日常~野菜を沢山と~
――自然要塞。
央都の南側には最後の砦と言われし場所があり、国土を侵略するを阻む盾だ。地的有利を生かして機動力の高さで退けた過去があり、目前の草木などに隠された兵器が恐ろしい。
――急ごう。
自宅まではまだ距離があるのだと、眺めてる暇はないのだと、自転車に乗り漕ぎ出して、東林道を走り行く。内部は速くも薄暗さが訪れて、不気味さは日が暮れるほどに増してゆく。出口から差し込む暖かな光は、眠さを招いた。
「うっ……」
林を抜けると明るさが目を貫き、思わず顔を横に向けた。足でブレーキして止まりそのまま、青い光の跡が消えるを待つ。瞑って開けてと繰り返せば、曲線を描いて続く道や両側に立ち並びし家を見られるようになる。
「きゃはははは」
「こっちこっち」
「ねえ、まってよぅ」
道路の上で子供たちが楽しそうに、追いかけっこをしている。自分にもそんな時があったなと、懐かしみながら慈しむ目で守っていた。
「おや、おかえり」
「あっ、ただいまです」
左手に建つ和風の家に住むおばあちゃんに、声を掛けられて顔を向けつつ返した。名前は覚えてないが、その顔や声は覚えていて、野菜を良く貰う。
「毎日、頑張っとぉねぇ」
「ありがとうございます」
「学校はどうなんかねぇ」
「楽しさもあれば忙しさもあります」
「そうかい、ええことやよ」
「帰らないと遅くなってしまうので……」
暇を告げて場を離れようとしたら、少し待っててなと言われた。僕が聞く前におばあちゃんは小走りでどこにへと、渡し物があるようだ。
――五時二十三分。
落とさないように鞄に入れていたモバイル端末を出して、時間を確認する。視線を上げて空を見れば、色の青きは薄い藍に移ろいした。
「これ、お母さんに持って行きぃ」
「こんなに、いいんですか?」
「豊作だったからねぇ、お隣さんにも分けたんやよ」
遠慮なんぞしないでと押し付けられては、断れるはずもなかった。仕方なく言葉に甘えて受け取り、自転車の籠に野菜袋を入れる。通学鞄は背負ってサドルに跨がり、改めて礼をしては家へと漕ぐ。
『大禍時を過ぎたなら
夜の帳がおりてゆく
村は眠る音は消えて
道を歩く人は居らず……』
題は、魔ノ赤キ。明るさの無い歌が耳に届いたことで、頭の中で歌が響き続ける。和暢門は央都の東を過ぎた頃に、一つ一つと灯る。
――子供は帰る時か。
日本の童謡の夕焼け小焼けが国中に流され、烏が巣へと戻ってくを目にした。走りも止めずに静かとなるを感じつつ、夜までに着きたいと思う。




