表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/103

定律~犠牲の多さに~

「アァ、ア……」

 完全に動きが止まり、うなる声も止んで、僕の名を呼べるほどに戻ってきた。良かったぁと喜んだのもつかで、決断を迫られる。

「カイキ、スマナイ」

 正気にはなったけれども、長くは持たない。頼むから殺してくれと、自分の胸を黒い爪でつかみながら言う。現状の全ては私の罪と、涙を流していた。

「できないよ、だって……」

 今日までに島が豊かとなったのは、最初に来訪したマシューさんたちのおかげでもある。二人で語り合い約束した、建国の夢は諦めてしまうのと聞くんだ。

「マモルベキ、ウシナウナ」

「だったらさ!」

「ワン、フォー、オール、オール、フォー、ワン」

「一人は万人のために、万人は一人のために……」

「イエス」

 究極の生命いのちの選択を迫られていて、片方は島民の死を、片方は恩師の死を、天秤てんびんにかけるんだ。猶予ゆうよはもう無い。

「グウッ、ハヤク、シロ」

 苦悶くもんする様子としかめた顔を見ながら、右手で風のつるぎを造ってはにぎる。様々な思いが入り交じり、言葉が出なかった。

「カイキ、ヤミニマケルナ」

「うん」

「サア……」

「今日までのこと、忘れません」

 貴方あなたの罪をも背負って生きると、最後に伝えては剣先を胸へと向けた。感謝の気持ちと共に心臓を貫く。大切な人の血で手を濡らしつつ声を聞く。

「アリガトウ……」

 僕に体を預けるように倒れ掛かりながら、言葉を心に残して逝った。マシューさんの顔を見れば穏やかで、思わず抱き締め涙した。

 ――次のせいはせめて。

 安らかでありますようにと祈りしては、遺体を地面にゆっくりと横たえる。戦いはまだ、終わっていないんだ。風の守りを築き残しては、次の村へ。

「どっ、どうか……!」

「終わりにしよう、まだやる?」

 命乞いのちごいしてる悪人の姿を見ても、感情は何も抱かなかった。自分のことしか考えてない言葉は響かず、血ぬれた両手が黒くなるのを見てたんだ。

「武器を捨てろ!」

 風起かざおが来てはそう一喝すると、誰もが慌てて投げ置いた。助けて、従う、口々に言い、傷つけ殺した罪は棚に上げる。

「切りがないな……」

 人間の心が生み出したけがれは思ったよりも多く、闇に侵されたり染まった者と共に争い続けている。恩師の犠牲は何のためかと、怒りを覚えたんだ。

「行こう」

 悪人たちをおりに閉じ込めては、第四の村に第五の村と駆け付けた。不眠不休で五日もの時を掛け、三神霊と協力して南方の全てを鎮圧した。

「ふう……」

 長い長い戦いは幕を下ろし、数百に上る亡骸なきがらを見て悔しんだ。思い思いに火で葬っては、骨を粉にして海にく。七日間は喪に服する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ