定律~守護の選定を~
「界希、おめでとう!」
聖なる樹のうねる根の上で座る僕へ、女児姿の水流が元気な声で言う。神霊たちは相変わらず仏像のように布を纏っていた。
「珍しいね。十二も揃って居るなんてさ」
「守護者の選定の件だが、皇帝に認めてほしいと思う」
「ふうん……、そこまでゆうのなら……」
「済まないな。南の森に行くぞ!」
風起は命令するや僕たちを率いて、五層台地の頂きから麓へと空気の橋を架け、一直線に天翔るように滑り下りた。断崖絶壁を背に着地し立つと、目前で驚いた様子の少年と少女を見た。
「びっくり……」
「飛び下りて来たの?」
真似しちゃ駄目だよと言うべきか困惑しながら見回してみると、子供の数は十三で、中が良さそうに思えないんだ。中学生ほどの背丈だった。
「一人多いけれど、理由がありそうだね」
「皇帝の盾となり御影となる者もここに居る」
僕は探してくれと頼んだ覚えはないし、国を統べるほどの力を有するのだから守りは入らないと、思うに留めて声にせず考えた。
「戦えるのであれば、見せてもらいたいな」
子供たちにも聞こえるようにそう言うと、風起が人差し指で歩み出させた。自分の身長よりは少し低い位で、近侍するに値するか知れなかった。
「遠慮せず掛かって来い!」
「断ります、分かり切っているので」
国内最強だと誰もが認める皇帝に敵う者など居ないと、冷静に判断した上で拒否してきた。面白さを感じ、笑みを浮かべる。
「フッ、だったら……」
自分と同じ属性を持つ子供を前に出させて、二人に戦うよう命じた。風認を御影が下したなら、検討するべきだと考える。危険すぎる。
「一本勝負、始めっ!」
合図と同時に放たれた風の刃は、挨拶代わりと言うように容易く防がれる。空中で作られた闇の矢が、一斉に射るも避けられ木を倒す。水色と黒色の軌跡は激化を物語り、不意に稲妻が走って静かになる。
「満足ですか?」
御影の術によって麻痺した風認はまだやれると、必死に足掻いて居た。実力は互角に思えたが、経験の差などで決まった。致命的だ。
「ああ、そこまでだ」
十二神霊によって鍛えられたようだと感じるも、早急に統制せねばと恐怖を感じた。国内には他に覚醒し者が数えれぬほど、存在するからだ。
――気に入られるだけの力はある……。
全員の実力は申し分なく、妖異に対抗できると評価した。守護家の上位に柱たちが集う場を作って、能力者を管理させようかと思案する。
「今日の所は帰ってもらい、後日に決定を伝えます」
色々と準備する必要があるため、議論なしには認められない。鍛錬は怠ることをせずに続けてほしいと、言葉を最後に解散する。空を見れば、赤く焼けてた。
「……戻ろう」
黒染の乱のような犠牲を出さないように、能力者を持つ者を増強する場の設立など、遣ることはまだまだある。安寧のために尽力してゆく。




