第十一話 決着
1
ホームセンターに駆け込んだ陽陰はさまざまな物をかき集める。
花音「これでいいですか?」
陽陰「はい、十分です!さーて、後々えらい目に会いそうだな…」
工作開始。中身が危険なので詳細は割愛。ホームセンターの職員は「マジか」という目で見ているが、気にしている暇はない。
祓魔師と餓者髑髏の戦いが始まってもう1時間。リンとみつはは更に小一時間全力戦闘していて、体力が持つか分からない。この前三日三晩戦闘したとか言っていたが、あれは両者牽制の時間が長かったと捉えれば分からなくもない。
今回は一般人を守りながら、誰かにバレることもないように、しかもあの巨大餓者髑髏を倒し切らなくてはならない。もはや祓魔師達には、一刻の猶予もない。
陽陰「早く…これを完成させるぞ!」
2
20時50分。祓魔師と餓者髑髏の戦闘は泥沼と化していた。
祓魔師「硬すぎんだろ、こいつ…!」
祓魔師「くっそ、攻撃がまるで効いてねぇ!」
リン(みんなの体力も限界…増援も来たけど、攻撃は効いてない。どうする…!?)
地獄の泥沼に、祓魔師たちは精神的にも、体力的にも、限界寸前だったその時、
祓魔師「なんだあれ…おわぁ!?」
爆竹による文字通りの爆音が、ビルの上のスピーカーから鳴り響く。祓魔師は一斉に耳を塞ぐが、餓者髑髏にはやはり効いていない。むしろ、そちらに引き寄せられたくらいだ。
陽陰「まあ、それが狙いなんだが。」
餓者髑髏は空いている左手で、ビルの上に手を伸ばす。
陽陰「比留川、頼む!」
尚人「チェストォォォ(気合い)!!」
陽陰の合図と同時に、餓者髑髏の横の少し高いビルの上から、尚人が袋を投げた。餓者髑髏は全く気づかず、陽陰に手を伸ばし続け、袋は餓者髑髏の左肩に着弾した。
陽陰「着火!!」
次の瞬間、袋が光り、大爆発した。爆風が餓者髑髏の体を焼く中、その場にいたほぼ全員が呆然としていた。
陽陰の作戦は、単純に言えば囮作戦だ。陽陰がスピーカーと爆竹、そしてマイクを使い、大音響で餓者髑髏をおびき寄せる。その隙に、尚人が先程作った(作り方はさすがに言えない)爆弾を用い、餓者髑髏の左肩を爆破する。
爆弾の威力が高すぎたのか、餓者髑髏の左肩は吹き飛ばせたが、陽陰のいる廃ビルの足場も吹き飛ばしてしまった。
餓者髑髏は右手のみつはと黒服を離し、今度は右手で陽陰に手を伸ばす。空中に放り出された陽陰は無防備だ。
リン「なっ!?」
みつは「陽陰くん!!」
だが、次に響いた音は、餓者髑髏の絶叫だった。
見ると、餓者髑髏の右手は、手首まで破裂、崩壊していた。
祓魔師「何!?」
祓魔師「どういうことだ!?」
祓魔師は困惑する。今まで自分たちの全力の攻撃は全く通らなかったのに、陽陰に手を伸ばした右手が、急に崩れ落ちたのだから。
リン「『網』!」
リンの術によって、陽陰は地面に叩きつけられる前に網に不時着した。
陽陰もわけが分からなかった。爆発の影響でも血は出ていないのに、餓者髑髏に触れられた瞬間、餓者髑髏の手が四散し、代わりに自分は鼻血が出て、吐血したのだ。その後、陽陰は出血多量で失神した。
みつは「…みんな、ありがとう。あとは、私がやる!」
そう言うと、雨の水が急に誰にも降り注がなくなった。みつはの後ろに大量の水が集まっていたのだ。その巨大な水の塊が一気に放出された。大出力の激流は餓者髑髏を崩してしまった。
3
後日、餓者髑髏との戦闘は、テロ組織による強襲とされ、崩落、音響攻撃、爆発などの原因もすべて架空のテロ組織に押し付けられた。
黒服たちの存在は伏せられ、彼らは秘密裏に処されるらしい。ちなみに彼らはネット掲示板で集まった集団で、いわゆる「闇バイト」に似た手口の犯行だったため、あの場所に餓者髑髏を設置した真犯人は分からずじまいだった。
みつは「まあ間違ってはいないけどさー、なんかかなしくない?私たちの頑張りはすべて警察のお手柄になるんでしょ?なんかひどーい」
リン「仕方ないでしょ。私たちは表立っていちゃいけないんだから。」
花音「でも、陽陰さんはとにかくやばかったですね、色々と…」
尚人「ああ。結果オーライといえばそうなんだが、なんかな…」
陽陰「何でも良いけど、とりあえず人の病室で二次会するのやめてもらってもいいですか?テレビうるさいし、怪我人への気遣いがまるでない…」
11月2日の夜、陽陰の病室でみつは、リン、花音、尚人が集まって大勝祝いの二次会をしていた。怪我人の陽陰としてはいい迷惑である。
花音「なんですか?人の心がないのは陽陰さんも同じじゃないですか。良いでしょこれくらい。みつはさんなんて陽陰さんの強制捜査で個人情報割れちゃったんですよ?」
みつは「花音ちゃん頼むからそういうこと言わないで!?」
花音の毒舌が見事に炸裂する。陽陰のことをどうのこうのと言う割に、花音も本来、引かれるくらいの毒舌なのだった。
これを期に陽陰は反省した。人の感情を考えないと、大変なことになると理解した。幼少期からコミュ障だった陽陰は、まともにそういうことを考えてこなかったので、いつしか「人の心がないやつ」として定着してしまっていた。
…なお、陽陰の場合、合理主義的な考えをしやすいという方が原因としては強いので、結局あまり変わらないのだった。
4
その頃、東京都警視庁の一室。
???「例の水のカミノコ、どうするんです?アンタとしては、ほっとくってのはないんだろ?」
一人の男が、もう一人に話しかける。話しかけた男はタバコを吸っている。もう一人は、現代的な施設に似合わず、和服を着ている男だ。
???「ああ、そのうち行くさ。それより、陽陰だ。あいつ、今更覚醒したな…」
???「息子さんでしたっけ?陽陰くん。彼も大変だなあ、このおっさんの息子って。」
???「ところで比留川。ハニヤスはどうした?」
比留川「指示通り。つーかあんた、もっかいぐらい息子さんに会ったらどうなんです?天掴さんや。」
天掴「そうだな…。あいつは嫌がるだろうが、その内行ってみるか。さて、仕事に戻るぞ、比留川。」
天掴神示…現代最高の祓魔師にして、陽陰の実の父親。彼の計画が、16年の時を経てついに始まろうとしていた…
次回でとりあえず一区切りとなります
その後一旦別作品にシフトする予定なのでそのつもりで
いやー疲れた(この後次が待っている)
というかカミノコスピンオフ作る暇ねえ




