お姉さんは魔王様だったっす
遅刻が目立つので反省します……。
どうもっす。
自分の名前はクゥトアヌっす。
クゥトアヌと申しますっす。
ヘイ君なんて名前ー? あ、自分クゥトアヌって言うっすー。
『うルっせえ!! 名前つけラレたくラいではしゃぐな!!』
ぎゃぁああああ!! いだだだだだ!!! 頭が痛いっすー!!!
『ちったぁ落ち着いたか低脳猿畜生様よ?』
より酷くなってるっす!?
というか輪っかさん今のなんすか!? よくわからない言葉とか映像とかがドバーッと頭の中に流れてきたっす! めちゃくちゃ頭痛かったんすけど!?
『前にてメえが暴走した時にもやったが、てメえノそノ小せえ脳みそにオレ様の叡智をブチ込ンでやった。要ハ容量オーバー起こしただけだ。まあ、あンまりやリすぎルとアッパラパーになルかラ多用ハできねえけどな。オレ様も疲れルし』
なんと、そんな恐ろしい隠し技をお持ちだったんすね!?
……あまり輪っかさんを怒らせないようにしないとっす。
「チッチー」
痛がっていた自分の頭を小さいお方が撫でてくれたっす。
優しさが身にしみるっす……!
『さて猿畜生も落ち着いた見てえだから話進めっぞ』
……えーっと……。
『そこのアホ魔王の国を獲り返しに行く話だ! 名付けで浮かれて忘れてんじゃねえよ!!』
ああ! そういえばそんなこと言ってたっすね! いや申し訳ないっす。
「ほ、本当に行くの〜? 確かに〜戦争とかになったら大変だけど〜そうなると決まったわけじゃないし〜」
『甘っちょレえ事言ってンじゃねぇぞ、クソ乳女。起こってかラ止めに行くノと未然に防ぐンなラ、どっちノが世界にダメージ少ねえかてメえノ方が余程詳しいだロうが? グダグダ言ってねえでさっさと出かけル準備しロや!!』
「クソ乳女……うう〜わかったわよ〜」
そう言ってお姉さんは奥の部屋に入っていったっす。
しかし輪っかさん、来た直後と今で完全に態度が真逆になってるっすね。お姉さんが優しかったから態度でかくなるとか完全に小物っす。
『うリゃ』
ぎゃぎゃぎゃー! いだいだいだだだいっす!! ごめんっす! すんませんしたっす!!
『キヒヒ言動にハ気をつけルこったな!』
図星突かれたからって暴力に訴えないでほしいっす!
『あーあーわーったわーった。てメえにアッパラパーになラレても困ルしな、もうやンねえよキッヒャッヒャ』
「おまたせ〜。さあ行きましょうか〜?」
お姉さんの準備は意外に早かったっす……ってなんすかその格好!?
奥の部屋から出てきたお姉さんは、先程までの長袖、長スカート、エプロンといった近所のお姉さんスタイルから一変! すごく刺々しい真っ黒な全身鎧姿でご登場っす! たなびく赤いマントがアクセントになっててかっちょいいっす! 甲冑から出てる角は自前のものっすね! まさしく魔王様と言った出で立ちっす!!
鎧も意匠が細かく肩当ての部分が牛の頭になってるんすね!お姉さんはなで肩気味だったので、肩から伸びる牛の角でシルエットがゴツくなるように計算されているようっす!
よく見ると細かなところに銀や金の縁取りがされていて、それがまた鎧の存在感を際立たせているっす!!
更に更に! 背中に背負っているのは大きな両刃斧っすね!
ファンタジー特有のこんなん誰が振れるんすかと言わんばかりの大きな斧っす! 自分と小さいお方が峰の部分に乗っても余裕っすね! これもまた迫力のある牛の顔が彫り込まれているっす! 牛の角が斧の刃になってるイメージなんすね! これも怖いっすけどかっこいいっす!
あああ! こんなのラスボスっす! 出会ったら即終了っす!
お姉さん本当に魔王様だったんすね!
「あ、あら〜恥ずかしいわ〜、そんなに褒めてくれた人今までいなかったから〜うふふふふ〜」
おおお、声がくぐもって少し低く聞こえるんすね! なるほどこれで威厳を出すわけっすか!
『何なンだよてメえノそのテンション!! 怖いわ! 大力王こいつ持ってさっさと出ンぞ、多分放っといたラ一日中感想言いそうな気がすル!』
輪っかさん、だってかっこよくないっすか!?
黒甲冑に赤マント! 男の子なら一度は憧れるっすよ!?
『わーったかラ少し黙っとけ!?』
「チッチィチッチィ! チッチチチー!」
ほら小さいお方も興奮しておられるっす!
するするりと小さいお方は甲冑を登っていき頭頂部に落ち着いたっす。
おお、小さいお方のピンク色が黒甲冑のアクセントになっててまた素晴らしいっす! さすが小さいお方っす。自分の活かし方をよくわかってるっす。
『なンかこいつやべえ宗教ノ信者みてえになってきたな……まあいい、ほレさっさとてメえも乗っかっとけ。魔王ノ速度で移動すンだ今のオレ様たちじゃ追いつけねぇ』
んん、さすが魔王様ってところっすね。小さいお方と離れるわけにはいかないっすから、すみませんっすお姉さん。
「ふふふ〜いいわよ〜。はいどうぞ〜」
乗っかることを申し訳なく思ってたらお姉さんが自分を持ち上げて肩に乗せてくれたっす。
凄いっすね。お姉さんの目線はこんなに高いんすね。
「さあ〜しっかり捕まっててくださいな〜。ちょっと私の国は遠いから〜少し急がないと〜」
そう言ってお姉さんは自分と小さいお方を軽くおさえて――
――空を飛んだっす。




