第五十七話「目撃(SIDE:ミカエラ)」
森で朽ちた小屋を見つけたオレは、そこで信じ難い光景を目の当たりにした。
吸血鬼同士の戦いだ。
そして、その場にいたのは――
「ねえ、ミカエラ。さっきのって……町で会った女の人だよね」
「ああ、そうだろうな」
ライオネルに肯定を返す。
オレとライオネルは、吸血鬼同士の戦いが決着すると同時に、その場を離れていた。
今いるのは、森の入口辺りだ。
「ねえミカエラ、引き返しちゃってよかったの? たぶん、あの小屋にシスターと子供がいたと思うんだけど。微かだけど、匂いがしたから」
「……もっと早く言ってくれよ」
「ずっと言ってたけど、ミカエラが無視したんじゃないか」
「本当か」
「うん、ミカエラってばボンヤリ歩いちゃってさ」
まったく気がつかなかった。
「ミカエラ、あの女の人が気になってるんでしょ」
「それもある」
どうして、あいつがこんな場所にいるのか。
そもそもの話、なぜ吸血鬼が二体もいやがる……どうなってんだ、この森は。
「あの人……ルビィだっけ、吸血鬼と一緒にいる様子だったよね」
「そうみたいだな」
「捕まってるのかな」
オレは答えない。
正直、あいつが捕まっているという風には見えなかったからだ。
あの黒髪の吸血鬼を助けていたみたいだった。
それに――
「あいつ、魔法を使っていたよな」
「そうそう、使ってたよ。しかもミカエラと同じ光属性だった」
昔、この世界は魔法に溢れていた。
多くの人間が魔力を持っていて、日常的に魔法を使っていたという。
魔法を教える学校なんて場所も存在していたらしい。
オレの先祖とされる聖女プリムラも、魔法学校に通っていたと言い伝えにある。
そんな大昔と打って変わって、この世界の魔法は衰退してしまった。
一般的に魔法というものは、失われた力とされている。
ほとんどの人間が魔法を使えるだけの魔力を持っていないからだ。
だが稀に、強い魔力を持って生まれる人間がいる。
オレみたいなやつが、だ。
他にも魔法が使える人物を何人かは知ってはいる。
だから、あのルビィって女が魔法を使えても、驚きはするが不思議じゃない。
しかし、オレと同じ光属性っていう点は別だ。
光の魔力は、魔法が栄えていた大昔ですら珍しいとされる属性だった。
あの女、いったい何者なんだ。
「ねえミカエラ、早く小屋に戻ったほうがいいんじゃない?」
「ああ、わかってる」
オレとライオネルは、再び朽ちた小屋を目指す。




