面に落ちて死んだかと思った大死蜂が僕に向かって針を突き出してくる。まだ盾を構えていたため、針が当たって後ろに飛ばされ、木にぶつかって背中を(したた)かに打った。


 最後の力で攻撃してきた大死蜂は、ガルトの戦斧で真っ二つにされてようやく動かなくなったようだ。


「痛てて…」


「大丈夫か?」


 ガルトが助け起こしてくれたところでニーナが走ってきた。


「リュウジさん!大丈夫ですか!?怪我はありませんか!?」


 ニーナは、僕の顔から体までペタペタ触って怪我がないか確認しているようだ。


「ありがとう、ニーナ。盾が防いでくれたから飛ばされただけだよ」


 盾が無かったら胸を貫通してかもしれないなぁ。


「前の盾だったら危なかったかもなぁ」


「そうです!私、心臓が止まるかと思ったんですよ。怪我がなくてよかったです」


 ニーナは、涙を零しながらも安堵したように微笑む。心配かけてしまったか。


「ほら、討伐証明部位をとってきたよ。まだいるかもしれないから早く動くよ」


 僕たち三人が話してる間にタニアが大死蜂を解体してくれた。手にはあの針を持っている。大死蜂の討伐証明部位は針なんだな。


「昆虫型は確実に仕留める」


「そうだな。肝に銘じておくよ。ありがと、ガルト」


 僕が握り拳を出すとガルトも拳を作ってこつんと当てる。


 今回は間違いなく、盾を構えてたから怪我しなかったし、盾を新調してたから助かった。装備品って大事だなぁ。

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