寒すぎる夜
此処はとても寒い場所なんだなって、最初に思った。
目を開けると星空が目に映る。
その星空は綺麗で、僕を照らしてくれるけど、
残念ながら、温もりまでは与えてくれないようだった。
あまりの寒さに身体が震えてきた。
身体を丸めようとしたけど、ほとんど身体が動かない。
だから仕方なく、震えながら星を眺め続けた。
次第に感覚が無くなり、寒さを感じなくなった。
その代償なのか、強い眠気に襲われる。
きっとこの誘惑に身を任せれば、僕は二度と目を覚まさないんじゃないかって、
なんとなくそう思った。
ぎりぎりまで抗ったけど、動けないからどうすることもできない。
僕は半ば諦めて、最後に大きく息を吸った。
息を吐くと同時に、目を閉じる。
薄れていく意識の中、"あの人"の温もりを感じてもう一度眠りたいと思った。
一人は、こんなにも寂しいから。
意識が途切れる一歩手前で、胸が焼けるように熱くなる。
痛みを感じるほどの熱が、僕の心臓を再び稼働させる。
僕はもう一度、ちゃんと呼吸することを許された。
「…すぅー…はぁーっ…」
「…まだ息はあるようじゃ…。
…まったく、とんだ拾い物じゃ…」
聞き覚えの無い声だった。
多分"あの人"じゃない。
それでも、ちゃんと見て確認しようと思ったのに、
今は目を開ける事もできなかった。
誰かわからないその人は、僕を抱えてゆっくりと歩き出した。
あの人じゃない気がするけど、抱かれてると温かい。
その熱を感じていると、再び眠気に襲われた。
でも、今度の眠気は優しくて、安心して身を任せる事ができた。
目が覚めるとベッドの上だった。
薄暗い部屋のベッドの上で、布団が肩まで掛けられている。
窓から心地の良い風が入り込んできた。
冷たさを纏った昨日の風と違って、穏やかで優しい風。
その風をもっと感じたくて、苦労しながら身体を起こした。
しばらく、何も考えずに外の景色をボーっと眺める。
揺れる木々を見て、擦れる葉の音をじっと聞いた。
そうして時間が経つと、昨夜と同じくらい冷たい風が吹いた。
「…くしゅんっ…」
ベッドの近くで、誰かのくしゃみが聞こえた。
そういえば僕を運んでくれた人が居るはずだ。
そう思って、慌てて部屋を見渡してみたけど人影は見えない。
空耳だったのかと疑い始めた頃、もう一度くしゃみが聞こえた。
今度は音の出所がわかった。
多分、ベッド横の、床から聞こえた。
僕を助けてくれた人は床で寝ていたのか、ゆっくりと起き上がる。
そして、眠そうに目を何度か擦った後、
彼女の瞳が、僕を捉えた。
…。




