地図にない場所
番外編(登場人物のまとめ的なもの)を18時に投稿します。
本編とは関係がありませんが、裏設定とかネタバレがあるかも。
みなさまよろしく。
夜明けの空を、1機の飛行機がよたよたと飛んでいる。
飛行機とはいうが、そのフォルムは飛行機というよりも自動車のそれに近い。
さらによく見れば無数のへこみがあり、塗装も一部が剥がれ落ちている。
それは山之谷博士と芹沢博士が小型のSUVを魔改造して、飛行機として使うことの出来るようにした『空飛ぶ自動車』だった。
見る限り満身創痍で、飛ぶのもやっとという状態になったのには訳がある。
「んんんんん。こりゃあ、ダメかもしれないわねぇ」
「海軍航空隊が出てくるとは、さすがの私でも予想は出来なかったからねぇ」
「あーしも驚いたよぅ。見えてる筈ないのに機関銃、当てるなんてぇ」
「…………」
それぞれ山ノ谷博士と芹沢博士と美月のセリフである。さっきまで海軍航空隊の戦闘機に追い回されてたというのに、呑気なもんだよ。
僕は逆に冷静になり過ぎて気絶すら出来ないでいるんだよ。
隣の友里さんは…… 普通はそういう反応をすると思うんだ、うん。
「でもぉ、なーんでこうなったかなぁ。あーしもビックリって感じ?」
「それはだね…… たぶん射撃管制レーダーを使っているからだろうねぇ」
美月はサーリアとしての力をふるい、SUVの周囲に認識阻害の結界を展開していたのだ。認識阻害は人間──いや、すべての生物の意識に作用する。
この認識阻害について、詳しくを語る必要はあるまい。
「レーダー? ……そっかー、結界の種類を間違えたって感じかぁ、てへっ」
「こればかりは仕方があるまい、美月ちゃ… サーリア様にはこういう経験は無いだろうからねぇ」
「もー、固いなぁ。美月でいいってばぁ」
苦笑いをしながら話す美月だが、その相手をしている芹沢にしてみれば気が気ではなかった。なにしろ相手は異世界人を──この世界の人間と合体させてしまうような存在である。芹沢が知る限りで、そんな事が出来るのは神くらいのものだ。
「しかし、最高神クラスの神に……」
「あーしはぁ、超絶かっわいい、み・つ・き、ちゃんだし!」
「はいはい、わかったわぁ。じゃあサーリア様、墜落しかけているこのSUVを、何とかしてくださらないこと?」
「ならばぁ、着陸すればいいじゃーん?」
のんびりとした口調とは裏腹に、山ノ谷はぎりぎりの操縦をしていた。彼女の額には、うっすらと汗が浮かんでいる。もともとアクロバット飛行が出来るようには作られているワケではないのだ。さらに、機関砲弾を何発かもらっているのだ。
少しでも気を抜けば車体はバランスを失い、地面に激突するだろう……
「着陸場所出来そうな場所はないわよぅ、それに燃料も残り少ないのよねぇ」
「えええええ? 出がけに満タンにしてきたのだよ。もう少し…」
SUBの燃料タンクは、さほど大きくない。ポリタンク3本分くらいは入るとはいえ、ガスタービン(実質的にはジェットエンジン)の燃費は良いとは言えない。
というよりも悪い。ジェットエンジンは燃料をバカ喰いするシロモノである。
「拙いわねぇ、冗談抜きで降りられる場所、ありそう?」
「地図によればだね、このあたりに176号国道がある筈なのだが……」
「ススキだらけで分からないわよぅ!」
「んあ… ああ、あったあった。おかしいな…… この先はF市に……」
眼下に広がるのは、つる草がからまる雑木の林と黄金色の絨毯のようなススキの群生地だけだ。しかし芹沢が手にしている地図には、間違いなく小さいながらも人の住む街がある…… 筈なのだが……
眉間にしわを寄せる芹沢に、友里はおそるおそる声をかけた。
「あの…… 芹沢博士?」「何だね、菱見クン?」
{F市なら20年以上も前に放棄されて。その…… 人口が足りなくなったので、伊吹市に集団移転したにゃ」
菱見 友里という人物は、普段はのほほんとしたドジっ子を演ずる猫又だが、人間社会に溶け込むための努力を惜しんでいたわけではない。
その努力が功を奏したわけだが……
「ふむ、ならば好都合というものだねぇ。身を隠すには……」
「つかまって! 着陸するわよ!」
次の瞬間、僕は… いや、全員が下から突き上げられるような衝撃を受けた。
同時に凄い音と共に固定されていなかった荷物が車内を暴れまわる。
「うひゃぁああ?」「ぬおあああ!」
問題は美月だ。僕のひざの上に乗っているだけなので僕の両腕がシートベルトなんだ。もしも手を離したら、今のショックで頭を天井にぶつけていたかも。
それからもSUVは何回か地面をバウンドして……
……止まった。
「ふゃぁぁ… なんとか着陸ぅ。これで無事に逃げ切ったってワケ?」
「いんや、そうでもないみたいだねぇ」
「えええええっ!?」
一難去ってまた一難って…… というのは、この事か。
やっぱり僕は、不幸だ……
自然は、いつだって人工物に攻撃を仕掛けるものなのです。
それも、とても激しく、とっても苛烈で容赦なく。
バードガーデニングなんて、大嫌いだぁ!




