第5話 ~王国騎士~
リープを連れてセルファの町の様子を見ているが、もう町中に倒れている者を見掛ける事は無い。代わりに、大切な者を失って悲しみに暮れている人を何人も見受けるがね。
今更な事は言えないが、山頂に逗留したあの日にセルファに入っていれば、もっと被害は抑えられていたかもしれない。そう思うと、幾ら大元を倒したと言っても胸は張れんぞ。
「やっぱり、町の人達は……」
「助からなかった者達も、少なくなかったのだろうな。私達が来た時点であの様子だったんだ、仕方なかっただろう」
「うん……でも、許せないね。なんだったんだろ、あの変な奴」
「魔貴族の、フェストだったか。大して強くはなかったが、口だけは達者な奴だったな。次に出会したら、あの口を割らせて色々聞き出したいところだな」
「だね。レジェンディアって言うのの事、僕やっぱり気になるよ」
確かに。リープの竜魔法を喰らって言ったという事は、そのレジェンディアというのが竜魔法を使えたと推測出来る。となれば、同じ竜魔法が使えるリープは、そのレジェンディアというのに関係があると言える。リープが何者かという手掛かりだ、そうそう諦めるのは勿体無い。
しかし魔族か、どういう連中かは知らないが、響き的に碌でもない連中なような気がするな。というより、もうとんでもない事をしでかしてる以上、捨て置く訳にもいかないだろう。
まぁ、奴等をどうにかするのは私の役目ではない。王国騎士の連中が動くようだし、そっちに任せておけばいいだろう。
何故そんな事を知っているかと言うと、その騎士共の事情聴取から逃げてきたからなんだがな。まったく、確かに私はあのイブルアイとかいう化物を退けたが、それで騎士連中にごちゃごちゃ聞かれるのは面倒だ。私の知ってる事はカブラスやロウに話しておいてあったし、そちらに丸投げしてきたよ。
「兎も角、もうこの町で私達がやるべき事は無いだろうし、今日一日休んだらまた旅の続きと行こうか」
「そうだね。……あれ? トゥアン、あれメリアじゃない?」
ん? リープの差した方を向くと、確かにメリアらしき黒馬が走っていくのが見えた。が、あまり愉快な状況とは言えなさそうだな。
その後を鎧や甲冑に身を包んだ十人程が追っている。……どう考えても、メリアに魔法を使ってもらう為に追い掛けているという風には見えないな。となると、魔物として追われてるというのが妥当なところだろう。
「やれやれ、どうやらメリアが不味い事になったらしい。行くぞ、リープ」
「うん! 大丈夫かな、メリア?」
「よっぽどの事が無ければ大丈夫だろうが、いかんせん町の中だから暴れられんだろうし、放ってはおけんだろう」
鎧姿達の後を追って走り出す。全く、この町の住民を救う為に奔走した者の一匹に対して無礼な奴らだ。事と次第に寄っては、少しばかり仕置をしてやる事になるかな。
しばらく追っていくと、ものの見事に周囲を囲まれたメリアを見つけた。この分だと、魔獣故にこの町の襲撃に関与していると思われたと言うのが妥当なところだろう。
「誤解です! 私はこの町に危害を加える気はありません! 信じて下さぁい!」
「魔獣の分際でよくそんな物言いをするな! 町一つを滅ぼそうとした罪だ、死ね!」
「……はぁ、無知とはここまで行くと大罪だな」
「メリアは必死にこの町の人を助けようとしたのに、あんな言い方無いよ! なんなのあの人達!?」
「王国騎士の下っ端と、阿呆な退治屋の集団だな。どれ、メリアを助けるか」
マントのフードを被り直し、メリアを囲む阿呆共をすり抜ける。一応顔を隠した方が何かとやり易いからな。
「ん? なんだ貴様!?」
「別に名乗る程の者では無いさ。……大丈夫か? メリア」
「トゥアンさん! 良かった、助かったぁ」
「貴様……その魔獣の使役者か? だとすれば、貴様がこの町を襲った黒幕か!」
「あのな、少しは話を聞こうと」
「だとしたら容赦する必要は無いな! 覚悟しろ、そして潔く首を刎ねられろ!」
ここまで来ると清々しい程の馬鹿集団だな。大体、なんでここを襲った首謀者がこんなに堂々と立て直し始めた町を歩いてる? ほんの少しでも考えれば妙だと思うだろうに。
しかし、刃を向けられれば相手をしてやる他無いしな。しょうがないから少し相手をしてやるとするか。
最初に斬りかかって来た奴の剣閃を読み切り、軽く躱して懐に潜り込む。相手は鎧だ、ダガーで切ろうとしても隙間を縫うのも面倒だし、足を払って転ばせるのがいいだろう。
「そらっ、頭を冷やせ」
「ぐぁっ!?」
「な、この!」
「ふぅ、甘い甘い。最近の騎士とは、相手の力量も読めないのか? 詰まらん」
「見てる感じ、トゥアンの足元にも及ばない強さって感じだね。これならどれだけ数が居たってトゥアンが負けちゃう心配は無いや」
頭の上、刃の当たらない位置からリープが言った通り、この程度の腕の者達になら束になって掛かって来られたって負ける気はしないな。これが日頃から王国の敵とやらとの戦いを想定して訓練を積んでいる者達とは、笑わせてくれる。
あまりやる気は無かったが、これだけ緩い剣撃を続けられると……せめてダガーを抜かねばならない程度の相手が出てきてくれないかと思ってしまうぞ。目が鈍る。
それからも次々と降り掛かる剣を掻い潜り、振ってきた相手を転ばせるという作業を続ける。ふむ、兜を纏ってる所為で頭にコブも出来ないからか、全然諦めないで襲ってくるな。
「……! トゥアン、なんか強そうな人が来たかも!」
「ほう? 一体誰だ?」
「なんの騒ぎだ、これは?」
おや、何処かで見た事のある顔だな。確か……そうだ、以前に王国発の依頼で見た顔だ。魔獣を操り暴れ回る魔道士から、その術に使われている魔道具を奪い王国魔道士に届けるという依頼だった。
それが、それぞれのギルドからの腕利きや王国騎士の精鋭が集められての依頼だったのだよな。まぁ、確かにえらい数の魔獣を相手にさせられたから、腕の良い人間を集めたのも分かるがな。
その中の一人が、今私の目の前で、何が起こったのかを疑問視しているこいつだった。片手で大剣を振り回すとんでもない奴だったっけな。
「ロナフェル団長! 魔獣ナイトメアと、それを使役している者を発見し追い詰めていた次第です! 恐らく、この町を襲った者と……」
「いや、どう考えてもこの町を襲った首謀者がこんなところをウロウロしてるのはおかしいだろ。それに、町の者から聞いた話では、町の者を魔法で癒していた一匹の黒馬が居たと聞いている。それは、そこの黒馬ではないのか?」
「なるほど、どうやら騎士団長様は話が分かる者のようだな。まぁ、あまり会いたくは無かったが」
「……そして、マントを纏う赤髪の短剣使いが町を襲った者を退けた、と。それを聞いて思い出したよ、魔獣使い討伐の任務で、異彩を放つ程の技量を持つ運び屋が居た事を。やはり君だったか」
「ロナフェル・オヴェイン、だったかな? あいも変わらず馬鹿でかい剣を使ってるようだな」
まさか、こんなところで見知った顔にまた出会すとは思わなかったな。巡り合わせとは、面白くも面倒なものだ。
お陰でこの場は収められるだろうが、こいつに何が起こったかを話さざるを得ない事になったか。やれやれだな。
「兎に角、ここで立ち話を続けるのもなんだ。そこの黒馬共々、ご足労願えるかな? ……トゥアン・ソフィエル君」
「なんだ、名乗る必要も無かったか。仕方無い、ここは大人しくついて行くとするか、メリア」
「えぅ、はい……」
「おぉ、人語を介していたようだとは聞いていたけど、まさか喋れるとは。っと、お前達は町の警戒へ戻れ。この者達は、俺が預かる。客人としてな」
「し、しかし!」
「命令に逆らいたいと言うならそれでもいいが、その場合俺はお前達を、町を救った英雄達を襲った者として処断せねばならなくなるが?」
おぉ、真っ青な顔して敬礼したかと思ったら、そそくさと逃げていったぞ。騎士団長殿の一言は重いものだな。
「済まない、私の部下が迷惑を掛けたようで」
「全くだ。もう少し兵達の頭と技を練り直す事だな、あれではお粗末もいいところだ」
「て、手厳しいね……」
「せめて、私にダガーを抜かせるくらいにはなってくれないと、騎士の名折れだろうさ。で? 何処で話をするんだ?」
「この町の騎士団の詰所まで来てもらおう。今は、町の復興会議所にもなってるがね」
だろうな。町の住民の殆どが被害に遭ってるんだ、ならば外部から来た騎士団で復興をせざるを得ないだろうし、そうすれば自ずと騎士が詰めてる場所が会議に使われるのは当然だろう。
ロナフェルの後について歩いていくと、次々に王国騎士達が敬礼をする。なるほど、なかなか人徳のある騎士団長なのかもしれないな。
「ん? どうかしたかな?」
「いや、出世をしてる騎士殿は人徳もあるのだなと思ってな」
「……騎士団長なんて、俺みたいな戦う事が先に来る奴には向かないものだと思うんだがね。上がやれと煩くて」
「それだけの実力があるという事だろ? 良い事じゃないか」
「単に上の連中は、普通の騎士が恐る者を上にして、盲目的に働かせたいってだけさ。じゃなければ、俺のように剣を振り回す奴が騎士団長に据えられる訳が無い」
……この言い分だと、どうやら王国騎士という奴も柵やら何やらがかなりあるようだな。面倒そうに話すこいつの様子を見れば分かる。
ま、そんな物は私には関係無い話だ。こいつがどうであれ、王国騎士である以上我慢する事だな。
どうやら目的地には着いたようだ。盾だの剣だのを飾り付けて、わざわざ景観を無骨にする事もないと思うが。
「あ、あのー……私はどうしましょう?」
「っと、そうだった。入れるのなら、そのまま入ってもらって構わないが」
「という事らしいし、入れそうか? メリア」
「んー……なんとかはなりますけど、少し周りの皆さんを驚かせてしまう事になります」
そうか、あれを使えば大抵のところへ入れるんだったな。普通の家に入れるんだ、それよりもずっと大きなここに入れない訳はない。
「構わんだろ。ロナフェル、今から連れが魔獣らしい事をするから、驚くなよ」
「魔獣らしい事? どういう事だ?」
「ふむ、こういう事だ」
メリアが足を畳んでその場に座り込む。そして、そこから少しだけ体を浮かせる。こうすれば、立ち姿が私達より大きいメリアでも扉を潜れる訳だ。
戦ってる時に見た私やロウは驚かないが、初めて見たロナフェルはやはり驚いてるな。
「う、浮いた? どうなってるんだ?」
「簡単に言えば、体を浮かせる魔法を使ってるって言えば分かり易いでしょうか? 魔力を浮力に変えてるんですけど……」
「はぁ~、本当に魔獣……なんだな」
「でなければ、馬が魔法を使える事自体おかしいだろう? まぁ、メリアのは更に古の大魔道士直伝というのもあるが」
「……そんな魔獣を傍に平然と置いておける君もどうかと思うが、ね。まぁいい、ではこちらへ」
促されたのだからまた後に続こうか。と言ったが、入ってすぐの部屋に通された。広さ的に、ここが会議に使われている部屋だな。
「ここなら落ち着いて話も出来る。……はぁ、堅苦しい喋り方も終わり終わりっと」
「やはりそっちが素か。前に見た時はもう少し砕けた奴だと覚えてたからな」
「団長なんて奴にされてから、話し方も強制させられちまったのよ。んな事はいいや、改めて、久しぶりだなぁ赤毛の」
「え? え? どういう事ですか?」
「そっちの馬の子もよろしくな。俺がロナフェル・オヴェイン、ここ城下大陸南部騎士団の一応の騎士団長さ」
人目が無くなったと思ったらこの調子とは、こいつも苦労してるようだな。
「で? この町に一体何があったんだ? 仕事でロナンに来てたから、知らせがあってすぐに来れたんだけどよ」
「なんだ、まだお前は聞いてないのか? 先程、私の旅仲間が他の騎士に捕まったんだが」
「あー、あいつ等仕事遅いんよ。聞いた話を整理するとかでな。まぁ、俺に聞かせたくない話を間引くのに時間掛かってんだろうが」
「? どういう事だ?」
「俺、他の騎士から煙たがられてるんよ。王国への忠誠心が足りないーとかでな。ま、貴族連中や王族にへいこらするのは真っ平ゴメンだし、どうでもいいんだがよ」
「お前、それでよく王国騎士になったな?」
「成り行きって奴だよ。っと、俺の昔話はいいだろ。今は、この町で起こった事を聞くのが先だ」
うむ、そうだな。私が来てから見聞きした事になるぞ、という事を先に言って、私が遭遇した者達の事を話した。それ以前の事は知らないしな。
「ふぅん、魔族ねぇ? そいつがここを襲った魔獣達を操っていたと」
「らしいな。実際、私が相手をしたイブルアイとかいう化物は奴に従っていた。……そう言えば、あれが使っていた剣が落ちたままにしてあったんだが、あれは何処に行った?」
「あぁ、あの馬鹿でかい剣な。俺でも両手で持たないと持ち上がらなかったが、なんとか回収して今はこっちで調べてるぜ」
「あれが持ち上がったのか? ……お前、人間か?」
「はっはっは! 普段からこんなもん振り回してるんだ、気合い入れればどうにでもならぁな」
まぁ、身の丈より長い剣を普段から背負って歩いてるような馬鹿だし、持ててもおかしくはないか。
なんにせよ、あの剣が回収されたのは良かっただろう。相手の体を切らずに魔力だけを吸い上げる剣なんて、気味が悪くて仕方無い。早々に正体が分かってくれるといいんだがな。
「なんにしても、この町にあんたが流れ着いてくれたのは僥倖だったな。もし来てなかったら最悪全滅だ、おまけに何の情報も得られなかっただろうし……本当、助かった」
「礼を言われるような事はしていないつもりだがね。我々も向かう先の道すがら、ここを通っただけだし」
「そういや旅仲間が居るって言ってたっけな。一体何処へ行こうとしてんだ?」
「王都だ。そこのドラゴン保護協会にこいつを届けるのが今受けている仕事でね」
「どうも僕です! なーんて言っても、この人には僕の言葉は分かんないだろうけどねー」
「あぁ……気になってたけど、そいつは一体なんなんだい? 魔獣の子供って言われりゃそうっぽいけど、この辺りに居る魔物じゃあ無さそうだな」
ふむ、別にこいつになら話しても問題は無いか。そもそも誰に言ってはならないなんて決めてもいないしな。
「どうやらこいつは世に言うドラゴンという奴らしい。ドラゴンのなんという種かは知らんが」
「へぇ、ドラゴ……ドラゴン!? い、今ドラゴンって言ったのか!?」
「そうだが?」
おぉ、開いた口が塞がらないとはこういうのを言うのだろうな。あんぐり口を開けたままロナフェルの奴固まってしまったぞ。
頭を振ったかと思ったら、今度は右手を額に当てて左手をこっちに伸ばした。まぁ、待てという仕草だな。
「赤毛の……ドラゴンがどういう生き物なのかは知ってるな?」
「まぁ、概ね?」
「それが王国でどういう扱いなのかは?」
「さぁ?」
「だろうな、じゃなきゃ連れて歩くなんて思いつかない筈だ」
? どういう事だ? ドラゴンを連れ歩くというのはそんなにおかしな事か? 滅多に居ないだろうが、別に悪い事でもあるまい。
「そもそも、ドラゴン保護協会がなんであると思う? ドラゴンの保護を名目にドラゴンって生物を見張る為にあるんだ。ドラゴンは単体でも大きな街一つを地図から消せる位の力があるとされてるんだからな」
「やけに早口になったな。だが話では、ファイヤドラゴンというのは人に友好的だと聞いたが?」
「確かにそうだけどな、それはファイヤドラゴンだけだ。そのファイヤドラゴンだって人間を良く思っていない個体は多く居る。寧ろ、人から歩み寄る事で辛うじて関係を保ってるって言っても過言じゃねぇ」
ふむ? まぁ、確か昔にファイヤドラゴンは人間に襲われたという経緯があったな。それを考えれば、人間を嫌う者が居るのは当然と言えるか。
それでドラゴンからの報復のようなものが無いように組織されたのが、ドラゴン保護協会という事だろうな。物事の裏側というのは、聞くと面白みの無いものだな。
「そんなドラゴンを個人が連れてるなんて知れたら、それこそ大事になるぜ? まぁ、そのチビスケが本当にドラゴンならだけどよ」
「大事になると言われても、こいつを王都まで連れて来いと言ったのはその保護協会だ。まぁ、預かった時と状態は変わってしまったがな。文句があるなら、無茶を言ったドラゴン保護協会に言ってくれ」
盛大に溜め息を吐いて、腕を組んでロナフェルは考え込み始めた。仮に何を言われたとしても、リープは私の仕事の荷物だ。渡せと言われて渡すつもりは無いがな。
「……この話、したのは俺にだけかい?」
「いや、一緒に旅をしているロウガッファ・アーブという探検屋と、ここに居るメリアには話したぞ。他には特に話してはいないな」
「そうか、つまり騎士団でこの事を知ってるのは俺だけって事だな……ならまだどうにでもなるか」
「つまり?」
「他の騎士連中には今の事、絶対に話さない方がいい。疑いがあるだけでも捕らえるって言い出す奴がごろごろ居るからな」
つまり、ロナフェル自身にはそのつもりは無いって事か。こいつとやり合うのは私としても望んでいないから、それは有難いが。
しかし、そんな危うい状態に居たとは軽く驚いた。私がこういう事を下手に触れ回らない性格で助かったな。
「にしても、まさかドラゴンと来たか……魔獣を連れ歩いてるのが霞んで見えるな」
「お前がそこまで狼狽すると言う事は、本気で厄介な事らしいな」
「厄介なんてもんじゃない。何かも分からないドラゴンを研究したい連中、王国直属のドラゴン保護協会との繋がりを作りたい奴、ドラゴンを倒したって名声を得られると喜ぶ連中……敵を考えだしたらキリが無いぞ」
「ぼ、僕ってそんなに狙われるかもしれないの?」
「らしいな。私はよく知らんが」
ドラゴンとはかくも難儀な生き物だとはな。国もそんな恐る者にちょっかいを出すような組織を作るなというに。
ま、こちらにしても収穫のある話ではあったな。現状の整理が出来ただけでも御の字だ。収穫ゼロで相手にだけ話すっていうのは面白くないからな、こっちにも美味い話が無くちゃ損だらけだ。
「……くくくっ、でも赤毛の、やっぱりお前さんは面白い。そんなややこしい状況になってもそうまでふてぶてしく居られるとはな、俺でも全部投げ出して逃げ出すがな」
「それが出来ればやってるがな。運び屋は信頼第一、王国付きの組織の仕事を放り出したなんて話が広まったら、運び屋で食っていく事はもう出来んのだよ」
「あんたの腕がありゃあ何処だってやってけるだろうよ。なんだったら、最初は俺の下って事になるが騎士入りなんてどうだ? ……返事は聞くまでもないだろうが」
「分かってて聞く辺り、話せる部下は今は無し、か。お前こそ、こっちと組まないか? 飯には困るが、なかなかどうして、悪くないぞ?」
「魅力的な誘いだ。が、ここの騎士団長にまでされると勝手がし難くなるんだ。所謂、飼い殺しって奴だ」
戦力として優秀だが、言う事を聞かない者を番犬にする方法、か。下らん、こいつがその程度で腐るような奴ならば、私も記憶している事は無かっただろうさ。
とまぁ、これで小難しい話は終わりだ。いい加減、メリアとリープを置いてきぼりで話をし続けるのも可哀想だしな。
「全く、俺がだらだらやってる間に世の中相当動いてやがるな。赤毛の、どう動く?」
「魔族とやらの事はお前達に任せる。私は、とにかく仕事を終わらせるのが最優先だ。ま、行く先々で少々寄り道はするが」
「元気で羨ましい限りだ。……なんかあれば、手を貸せる範疇とはなるが、力になるぜ」
「そうだな……なら早速一ついいか?」
「ん? どしたよ?」
「お前、その剣の手入れはどうしてる? もしお付きの鍛冶士が居るなら、こいつをそれに少し見てもらいたいんだが」
ついでだ、そこらの鍛冶屋より腕が良いのを揃えてる騎士団付きの鍛冶士、それに私のダガーを研いでもらうというのも悪くなかろう。
ロナフェルの剣の様子を見る限り、使い込んではいるが手入れはされてる。これを自分で手入れしていないのならば、かなり腕の良い鍛冶士が手入れをしているんだろう。そこからの提案だな。
今の私の得物をこいつに見せれば、どういう状況にあるかは分かるだろう。あのイブルアイとかいうのの相手をして折れてはいないが、また疲弊したのは確かだろうしな。
「こいつは……へぇ、なかなかの業物じゃねぇか。けど、確かに細かい刃壊れ入ってるみたいだな」
「最近少々無茶をさせ過ぎてな、どうだ?」
「あぁ、構わんさ。一応俺付きって事になってる奴が居るから、そいつに見せてみよう」
「助かる。時間は掛かりそうか?」
「んー、こいつを研ぐのにも三時間くらいでやる奴だから、こんくらいのダガーならそう掛からんと思うが、奴に見せてみないとはっきりした事は言えんな」
まぁ、やるのはその鍛冶士という事になるし、それは当然だな。それなら任せてみるとするか。
ついて来てくれという事なんで、私はロナフェルに同行しよう。リープとメリアには少しの間ここで待っていてもらうとするか。
詰所の中を移動すると、私達が通る度に通り掛かった騎士連中が敬礼をする。本当に、こう見ると流石騎士団長だと思い知らされるものだ。
ふむ、どうやら目的の場所には着いたようだ。一室の扉を開けると、恐らく鍛冶に使っているのであろう窯の熱気が一気に押し寄せてきた。こんな中でよく仕事が出来るものだと、この熱気を感じる度に思ってしまうな。
「アレシア、居るか?」
「あ、はい! お呼びでしょうかロナフェル騎士団長!」
「ん? なんだ鍛冶士というのは女性か」
「あぁ、アレシア・ミセート。どこか有名どころの鍛冶士のところで修行した、お墨付きのある鍛冶士らしい」
「もう、お話したじゃないですか。私の師はゾディ・バラン、彷徨の鍛冶士って呼ばれてるんですって」
ゾディ・バラン? 何処かで聞いた事のある名だな。何処だったか……思い出せんな。
ともあれ、こいつの素性は私には大した問題じゃない。私のダガーを手入れ出来るのならばな。
「とりあえず、話を進めてくれるかロナフェル」
「おっとそうだった。アレシア、少し彼女のダガーを見てやってくれないか? 出来るようなら、研磨もしてやって欲しい」
「? 騎士団長、この方は?」
「あぁ、この町の驚異を退けた立役者さ」
「名はトゥアン、見て欲しいのはこいつ等だ。頼めるかい?」
「あ、はい! まずは拝見させて頂きます」
ほう? 抜いて手渡すと、アレシアの目付きが変わった。ふむ、どうやら職人として悪くはないようだな。
「これは……かなり使い込まれていますね。それに、最近出来たと思われる刃壊れ以外はとても綺麗……一体何処でこれを?」
「それは、私の師から譲り受けた物なんだ。師が使っていた以前の事ははっきり言って知らないし、調べようとも思わなかったしな」
「そ、そうですか。材質は……完全な鋼ですね。鋼だけで出来た刃なんて、そうそう手に入る物ではないですよ。普通の市場にはまず出回らないでしょうね」
ふむ、知らなかったが、そんなに良い物を私は使っていたのだな。まぁ、普通の鉄の剣なんかとやり合ったら相手が折れるのだから、鉄よりは硬い材質で出来ているというのは分かってたが。
どうやら目を輝かせて見ている辺り、気に入っては頂けたようだ。が、そのまま持って行かれそうな勢いなんで水は差しておくか。
「で? それは研げるのかい?」
「あわ、そうだった。えぇ、大丈夫です。2時間もあれば仕上げられると思います」
「そうか、ならば頼むとしようかな。依頼料は、と」
「必要無いさ。こいつも王国から給料を貰って働いてる身分だ、短剣の一本や二本くらいどうって事は無いだろ」
「いや、お代は貰いませんけど、鋼製の刃を研ぐとなると相応の研磨材が要るんで結構大変なんですよ?」
少しだけむくれているアレシアを他所に、ロナフェルの奴は笑いながら任せたぞなんて言っている。あの鍛冶士、大分苦労しているんだろうな。
にしても2時間か。なかなかに時間が掛かるな……何をして暇を潰すかな。
「さて赤毛の、得物が研がれてる間暇なんだろ? 飯でも食いながら少し話さないか? 仕事無しでな」
「食事か……悪くないな。私の連れも一緒で構わんか? 主には下で待ってもらってる奴等だが」
「無論さ。よし、それではあの会議室に運ばせよう。今日あの部屋を使う用は無い事だし」
まぁ、実際に食事をするのはこいつと私、それにリープだけだがね。メリアの夢の感情を食すというのはどういう感覚なのかは分からないが、食事のタイミングが私達と違うというのは少し寂しい気もするな。
とりあえずまずはリープ達の所へ戻るとするか。待たせてしまったから退屈しているだろうしな。
並べられた食事を口に運びつつ、ロナフェルやメリアと話をしているところだ。そう言えば、私とリープが契約とやらをした時の事を話した事は無かったと思ってな。
「竜魔法!? ちょっと待てよ、確かそれ、ロストマジックとやらが羅列されてる文書に載ってたぞ!」
「ふむ? だとすると、やはり竜魔法というのは失われた魔法、という事になるのか」
「少なくとも、ゼーム様と私が一緒に暮らしていた時代には、もう失われた魔法となってた筈ですよ」
「それを使えるって言うそのチビは一体何者なんだ? あ、そのチビが見つかったって言う遺跡の名前とかは分からないのか、赤毛の」
「確か……古の傷跡、とか書いてあった気がするな」
「古の傷跡……あそこか。大地の傷で最近見つかった遺跡が、確かそんな名前だったな」
大地の傷か。確か、大昔に何らかの理由で出来た大きな断崖の事だと記憶してる。城下大陸や未開大陸に数箇所ある筈だ。
なんらかの理由で、か……いや、まさかな。あれは夢だ、そう、単なる夢に過ぎない。過ぎない、筈だ……。
だが、どうしてかあの夢の事は鮮明に覚えている。あの竜の悲しみも、嘆きも、怒りも。それに、私が刺したあの男の顔も。
「ん? どうした?」
「あ、いや、なんでもない。気にしないでくれ」
だからと言ってどうする訳でも無し。気にしても仕方の無い事を気にし続けるというのは私らしくないな。
「っていうか、なんかお宅の右手とチビの額に同じ模様が出てるんだけど? それが契約の証紋って奴なのか?」
「ん? っと、なんだ? どうしてこれが出たんだ?」
「あれ、僕の方のも出てる。僕、魔法なんて使ってないよ?」
何かに反応した? いや、それらしいものは無かったと思うが、どうしたんだ急に?
あ、消えた。これもまだよく分かっていない代物だが、こうして唐突に出られるとそれはそれで困ってしまうものだな。
「消えた、のか? 驚いたな……今のが、お前さんとそのチビを繋いでるって事なんだよな」
「どうやらそうらしい。とは言え、よく分かっていないのが現状だがな」
「実感として変わった事って無いんですか? 確か、竜だけでなく他種族との契約なんてすれば、一般の人よりも何かしらの能力が上がるものだった筈ですけど」
「そう言われてもなぁ? 特に変わった事も無いし、これと言って何が出来るようになったというものも無いしな」
いや、リープの援護を受けられるようになったという点は大きく変わったか。
「そもそもなんで契約なんて運びになったんだ? ドラゴンとの契約なんて、お伽話もいいところだ」
「さてな? 確か……私の魔力とやらとこいつとの相性が良かったから、だったか?」
「そうそう。僕の封印を解く鍵って言うのかな? 封印を解く為の力に変えられる大量の魔力をトゥアンが持ってて、おまけに僕との力の相性が良過ぎて、触れた時にそのまま契約出来ちゃったんだよね。あれ、本当なら契約する者同士が了承して、力の波長をどっちかが合わせないと出来ないんだよね」
「力の相性が良かったって……そんな事有り得るのかなぁ?」
「いやあの? それ、本当にそのチビと喋ってるのか? 出来れば俺にも分かるようにしてくれっと嬉しいんだけど」
むぅ、面倒だな。リープの言葉の翻訳はメリアに任せつつ、メリアが呟いた事について確認するか。
「メリア、さっき言ったのはどういう事なんだ?」
「あ、いえ、魔力には確かに一定の波長があるんですけど、それが同一とか類似してるとかいう事は滅多に無いんです。それこそ、双子とかなら別ですけど……」
「あまり詳しくないが、それぞれの持ってる炎とか水とかの力の比率が違うから、魔力や身体能力にも差が出来るーとかなんとか、前に魔道士が言ってたっけな」
「そうです。だから、類似するのも稀、同一なんて有り得な……い……? あ、あれ?」
「どうかしたか? メリア」
メリアが私とリープを交互にキョロキョロと見ている。何かあったのか?
「そんな、え!?」
「いやだからどうしたんだ? ちょっと落ち着け」
「あぁ、すいません! けど、トゥアンさんとリープ君の波長が全く一緒なんです。幾ら契約してるからってこれは……」
「あー……それは多分、この前トゥアンの魔力が限界ギリギリまで無くなって、そこから僕と契約してる状態で回復したからだと思う。トゥアンの波長と僕の波長が完全に混ざっちゃったんじゃないかな」
ふむ、そんな事が起こる事もあるのか。つまりは、私とリープの繋がりがそれだけ強固になったという感じだろうかな?
ま、それで変化も特に無いし、そう問題は無いだろう。変調を起こしてるなら、その時はその時で対策を考えればいいだろう。
「魔力か、俺もこいつを振り回すしか能が無いから、イマイチそういうのは気にした事無いんだよな」
「実際は、その高い身体能力も魔力から来ている事があるんですよ。無意識に自分を強化する魔法を使ってる、そういう才能がある人っていうのも居るって聞いた事があります」
「そうじゃなくても、魔力が高い故に身体能力が高い可能性もある、という事か?」
「そうです。その場合はもっと伸び代は大きいですよ。なんと言っても、高い身体能力を維持しながら魔法の習得も出来るって事になりますから」
ほほぅ、魔力というのはそれほどに重要なものだったのか。実際に魔法が使える者の話を聞けねば、そこまで重要視するような事は無かっただろうな。
っと? そんな話をしている内に扉が開いたぞ? 確かに時間は経ったが、約束の2時間にはまだなってないんだがな?
あれは……は? なんで奴が此処に居る?
「やれやれ、やっと見つけましたよトゥアン。まさか騎士団の詰所に居るとは思ってもいなかったですよ」
「ロウ、お前こそなんで此処に居る? 確かお前は騎士に……あ」
「そういう事です。上で事情聴取を受けてる間に、騎士団長が不味い相手と接触したと慌てて伝令に来た者が居ましてね、話を聞いた限りあなたとメリアだろうと思った訳です」
上という事は2階に居たのかこいつは。それは会わない訳だ。
で、どうやら騎士連中にとっては、ロナフェルと私達が接触したのは面白くない事のようだな。でなければ不味い相手なんて言う事は無いだろう。
「なーるほど、読めたぜ。多分上の案としては……トゥアンとメリアちゃん、あんた等を俺の部下がやらかしたような状態に持っていくつもりだったんだろうな。この町中の住民に対して」
「どういう事だ?」
「筋書きとしては恐らくこうだ。まず、あんた等が町を離れたタイミングで騎士団の調査の結果って奴を大々的に公にする。もちろん嘘っぱちのな」
「ふむ、それで?」
「そいつには、多分間違い無くこう出てるだろう。『この町を救った運び屋とその仲間達は、実はこの町を襲った者と手を組み、再度町を襲う機会を伺っていた』、なんてな」
嘘にしても現実味の無い出任せだな。それを信じる者はどれだけ居るのやら?
「襲われて心が疲弊した人間ってな、憎しみの捌け口と心の拠り所を欲しがるもんさ。で、捌け口にされるのはあんた達で、拠り所にされるのが……」
「王国騎士団、という訳ですね」
「ほほぅ、見てくれは巫山戯てるようなもんだが、なかなかあんたも切れる奴みたいだな」
「お褒めに預かりまして。探検屋のロウガッファ・アーブと申します。お見知り置きを、ロナフェル・オヴェイン騎士団長殿」
「お前らなぁ、そういう自己紹介だのなんだのは相手を睨みつけながらやるものでもないだろうに……」
なんでまたこいつ等はいきなり相手を敵視してるんだか? いや、どっちかと言うと強者に出会って血が疼いていると言ったところか。阿呆共め。
「で、ですが、幾らそういう話をされたからって、そんなにあっさりと信じてしまうものなのですか?」
「君等がもっと胡散臭い流れ者だったら、な。ただし今回は騎士連中の予想以上にあんた等はこの町に対して真摯に手助けをしちまってたんだ」
「それまたどうして」
「簡単だ、ぶっ倒れるまで町の人間の為に働いた奴等をそんな相手だと思えるか? 疑問を感じた町民達は間違い無くこの詰所やなんかに真実を問い質しに来るだろう。んで、そんな報告がされたってのは俺の耳にも入る」
「あなたが私達に出会ってなければ、あなたも既に報告された結果を覆す材料が無いが故に、結果を肯定しなければならなくなる。と、そういう事ですね」
「が、私達と出会い全ての事情を知り、あまつさえそれが自身の知り合いだったなんて事になれば、それが嘘だとお前がはっきりと言えるようになってしまう。だから出逢うのが不味かった訳か。なるほどなるほど」
にやりと笑ったという事は、正解だったようだな。全く、面白くもない話だ。
「そ、そんなの酷いよ! トゥアンもロウもメリアだって、この町の為にそれこそ命懸けで頑張ったんだよ!?」
「……そうは言っても、先ほどロナフェルさんが言った通り、人は心が傷ついた時、どうにかしてその傷を埋めようとするものです。大切な人を失った人も、少なくない筈ですから」
リープの発言が分かっていない二人は、メリアの言葉を聞いても少々首を傾げてしまっているが、聞けている私としては苦笑いが出てしまうな。
どういう事かを説明すると、二人も同じような顔をした。まぁ、当然だろうな。
「嫌になるだろ? けど、これが騎士団って奴なんだよ。民衆にとって王国と騎士団こそが希望、それ以外に取って変わられてなるものか、ってな」
「人気取りも大変だな。まぁ、私としてはどちらでも構わん話だが」
「え……トゥアン、どういう事?」
リープ含む全員が妙な顔をしてる。そこまでおかしな事を言ったつもりは無いんだがな。
「仮にそこで私達が悪党と罵られようとも、実際の私達はそうではない。自分達が本当に悪党にならない限り、その矛盾がその内真実を炙り出す。ならば下手に否定するよりも、自分らしくあるのが何よりもその嘘とやらの否定になるだろ」
「つまり、周りが何を言おうとも自分は自分だ、という事ですか。ははっ、あなたらしい答えですね」
「あっはっはっは! こりゃ、騎士連中が勝てんのも納得だ、懐の広さが違い過ぎるぜ!」
「でもなんだか安心しちゃいました。やっぱり、トゥアンさんはそうでなきゃですね」
むぅ、何やら皆妙な納得をしている。リープも嬉しそうに私の頭に乗ったし、おかしな事を言ったか?
私はいつも思った事を口にしてるだけなのだが、変なのだろうか? そう言われても変わらんしなぁ。
「まぁ、今回はさっき言った通り俺自身がまるっと事実を知ってるんだから問題無ぇさ。変なもん出そうとしやがったらきっちり止めてやるさ」
「しかしいいのですか? あなたも騎士、それも騎士団長ともなれば騎士団の目論見に沿うのが正しいと思うのですが」
「何が正しいかはてめぇで見聞きしたもんで決める、俺が騎士になる前から決めてる根っこはそれなのさ。誰に何を言われようと、それを変えるつもりは無ぇさ」
「お前、なんでそれで騎士団に居るんだ?」
「俺にも一応事情があんのさ。とにかく、あんた等を悪党にするような真似はさせないから、心配しねぇでくれや」
ふむ、この男も何やら仔細があって今の立場に居るという事か。それまで聞き出そうとするのは筋違いだろうな。
おっと、また扉が開いたぞ。今度は、かなり草臥れた様子だがアレシアのようだ。
「はぁ……トゥアンさん、でしたよね? お待たせしました。磨き上げ、滞り無く仕上がりました」
「助かるよ。……うむ、この輝き。任せたのは正解だったようだな」
「あれ、持ってないなーと思ったら、トゥアンダガー預けてたの?」
「あぁ、最近少々無茶をさせてたからな。アレシアだったな、助かった」
「私もロナフェル団長の剣以外の業物を久々に手入れ出来て楽しかったです。にしても……一体この部屋で何を? なんだかもう、言葉に為難い状況ですけど」
人外二匹を交えながら食事をしつつ、騎士団の腹黒いところを話していた、が正解になるんだろうかな? それ以外に言いようも無いんだがな。
ふむ、ダガーを磨き直してくれた礼もあるし、軽くアレシアにも紹介なり説明をして、もう少し寛がせてもらうとするか。騎士団の詰所で寛ぐなんて、そう出来る事でもないしな。
「はい! まさかの一年越しの復活だよ!」
「本当に、これだけの期間を空けてしまうとは、情けない作者だな」
「当人からは『本当に申し訳ありませんでした!』ってメッセージが来てるよ。一応反省はしてるっぽいね」
「全く、精進が足らんものだ」
「で、ここのコーナーも復活! と言いたいんだけど……それは次のお話からにさせて貰います!」
「またどうして?」
「作者がキャラクターの設定を整理したいからってメタい理由からです!」
「おいおい……」
「ま、まぁそういう事で、次回こそロウの事をご紹介しまーす!」
「前回はそれから一年経ってるんだがな? まぁ、今度はあまり長引かずに次の話を出せるといいんだがな」