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動かない身体

 此処は寒いなと、最初にそれだけが頭に浮かんだ


目を開けると綺麗な夜空が映り、


どうやら、僕は仰向けで地面に寝転がっているようだ




 夜空には大きな星が浮かび、僕を照らしてはくれている


明るいけど温かさは欠片も無くて、徐々に身体が震えてきた


身体をさすりたかったが、


そこで自由に動かないことがわかった


今動かせるのは瞼と口が少しだけ


今はただ、震えながら星を眺める事しかできなかった



 

 気が付けば身体の震えが収まって、寒さも感じない


その代わりに今度は強烈な眠気に襲われて


今にも瞼が閉じそうだ


必死に耐えたのはなんとなく死を感じたからだ


きっと眠ればそうなるんだろう


わかっているのに抗う事が徐々に難しくなっていく


諦めた僕はゆっくりと目を閉じて、最後に大きく息を吸う




 死を意識し始めるとある人物が頭に思い浮かぶ


顔も声も思い出せない、ぼんやりとした感覚だが


でもさっきまで一緒に居たはずだ


それを思い出せたのに、


探しに行けないこの身体が恨めしかった




 ふいに、胸が焼けるように熱くなった


その熱のおかげで止まりかけていた心臓が


ゆっくりと動き出し、全身が少しだけ温かくなる


そして再び、大きく息を吸い込むことができた


「…まだ息はあるようじゃ…

 …まったく、とんだ拾い物じゃ…」


聞き覚えのない声だ


多分、さっき思い出した人とは違うんだろう


一応顔も見たかったが、今はもう瞼を開く力はなかった




 僕を抱き抱えながら歩き始めた


ゆっくりと揺られていると


先ほどと違う、優しい眠気が僕を包む


とても心地が良かったし、


身体に触れている部分がとても温かい


そうして僕は、今度は安心して眠りについた





 目が覚めると薄暗い部屋に居た


窓から風が入り込み、優しく僕を撫でる


その風をもっと浴びたくて半身を起こし、


そういえば身体が自由に動く事に遅れて気が付いた



 窓から外を覗いてみると


沢山の大きな木々が目に映りこんだ


この部屋は高い位置にあるのか景色がよくて


しばらくの間、何も考えずにじっと眺めていた




 そんな時、一際冷たい風が吹いた


僕が寝ているベッドの近くでくしゃみが聞こえ、


慌てて部屋を見渡してみたけど人影はなかった


不思議に思っているとベッドの脇からもう一度くしゃみが聞こえた


どうやら床で眠っていたらしく、僕から見えなかったようだ


そこで、昨日誰かが運んでくれたんだと思い出した


つまり、恩人だ


その恩人はゆっくりと起き上がり、


眠そうに目を擦った後、僕を見た


…。

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