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二つ目の疑問

 二つ目は水瀬が手に持っているナイフだ。


「隼人さん、このナイフについている指紋って全て検出できました?」

「ああ。このナイフについていた指紋は水瀬聖奈のものだけだったよ」

「そうですか」


 式は一考した後、


「この死体を発見した時の写真って見せてもらえますか?」


 と聞いた。


「ええと、発見時の写真はこれだな」


 隼人から写真を受け取った式は、写真の水瀬をじっくりと観察した。

 写真の水瀬は、ナイフをしっかりと握っていた。


「ナイフの指紋を検出するときって、もちろんこの手からナイフを取り出しましたよね」

「当然だ」

「そのとき、水瀬さんの手からナイフを取り出すのに苦労しました?」

「そうだな、結構力強く握っていたから苦労はしたかな」


 式は再度考え始めた。


「最後に聞きますが、水瀬さんが持っていたナイフって、一度取り出してまたこの写真と同じように握らせることってできますか?」

「おそらく不可能だろうな。死体は力強くナイフを握っていた。一度取り出してからこんな風に握らせることはできないだろう」


 隼人は質問に答える。


「……なるほど」


 式は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。


「何かわかったかな?」

「うーん、もしかしたらって考えはありますが、まだなんとも」


 何かこれまでに得たヒントはないか、式はもう一度本日起きた出来事を頭の中で再生した。


「何か他にヒントはないのか……」

「ヒントといえば……」


 式の言葉を聞いて、榊が何か思い出したようだ。


「吉野先輩が取り調べの時に言っていたことは、結局何だったのでしょうか」

「え?」


 そういえば、吉野は何かに気付いていたようだ。


「犯人の動機について、見当がついていると言っていましたよね」

「そういえばそうだな」

「後で聞こうと思っていたのですが、その吉野先輩も殺害されてしまいましたし……」


 結局、それについては聞けず仕舞いだった。


「吉野先輩は、何かに気付いたから殺された?」


 そう考えた後、すぐに思い直す。


(いや、取り調べの時に他に話を聞いていたのは俺と榊さんだけだ。他の五人が吉野先輩が取り調べの時に何を言ったのかを知る術などないはず。……まてよ)


 そこまで考えて、式にある疑問が生まれた。


(吉野先輩はいつ犯人の動機に気付いたんだ?)


 取り調べの前に式と榊が吉野に話を聞きに行ったときは、別段何かに気付いた様子はなかった。

 だが取り調べの時には、何かに気付いていたようだ。


(ということは、俺と榊さんが吉野先輩に話を聞きに行ってから、取り調べが始まるまでの間に気付いたってことだ。その間にあった出来事って……)


 一日の流れを思い返す。

 そして式はようやく気付いた。


(そうだ! あの時あの人が言った言葉だ。あの時吉野先輩は犯人の動機ではなく、犯人が誰なのかがわかったんだ。それで動機についても心当たりがあった。それに今思い返してみれば、取り調べの時にあの人も……)


 式の頭の中に、ようやく一つの答えが浮かび上がった。


「なんだ……。俺たちは結構答えに近づいていたんだ」

「式くん、何かわかったのですか?」


 何かを思いついた表情をしていた式に、榊が尋ねる。


「うん。ようやく分かり始めてきたんだ、犯人の正体が」


 これまで頭を悩ませていた式は一変して力強く答えた。


「本当かい!?」

「ええ。隼人さん、一つ目の殺人事件が起きた現場と、7人のグループの自宅を調べたいんですが、できますか?」

「ああ、大丈夫だが」

「ありがとうございます。でもその前に一つお願いがあるんですが」

「なんだ?」

「水瀬さんと吉野先輩が殺害されてしまったので、残り四人のアリバイなどを確認したいんですが、それを今から他の刑事さんにやってもらうことってできますか? できればまた取り調べみたいなことを行って、その時の話を録音しておいてほしいんです」

「わかった、手配しよう」


 隼人は携帯を取り出し、部下に連絡した。


「これで大丈夫だ。我々はその間に調査をしよう」

「ありがとうございます。じゃあまずは軽音楽部の部室に行きましょう」


 三人は部室へと向かった。

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