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上陸っす

どうもっす。クゥトアヌっす。

自分たちは今、ウーパールーパーさんに連れられて絶賛移動中っす。


「くぷくぷくぷ。そろそろ着くよ。太陽の沈む方。その先の大陸。きっとここ。君の目的地。君の願い。とてもとても大切なもの」


ウーパールーパーさんは何だか不思議な喋り方をする方っす。こういうのを詩的とでも言うんすかね?


「ありがとうございますっすー!」


できるだけ大きな声でウーパールーパーさんにお礼を言うっす。なにせ今いるのはウーパールーパーさんのお腹の中っすからね。普通に話してもきっと聞こえないっす。


『一時はどうなルかと思ったが、キヒャヒャヒャなンてこたぁねえ順調じゃねえか!』


輪っかさんもご機嫌っす。

お腹の中は真っ暗なので昼夜の感覚が曖昧なんすけど、この移動速度は異常な速さだと思うっす。


輪っかさん印の脳内地図を開いて確認したら、さっきまでいた溶岩島から、お姉さんの国の大陸端までの距離がだいたい日本縦断するくらいなんすよ。

それが二日もかからずにつくのはいくら障害物が無いとはいえ流石に速すぎるっす。


「ついた」


ウーパールーパーさんが一言つぶやいたと思ったら、体がふわりと浮き上がったっす。

ああ、出るときはやっぱり吹き飛ばないといけないんすね!?

自分はまた勢いよくウーパールーパーさんに吐き出されたっす。



例のごとく舌で受け止めてもらい事なきを得た自分は周囲の風景を見ていたっす。

あまり人が踏み入った形跡のない入り江っすね。

整備されていないというか、自然そのままな感じっす。


「くぷくぷくぷ」


ウーパールーパーさんは物珍しそうに辺りを見回す自分を静かに見守ってくれてたっす。


「重ね重ねありがとうございますっす! これで小さいお方たちともきっと合流できるっす!」


「よかった。君の願いは果たせそうだね」


お礼を言うとウーパールーパーさんは優しく笑った気がしたっす。表情変わらないんすけど。


「本当に助かったっす! 遅くなったっすけど、自分クゥトアヌって言うっす! 良ければお名前を教えてほしいっす!」


目的だけ伝えて、ウーパールーパーさんとはあまり会話ができていなかったっす。これだけお世話になっておきながらお名前すら知らないってのは、流石に不義理がすぎる気がするっす。

そう思ってお名前を聞いてみたんすけど……。


「くぷくぷくぷ。コレに名前はないよ。思い出せない。失われている。それが正常。コレがここにあるために。固有の名前は失われた。好きに呼んで構わない」


お名前ないんすか!? それじゃあなんてお呼びすれば……流石に本人にウーパールーパーさんと呼ぶのは憚れるっす。

似てるってだけでウーパールーパーじゃないっすし。


『キヒャヒャ! なラてメえが付けてやリゃいいじゃねえか。その堕神様のお名前をよ』


自分がっすか!? 人様のお名前なんて付けていいんすかね?


『本人が好きに呼べってンだ構いやしねえよ』


それなら……なんて呼ぶべきっすかね?

名前……名前……こっちの言葉は知らないっすし、生前の神話とかから取るべきっすかね? 相手はもともと神様みたいっすし。

うーん。

海の神様。

ポセイドン? いや、なんか違うっすね。筋骨隆々なイメージっす。ウーパールーパーさんぽくないっすね。

トリトン……はイルカに乗る少年感が……。



海の神様……海の神様?

神様じゃなくてもいいんすよね。それに向こうの名前ならこっちだと意味通じなさそうっすし。

ムー大陸のムーさん……はペットじゃないんすからもう少しひねったほうがいいっすよね。

アトランティスさん? かっこいい気がするっす!

海中都市で伝説の島! 不思議の塊っすし、なかなかお似合いじゃないっすかね?


あとは…………。


「ルルイエ」


「くぷくぷくぷ。ルルイエ。それがコレの名。うん。いいね。不思議な響き。なのにとても馴染む」


ぽろりと口からこぼれたつぶやき。それもこれまでのどの言葉よりも小さな声のその名称をウーパールーパーさん――ルルイエさんは拾い上げたっす。


ルルイエ……知らないっす。

自分は、そんな名前聞いたことないっす。

輪っかさんのお仕置きの中に混ざってたんすかね? よくわからない膨大な情報が入ってくるっすから。


『はぁン? なルほど、こりゃあきな臭えなぁ? キヒヒヒャヒャ』


輪っかさんが小さく呟いていたっす。

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