一つ目の疑問
「式くん、今どれくらいわかっていますか?」
吹奏楽部の部室に向かう途中、榊が話しかけた。
「どれくらいわかっているかは答えられないけど、さっきの吉野先輩の殺人には矛盾点があるんだ」
式は先ほど感じた矛盾点を榊に話した。
「なるほど。確かにそう考えると矛盾がありますね」
「うん。もしかしたら、この事件は思ったよりも複雑なものなのかもしれない」
不安を感じながらも、急いで吹奏楽部の部室へと向かった。
吹奏楽部の部室に着いた二人は、そこにいた隼人に吉野殺害事件の調査結果を話した。
「そうか……。わかった、後で確認してみよう」
「それで隼人さん、こっちの調査はどうなっていますか?」
隼人は資料を見ながら答える。
死亡時刻は十二時前。死因は棘々した何かで首を貫かれたことによる出血多量である。
それ以外に目立った外傷は特になく、睡眠薬や毒物などを使われた形跡もないようだ。
「隼人さん、水瀬さんの取り調べが終わったのって何時くらいでしたっけ」
「取り調べを始めたのが十時半頃で、終わったのが十一時半頃だったな。で、一人大体十分くらいは話を聞いていたと思うから、水瀬聖奈の取り調べは十一時くらいには終わっていたはずだ」
「ということは、水瀬さんは十一時から十二時までの一時間の間に殺害されたことになりますね」
一時間もあれば、ある程度の殺害準備から後始末まで十分に行えるだろう。
この死体で気になる点はあと二つ。
まずは殺害時に使用された凶器についてだ。
「隼人さん、殺害に使用された凶器って、見当はついてますか?」
「うーむ、傷口から考えるに棘々したものであることは間違いないんだが、こんな形をしたものは見たことがないな」
「確かに、ナイフなどでは到底出せるものではありませんね」
隼人も榊も、凶器については見当がついていないらしい。
「傷口に何か証拠らしきものは残ってませんでした?」
「ああ、そういえば木の破片らしきものが残っていた」
「それ、実物ありませんか?」
「いや、既に鑑識に送った後だ。一応写真を撮っておいたから、それを見せよう」
隼人は写真を取り出し、式に見せた。
「これがその木の破片らしきものですか」
「いや、これは木の破片というよりは……」
その破片の写真を見た式は、何か思いついたようだ。
「そうか。こんな凶器を見たことがなかったのは、これが作られたものだったからなんだ」
「え?」
一つ目の疑問は解決した。




