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オスの覚悟

 寝ているオスの身体を揺する


本来なら自然に起きるのを待ちたいが


今すぐ、あの言葉をくれたのがオスなのか


その確認をしたくて


どうしても我慢できない


でも、目覚めたオスの様子が少しおかしい


「…ドーラ…

 …寝ちゃったのか…ごめん、本当に…」


「…何を…謝っているのじゃ…?」


起こしたとはいえ、あまりにも眠そうだった


それに謝る意味も気になる


とりあえず、オスの話を聞いてみようと思った




 オスは眠らない覚悟で来たらしい


オスが眠らなければ一緒に寝た事にならず、


それなら魔女との約束を守れると思ったそうだ


でも明け方限界がきて寝てしまったと


そう、申し訳なさそうに言った


「…わしの為に、さっきまで起きててくれたのじゃ…?」


「…そうだね…」


それでも結局寝てしまったオスは


少しバツが悪そうな表情だ


そんな顔しなくていいのに


慰めてくれてありがとう


迷惑を掛けてごめんなさい


色んな感情がごっちゃになって


何も言葉にできなくて、ただギュッと抱き締めた


「…このまま眠るがよいのじゃ…」


「…一緒に寝てもいいの?」


「…よいのじゃ…

 …でもその前に、一つだけ質問に答えて欲しいのじゃ…」


「…なに…?」


聞きたい事は沢山あった


昨日の会話を覚えているか?


いや、ずっと此処に居ると言ったのは本心か、かな?


そもそもどうして来てくれた?


何を聞こうか迷ってるうちに


残念ながらオスは眠ってしまった




 でも、ほんの少しだけホッとした


あの言葉は自分を慰める為の


その場しのぎの嘘だったかもしれないし


泣いてる自分を否定できなくて


とりあえず言った言葉かもしれない


だから、答えを聞くのが少し怖い気もした




 仮にそうだったとしても


慰めるつもりで来てくれた事には変わりない


欲しい言葉が嘘だとしても


優しいオスである事は変わりない


「…ずっと、一緒に居たいのじゃ…」


寝てるオスに向かって


沢山の我儘を言った


一緒に木の実が採りたい


魚も捕まえたい


夜の湖に出かけたいし


丘にも星を見に行きたい


パンも作りたいし


もっともっと色んなことを手伝ってほしい


「…そうやってずっと此処で…

 …主と二人で暮らしていきたいのじゃ…」


全部言い終わると涙が零れていた


一方的だったが


聞いてもらって少し気が晴れた


それにこうして抱き着いていると安心できる


今だけは絶対にオスは逃げられないのだから


…。


 かなり長い時間寝た気がする


でも寝る前と変わらず


ドーラが抱き締めてくれていたし


僕が起きたのがわかったのか、もぞもぞと動き出した


「…ドーラ…ずっと待っててくれたの…?」


「わしも寝たり起きたりしてたのじゃ

 もうすぐ夜になりそうじゃからお腹空いたじゃろ」


「…え?もう夜?」


長い時間寝たとは思ったが


そこまで寝てしまったのかと驚いた




 ベッドに並んで座り、窓から森を見下ろした


此処からだと夜鳥の巣穴らしき場所が良く見える


「あそこに巣があるのじゃ」


「ほんとだ、面白いね」


一つの巣穴から想像より多くの夜鳥が出てきた


昨日の騒音は


多分あの巣穴の奴だとドーラが少し怒っていた




 夜鳥が飛び立ち、今日も夜が訪れた


僕達はどちらも動こうとせずに


静かになった森を眺めている


ふいに、ドーラが手を重ねてきた


「どうして、ベッドに来てくれたんじゃ?」


「ドーラが泣いてたから」


「…声、頑張って我慢してたつもりじゃったけど…」


確かに鳴き声は聞こえていなかった


でも鼻を啜る音や乱れた息遣いまでは消せない


そう話すと照れたように笑った


「失敗したのじゃ」


「…どうして泣いてたの?」


「…。」


ドーラは何も答えない


だから、僕から聞いてみる事にした


「…僕は、ずっと此処に居ていい?」


そう告げると驚いたように此方を向いた


何かを言いたそうに一度は口を開きかけたけど


視線を逸らし、また何も言ってくれなかった


…。


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