日常~起床の明るさ~
「んんっ……」
布団の上で目を覚ました僕は、両腕を伸ばして大きなあくびをする。目が潤みを指で拭いつつ、耳に届いてくる鳥の声が朝を感じた。
——良い匂い。
母親がキッチンで朝食を作っているようだと、嗅いで思うにハムでも焼きてるのかなと、考え楽しみを胸にベッドを降り立つ。
——七時三十二分。
机上のデジタル時計を見ては窓へと歩き、太陽の光を受けながら大きく開ける。雀の群れは驚きに慌てて飛び、屋根の上へ姿を隠した。空を見れば雲が浮かび、白き清く輝いてる。土曜日の今日は学校が休みで、約束はない。
——着替えるか。
衣服を出すために窓から離れ、対角にある押し入れへ向かう。襖ではなく折り戸を開け、下段に積み並んだ収納ケースに視線を向け、しゃがむ。
——うーん……。
引き出しの中を見ながら組み合わせをどうしようかと、森へ行くのだから汚れても良い物にしないと、多くないのに悩んではお決まりのコーデにする。薄手の長袖は深緑のシンプルを、下部のズボンは同じ色に揃え、上着のジャンパーは青いメッシュで風が通る。脱いだパジャマは畳んで置いた。
——行くか。
気づけばさっきまでした朝食の匂いがなくなって、用意が終わったのかと思う。部屋を出て、一階へ下りて、顔を洗って、ダイニング。
「おはようございます」
「おはよう」
昨夜は良く寝れたと母親に聞かれて、返事は頷きと共にキッチンへ向かう。調理台の上の二皿にサンドイッチが美味しそうで、更に厚めのハムが三つと見ては涎が出かける。食卓に運び茶を注ぎ、席に着く。
「いただきます」
母親と一緒に手を合わせて、食前の挨拶をした。先に好きな焼きハムを一つ食べて、次にサンドイッチはスクランブルエッグにマヨネーズをモグモグ。
「今日はどうしますか?」
「務めを、昼に帰って来るよ」
「分かったわ、待っています」
「ごちそうさまでした」
食べ終わってみれば腹いっぱいで、思うに量は少ないけれど厚みがあったことによる。食器を自分で洗ったら水筒にお茶を入れて、二階の自室へ戻り準備する。
——持って行くもの……。
通学用の鞄を開けて、タブレット端末を出し、小容量のメッセンジャーバッグに入れる。勉強机の上に目を向けて、モバイル端末を手に取り、右のポケットへ滑らせる。最後に中身を確認したら母親の元へ行き、一言と告げる。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
北対屋は玄関で見送られて、正面に建つ挟門を押し開ける。第五層の森へ伸びる階段は急になって、手摺に掴まりながら上がって行く。背後で扉の閉まる音を聞くも、振り返らない。
——うん、やっぱり。
天気の良さを清々(すがすが)しさも大きく吸い込んで、見上げれば木の葉が煌めきて萌葱の鮮やかさが魅せるんだ。立夏は過ぎた。




