幕間 『信者たち』
知らないうちにやられてた人
「…フルデメンス」
名前を呼ばれた彼は瞼を上げて辺りを見回した。
異常はない。仮拠点としている薄暗い洞窟だ。
「起きろ」
全身に黒衣に身を包んだ男が壁にもたれかかって座っている男――フルデメンスを見下ろしていた。黒衣の隙間から覗く目はフルデメンスと同じく生を感じさせない。
「ザナム…? 私は…」
「ん? お得意の記憶喪失か? そのようだ」
声でわかる。知人だ。
声をかけてきた人物まではわかったが、どうもおかしい。記憶に穴がある。自分がなぜこんなところにいるのかが抜け落ちていた。
「…ああ、そうだった。思い出した」
記憶は拾われ、穴が埋まっていく。いつもの感覚だ。
「欠落姫はどうなった?」
「生きている。さらに神に仇なす力も行使した。お前たち『シス』は命令を遂行できなかった。『物語』に狂いが生じている」
目標だった少女は殺せなかったという。
「…奴のせいだ。奴が戦闘中に乱入してきたせいだ…っ!」
それもこれもすべてあの男のせいだ。顔は一瞬だったが、自分の頬を殴った彼の右手の甲はしっかりと見えていた。
大罪を負いし者、ガルノ。エクリプスの抹殺対象だ。
「殺さなければ…、殺さなければならない…」
ガルノは罪を背負っている者。彼らの信仰神に危害を及ぼす可能性がある存在だ。
神に危害を与えるものは殺さなければならない。それが神に対する奉仕でもある。
「だがその前に…」
欠落姫だ。彼女もまた危険人物。今回バミラ王国まで足を運んだ理由は彼女の抹殺なのだから、当然そっちの方は優先度は高い。
「あいつらは今ノンバラにいる。当然行くよな? だろうな、お前はそういう男だ」
「――お前の自問自答の癖は治らないのか」
「治ると思うか? 無理だ」
彼の名はザナム。フルデメンスと同じく、エクリプス幹部の一人である。
「…まあいい。貴様の言う通り私は欠落姫を殺しに行く」
「なら手助けをしてやろう」
「貴様がか?」
「ああ、お前ひとりじゃ検問で詰みだ。あの都市は異様に警備が厳しいからな」
「なるほど、それは実にありがたい」
「契約者に関しての情報もくれてやる。だがその代わり、オレがいいと言うまでは勝手に動くな。お前は暴走する癖がある。オレよりたちが悪い」
「――ふむ…。了解した。我らで欠落姫を殺すとしよう」
フルデメンスさんがやれらるシーンは一応前作の方に残ってるので、気になる方はそちらをご覧ください。




