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目の見えない少年は混沌とした異世界で  作者: 久我尚
第一章 『リンク』
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幕間 『信者たち』

知らないうちにやられてた人

 「…フルデメンス」


 名前を呼ばれた彼は瞼を上げて辺りを見回した。

 異常はない。仮拠点としている薄暗い洞窟だ。


 「起きろ」


 全身に黒衣に身を包んだ男が壁にもたれかかって座っている男――フルデメンスを見下ろしていた。黒衣の隙間から覗く目はフルデメンスと同じく生を感じさせない。


 「ザナム…? 私は…」


 「ん? お得意の記憶喪失か? そのようだ」


 声でわかる。知人だ。

 声をかけてきた人物まではわかったが、どうもおかしい。記憶に穴がある。自分がなぜこんなところにいるのかが抜け落ちていた。


 「…ああ、そうだった。思い出した」


 記憶は拾われ、穴が埋まっていく。いつもの感覚だ。


 「欠落姫はどうなった?」


 「生きている。さらに神に仇なす力も行使した。お前たち『シス』は命令を遂行できなかった。『物語』に狂いが生じている」


 目標だった少女は殺せなかったという。


 「…奴のせいだ。奴が戦闘中に乱入してきたせいだ…っ!」


 それもこれもすべてあの男のせいだ。顔は一瞬だったが、自分の頬を殴った彼の右手の甲はしっかりと見えていた。

 大罪を負いし者、ガルノ。エクリプスの抹殺対象だ。


 「殺さなければ…、殺さなければならない…」


 ガルノは罪を背負っている者。彼らの信仰神に危害を及ぼす可能性がある存在だ。

 神に危害を与えるものは殺さなければならない。それが神に対する奉仕でもある。


 「だがその前に…」


 欠落姫だ。彼女もまた危険人物。今回バミラ王国まで足を運んだ理由は彼女の抹殺なのだから、当然そっちの方は優先度は高い。


 「あいつらは今ノンバラにいる。当然行くよな? だろうな、お前はそういう男だ」


 「――お前の自問自答の癖は治らないのか」


 「治ると思うか? 無理だ」


 彼の名はザナム。フルデメンスと同じく、エクリプス幹部の一人である。


 「…まあいい。貴様の言う通り私は欠落姫を殺しに行く」


 「なら手助けをしてやろう」


 「貴様がか?」


 「ああ、お前ひとりじゃ検問で詰みだ。あの都市は異様に警備が厳しいからな」


 「なるほど、それは実にありがたい」


 「契約者に関しての情報もくれてやる。だがその代わり、オレがいいと言うまでは勝手に動くな。お前は暴走する癖がある。オレよりたちが悪い」


 「――ふむ…。了解した。我らで欠落姫を殺すとしよう」

フルデメンスさんがやれらるシーンは一応前作の方に残ってるので、気になる方はそちらをご覧ください。

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