表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/201

第41話:元奴隷リィナ発見

 夕暮れが近づいていた。


 森の奥から、かすかな物音が聞こえる。

 枝を踏み、必死に逃げる足音。


 レオンは、手を止めた。


 セラも同時に気づき、視線をそちらへ向ける。

 剣には触れない。ただ、警戒する。


 次の瞬間――

 茂みを突き破るように、少女が転がり出てきた。


 細い体。

 ぼろ切れのような服。

 足首には、まだ外しきれていない鉄の輪。


 少女は、こちらを見るなり、息を呑んだ。


 逃げようとして、

 足がもつれて倒れる。


 追ってくる気配がある。

 複数。男の声。


「……奴隷だな」


 セラが低く言った。


 レオンは、答えなかった。


(関わると、面倒だ)


 頭では、はっきり分かっている。


 密売人。

 追跡。

 報復。

 厄介事の連鎖。


 ここは、静かに生きるための場所だ。

 自分から騒ぎを呼び込む理由はない。


 少女は、必死に声を絞り出す。


「……た、助けて……」


 視線が、縋るようにこちらに向けられる。


 その瞬間、

 レオンの胸に、嫌な感覚が走った。


(……また、か)


 誰かを助ける役割。

 正しい人間でいろ、という無言の圧。


 前世でも、学園でも、

 それに応え続けて、潰れた。


 だから――

 今回は、選べる。


 助けない選択肢も、ある。


 レオンは、一歩も動かない。


 セラが、横目で見る。


「どうする?」


 問いに、期待は混じっていない。


 レオンは、少女を見る。

 恐怖に歪んだ顔。

 数字のUIが、かすかに揺れる。


 だが――

 そこに「物語の強制」は、感じなかった。


 だからこそ、迷う。


(……役割じゃないなら)


 ゆっくりと、息を吐く。


「……最低限だけだ」


 レオンは、そう言った。


 少女を守るために戦うわけでも、

 未来を背負うわけでもない。


 ただ――

 今ここで、見殺しにしない。


 それだけ。


 セラは、短く頷いた。


「分かった」


 剣に、手がかかる。


 森の奥から、男たちの声が近づく。


 レオンは、少女の前に立つわけでもない。

 庇うような仕草もしない。


 ただ、

 この場所から追い払う準備をする。


(助けるか、助けないか)


 その二択ではない。


 関わりすぎず、

 見捨てもしない。


 その中間を選ぶのは、

 初めてだった。


 少女――リィナは、

 まだ知らない。


 この出会いが、

 「救済」でも「契約」でもないことを。


 ただ――

 逃げ場の一つが、

 偶然ここにあっただけだということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ