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送辞
コピペしたような安っぽいブレザー制服を着て、椎名香穂子は写真を引き裂いた。
高校一年生になった一歩目で、黒ずんだ白い壁を蹴り飛ばす。
「校舎まで馬鹿丸出し」
あちこちの壁に写真が貼り付けられていた。写っている物はさまざまだ。卒業式のパネルを挟む生徒たち、体操服姿でバレーボールを持つ生徒。牧場で動物を抱きかかえたり、寺社仏閣の前でピースサインをしている写真もある。
(なんで写真なんて貼ってんだろ。入学式なんて、今日一日で終わるのに——……あれ?)
一枚の写真に手を伸ばした。他の写真はどれも生徒が写っている。けれど、何枚か妙な写真があった。
(生徒のシルエットに夕日が重なってる。こっちは脚が海だ)
景色が半透明になり、いくつも重なっている。重なりすぎて、人々がなにをしているのか分からなくなっていた。
写真を裏返すと、隅に『Photography Club / Mochiduki』と綴られている。景色の重なっている写真には、どれもMochidukiと書いてあった。
(……この中に埋もれられたら、私の存在も曖昧になるのかしら)
チープで汚い学校の中で、なにを映したのか分からない写真だけが輝いていた。香穂子はピンクトーンの写真を鞄に潜ませ、埃っぽい体育館に足を踏み入れた。




