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名前の知らない勇者探しの話  作者: 針鼠土竜


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11/20

小さな冒険の話

ビシャダルク魔法学園に入学して四ヶ月が経った。


最初こそ慣れない寮生活に戸惑ったが、今ではすっかり日常になっている。朝は鐘の音で起き、授業を受け、夕方には寮に戻る。そんな毎日だ。


その間、ルークスが最も長い時間を共に過ごしていたのは二人だった。


ヒンクス・ラサール。

そしてドルト・ジェパーレル。


「魔術理論って難しすぎるにゃ……」


昼休み、食堂でヒンクスが机に突っ伏す。


「頭が爆発するにゃ」


「昨日寝てたからだろ」


ドルトがパンをかじりながら言った。


「だって式が多すぎるにゃ!魔術ってもっとこう……バーンってやるものじゃないのかにゃ?」


ルークスは少し笑った。


ビシャダルクの授業は想像以上に体系的だった。


この学園では、授業は大きく三つに分かれている。


魔術系科目

戦闘系科目

研究系科目


魔術系では

魔術理論、属性魔術、魔力制御などを学ぶ。


戦闘系では

剣術、槍術、弓術、身体強化。


研究系は

魔法史、魔物学、結界理論など。


そして特徴的なのはもう一つ。


この学園では


授業を自由に選べる。


必修は魔術理論と身体訓練のみ。

それ以外は自分の進みたい分野に合わせて履修する。


そのため同じ一年でも授業はバラバラになる。


「ルークスは何取ってるんだ?」


ドルトが聞いた。


「魔術理論、結界基礎、空間理論、剣術」


ヒンクスが顔を上げる。


「空間理論なんてあるのかにゃ?」


「基礎だけ」


「難しいにゃ?」


「かなり」


ドルトが笑う。


「俺は盾術と体術ばっかりだ」


「魔術は?」


「さっぱり」


ヒンクスは胸を張る。


「私は剣術と体術と二刀術にゃ!」


三人の得意分野ははっきり分かれていた。


ルークスは魔術。

ヒンクスは戦闘。

ドルトは防御。


不思議とバランスがいい。


その時、ヒンクスが急に顔を上げた。


「そういえば」


ある日の放課後。ラウノートの言葉を思い出した。


「あの旧研究施設は一度見ておくといい」


学園の北側、封鎖された区域。かつて魔術の実験が盛んに行われ、事故によって立入禁止となった場所だ。今も結界が不安定で、空間が歪んでいると噂される。


「行ってみようか」

ルークスは静かに言った。


「危険じゃないのか?」

ドルトが眉をひそめる。


「まあ、見つからなければいいにゃ」

ヒンクスは楽しそうに笑った。


夕暮れ時、三人は学園の北門を抜け、旧実験区画へ向かった。レンガ造りの古い建物が並ぶ一帯。扉や窓の多くは塞がれているが、一部が開いていて、内部から微かに青白い光が漏れていた。


ルークスは歩みを止め、目を閉じる。


(……やはり、空間の感覚が少し歪んでいる)


中に入ると、床にひび割れた魔法陣、天井にぶら下がるひび割れた結界装置が視界に入る。風もないのに、どこか不安定な気流が体に触れる。


ヒンクスが声をひそめた。


「にゃ……本当に危険な匂いがするにゃ」


ドルトも警戒して周囲を見回す。だがルークスは興味深そうに、ゆっくりと歩みを進めた。ここなら、空間魔術や結界魔術の本質を体感できるかもしれない。


奥に進むと、ひび割れた結界装置が暴走を続けていた。小さな空間の歪みが複雑に入り組み、視覚も感覚も微妙にずれる。ルークスは試しに手を伸ばす。


「……ここなら、環境変化と法則変化の違いが分かる」


空間を安定させるため、ルークスはゆっくりと魔力を流す。周囲の暴走結界は微妙に収まり、乱れていた空間が少しずつ整っていった。


「すごい……」ヒンクスは目を丸くした。


ドルトも静かに頷く。


ルークスは心の中で理解する。空間と結界、

ここでの違いは、理論だけでなく感覚に依存するものだと。



ふと、遠くで何かが動いた。

光の中に、背の高い人物が立っていた。


「……誰だ?」


その人物――アーカイール・グレイが、この旧研究施設区画で初めて姿を現すことになる。


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