第十七話B「シャルと鳥(SIDE:シャルティア)」
私は、兄さんの部屋へ向かうルベーリア・オズボーンの背中を見送る。
あの女が大人しく血を捧げてくれるといいが。
「ヒポポ」
私の隣にいるヒポグリフが、ルベーリアが去った方を見つめながら鳴いた。
このヒポグリフ、随分とあの女に懐いている様子だ。
なんて……
「なんて羨ましい!」
サロンに私の声が響く。
いけない。思わず興奮してしまった。
「ヒポ?」
ヒポグリフが、不思議そうな視線を私に向けてくる。
ああ……やはり愛らしい。
平均的なヒポグリフに比べて少し、いや、かなりふくよかな所がまた堪らない。
柔らかそうな羽毛に触れてみたいが……きっと叶わぬ願いだろう。
この私、シャルティア・インバーテッドは可愛い生き物が好きだ。
だが、どういう理由か昔から可愛い生き物には避けられてしまう。
さっきのように、触れようとしても払いのけられたり、逃げられるのが常だった。
それでも……触れたい。
私は、ヒポグリフへと慎重に手を伸ばしてみる。
ばしん。
ヒポグリフの翼が、私の手を叩く。
「……ヒポヒポ」
警戒するような鳴き声。
それでも諦めきれない私は、再び手を伸ばす。
ばしん。
私の手が再度、ヒポグリフの翼によって跳ね除けられた。
「ヒーポー……」
威嚇するような目つきを向けられてしまう。
まだだ。まだ諦めるのは早い。
私は三度、ヒポグリフに手を伸ばし……
ばしん。
軽く手を動かした段階で、ヒポグリフは私の手を翼で叩いた。なんという反応速度。
「ヒポポヒポポヒッポポ!」
感心する私の額に、ヒポグリフはその嘴を突き立てる。
痛い。だが……この子は逃げないでいてくれた。
もっと時間を掛ければ、いつかはきっと……




