夜明けのドライブ(前編)
今月は投稿のペースアップに挑戦します。
という事で、週に3回(火、木、土曜日)のペースで投稿する予定です。
皆様よろしく。
ここで物語を数時間ほど遡ってみる事にしよう。
冬夜が目を覚ますまで、彼の見る夢の中に潜り込んで。
夜明け前の湾岸通りを深紅のSUVがのんびりと走っていた。
その後ろには距離を開けつつも、つかず離れずについてくる2台のMSV。
30分後に彼らは謎のスリップ事故を起こし、海軍航空隊が出動する……
ちょうどその時、その場所へ。
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僕は桐山病院から自主退院──ぶっちゃけると脱走した。
正確には芹沢博士と山ノ谷博士によって病院から連れ出されたんだけどね。
そして美月と友里さんと…… そしてポコ君も。
5人とロボットは山ノ谷博士の作った空飛ぶSUVで逃げ出して。
西の方にある山岳地帯で、ひっそりと暮らすつもりだったんだ。もちろん原始生活を送る気なんかないさ。21世紀で暮らす僕たちが電気もないような、江戸時代の生活に耐えられるはずがない。当然、住むあてはあるよ。
でも、途中で小坂部の姫様に会った事で、方針は大きく変わった。
姫様は言ったんだ。それも美月に向かって、うやうやしく。
──西に向かうのはお止めください。危険が増すばかりでございます……
このあたりの地主神──小坂部姫のアドバイスだ。疑うまでもないだろう。
という訳で、僕たちは東へ逃げる事にしたんだ。
目的地は──アズミン市。西の都と東の都の中間点に近く、あのあたりにも姫様の友達がいるそうで、そこを頼ればいいそうだ。
……という訳で、僕たちは来た道を戻る事になったんだ。
時刻は午前4時…くらいかな。
夜明け前のドライブって何かワクワクするよね。
でも、僕はそれを素直に喜べないでいる。
どうして僕は、ここにいる? 誰にも言わずに退院したのは何故?
わからない事だらけだよ。
「ねえ芹沢博士、気になっている事があるんですけど……」
「ん、何だね、冬夜くん」
「僕が桐山病院から… その、退院した事って正しかったんでしょうか」
僕は医療処置を受ける事になっていた。どんな処置なのかは知らないけど、天野さんが来たのが真夜中で、今すぐに処置をする必要があるって話だった。
それを、物理的にすっぽかしたんだ。
思えば、昨日は昼からドタバタしていたかな。
あの時の僕は鎮痛剤の過剰摂取──いわゆるオーバードーズの影響で、身体がおかしくなりかかっていたんだ。
それの対処で芹沢博士と岩本女史が色々と手を打ってくれていたんだ。
間が悪いというのは、こういう事だろうかね。
鎮痛剤の中和処置が終わりかかって、大量にかいた汗を拭いてもらっている時に天野さんが病室に来たんだ。
そして、見られてしまったんだ。……胸にイミューンが張り付いた僕の姿を。
あの時の天野さんは、今までに見た事のないような顔をしてたなぁ。
まるでこの世の終わり… まるでそんな顔をしていたよ。
そして、震えながら僕を指さして、こう言ったんだ。
──発症…… したの?
……って。
岩本女史は、大丈夫だって言っていたのにね。
でも、彼女は今にも泣きそうな顔をして病室を走り去ったんだ。
「あの時… 発症、って言ってましたよね?」
山ノ谷博士や芹沢博士、そして友里さんは、感染症(?)から隔離された僕を診察をするために徹底的な防疫処置をしていたはずだ。そのために腸内細菌の入れ替えまでやったそうだから、徹底しているなぁ… って思ったもんだ。
そして、僕も…… 例外じゃない。
つまり、そこまでしなきゃならないような病気が流行っているとしたら…
怖くないか? 感染したら死んでしまうような病気かもしれないだろ。
だから、僕も頑張った。あの触手みたいのでお腹の中をグニグニされる感触は、思い出したくもないけどね。
「ああ、あれか。特に意味は無いんだ。病気とはなんの関係がないのだよ」
「えええええっ?」
なんでぇ? あんな思いまでして細菌交換したのに、意味がないだなんて。
どういう事なんですか!
「いやいや、研究中の人造生物の実験台を探している時期でね。いいタイミングで実験台が現れたものだと思っていたんだが… 会ってみたらびっくりだよ」
ええと、僕は何かびっくりさせるような事、しましたっけ。
記憶にぃ、ございませぇーん。
「こーんな可愛い男の子なんだもん」
「いいかい冬夜くん。耐性持ちの男性というのはだね、ブ男と相場が決まっているのだよ。なまじ耐性持ちの自覚があるから、本当に始末に負えないのだよ」
えっ? そうなの?
腸内細菌の交換については、そのうちに話す事があるかも。
それなりに深くて笑える理由… いや、わらっていいのかなぁ? これ。
まあ、いいか。どうせ冬夜くんだもん。




