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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第72話:世界補正の再起動兆候

 朝。


 いつも通りの時間に、

 レオンは目を覚ました。


 体調は悪くない。

 空腹も、

 いつも通りだ。


 ――なのに。


(……うるさいな)


 音ではない。

 気配でもない。


 もっと、

 内側の感覚。


 視界の奥が、

 わずかにざらついている。


 意識を向けた瞬間、

 それは現れた。


 UI。


 薄く、

 半透明で、

 主張しないはずのそれが――

 消えきらずに残っている。


 表示は、

 されていない。


 数値も、

 項目もない。


 だが、

 “層”がある。


 何も書かれていない紙を、

 無理やり目の前に

 置かれているような感覚。


(……沈黙、

 じゃないな)


 以前のUIは、

 完全に消えていた。


 意識しなければ、

 存在しなかった。


 今は違う。


 見ていなくても、

 そこにある。


 干渉はしない。

 だが、

 撤退もしていない。


 レオンは、

 顔を洗い、

 外に出る。


 村は、

 いつも通りだ。


 リィナは畑の様子を見ている。

 セラは薪を運んでいる。

 エルナは人の動きを

 遠目に確認している。


 誰も、

 異変に気づいていない。


 それが、

 一番おかしかった。


 UIだけが、

 戻りかけている。


 世界が、

 再びこちらに

 指を伸ばし始めている。


 歩く。


 一歩、

 一歩。


 そのたびに、

 視界の端が

 わずかに揺れる。


 数値は出ない。

 警告音もない。


 だが、

 “評価待ち”の気配がある。


(……再起動、

 って感じだな)


 強制力は、

 まだ弱い。


 学園時代のように、

 言動が歪められることもない。


 だが、

 準備段階だと

 直感で分かる。


 世界は、

 自分を

 見失っていなかった。


 昼。


 食事の席。


 何気ない会話の中で、

 ほんの一瞬。


 リィナを見ると、

 視界の奥が

 かすかに反応した。


 表示は、

 されない。


 だが、

 “何かを計測しようとした”

 気配だけが残る。


(……触るなよ)


 そう思っても、

 UIは答えない。


 感情も、

 意思もない。


 ただ、

 再び動き出そうとしている。


 夕方。


 風が強くなる。


 木々が揺れ、

 影が伸びる。


 レオンは、

 立ち止まる。


 逃げる気は、

 ない。


 抵抗する気も、

 今はない。


 ただ、

 確認する。


 世界は、

 再び

 物語を動かそうとしている。


 それが、

 この静寂を

 壊す方向だとしても。


(……それでも)


 レオンは、

 深く息を吸う。


 ここでの生活は、

 偶然じゃない。


 与えられた役割でもない。


 自分が選び、

 続けてきた結果だ。


 夜。


 灯りを落とす。


 UIは、

 完全には消えない。


 だが、

 前に出てくることもない。


 再起動の兆候。


 それだけだ。


 レオンは、

 目を閉じる。


(来るなら、

 来い)


 だが、

 以前のようにはならない。


 世界が動き出しても、

 自分まで

 動かされるつもりはなかった。


 静寂は、

 まだここにある。


 世界補正は、

 目を覚ましかけている。


 その二つが、

 同時に存在できるかどうか――


 それを、

 これから

 確かめるだけだった。

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