それはただ見つめる
白、白、白。
見渡す限り真っ白な空間に、一人。
長い黒髪、黒い服、真っ白な肌の女が立っていた。
黒い太陽に白い空、白亜の大地に佇む女は一人狂笑をあげる。
「くふふふ、くふふふふふぅぅぅう!! ふふはっはははははは!!! ははははははははは!!! 絶望しないのぉ? くふふふ! すごい! すごいよぉ! 想像以上だよぅ、想定外だよぉ! ああ、君を選んでよかったぁ!!」
くるりくるりと軽やかに踊りながら、女は狂ったように独白する。
「でもまだだよぅ? 君には世界を面白くしてもらわないといけないんだからぁ。まぁ、もう介入権限がないから見ることしか出来ないけどねぇ……え? なぁに? 猿? くふふふふふぅ、猿のために一生を使うのぉ? やっぱり予想が出来ないなぁ……でもその道はとても大変だよぅ?」
どろどろと濁った笑みを湛え、女は回り続ける。
「ああ、ああぁ! それでも君は歩むのだろうねぇ! どんなに選択肢を増やそうと、だって君はそういうものだものぉ! くふふふふぅ、ふふふぅ! あぁあ! 忌々しいぃ! くふふぅあれだけ念入りに洗濯したのにぃ! くふふふ、自分が何者かも覚えていないくせにぃ……大切なところはすべて磨り潰した筈なのにぃぃ! くふふふふぅ! でもだからこそ、君じゃないとダメなんだろうねぇ?」
くるくると回っていた女はピタリと動きを止め、顔をあげる。その顔に眼球はなく、ただ空洞が広がっていた。
何も見える筈の無い眼で、虚空を覗き、静かに嗤う。
「……智天使の欠片は取り込ませられた。禍福の獣が接触したのは偶然だけど都合がいい。世界はそれを求める! 決して逃れ得はしないぃ! 強くなるといいよぉそして世界をもっともっともっと!! 楽しくしてねぇ?」
女は狂嗤う。
天に輝く黒瞳が見下ろす白亜の骸に覆われた大地に佇む女は、ただ一人笑い続ける。嗤い続ける。
転生する前に猿がふよふよしていたのは、なんかでっかい目玉が見下ろしてる白骨だらけのSAN値直葬なところでした。あとモノクロ女の顔も。