第十三話「話し合い」
謎の森から屋敷に戻ってきたわたしたちは、二階のサロンで腰を落ち着けた。
今度は屋敷に入れなくなってたりしたらどうしようかと少し不安だったけど、杞憂だったみたいだ。
「さて、現状について話し合っていきたいと思うのだが……」
わたしの正面に座るクロウが、口を開く。が、わたしの背後に視線を向けて言葉を止めた。
「……ルビィ」
「なんでしょう?」
「どうして、そいつまでここにいる?」
「ヒポポ」
そいつ、とは鳥さんのことだ。
なぜか一緒についてきてしまった。
今さら言及するなら、屋敷に入る前に止めればいいのにと思わなくもない。
「わたしに訊かれても……ねえ鳥さん、なんでついてきちゃったの?」
「いやあ……ぼく、まえからこのやしきにはいってみたかったんだ」
「……そうなの」
好奇心旺盛な鳥さんなのかな。
わたしはクロウに鳥さんの言葉を伝える。
「だ、そうです」
「……今更だがルビィ、ヒポグリフと会話できるのか?」
「え? あ、はい」
「生まれつきか?」
「いいえ、魔法です。トッブウド・イタリベーシャの魔法を使いました」
なぜかクロウとシャルティアさんが顔を見合わせる。なんだろう。
「いいか、ルビィ」
クロウが、わたしに向き直る。
「な、なんでしょう?」
「トッブウド・イタリベーシャは、あくまで『動物』と会話できるようになる魔法だ」
「え? はい。わかってますけど……」
だから鳥さんと話せるようになったんだし。
「ヒポグリフは動物じゃない」
「……はい?」
わたしは盛大に首を傾げる。
「ヒポグリフは大別すれば、魔物に属する存在だ。だから、トッブウド・イタリベーシャで会話できるようにはならないはずなんだよ」
「じゃあ、どうして会話できてるんですか?」
「それは俺が知りたい」
いや、わたしも知りたいんですけど。
「とはいえ、仮説なら立てられるが。本来、人間が魔物と意思疎通を図ることはない。だから、そういった魔法も存在しない。だが……例外はある」
「例外……ですか?」
「ああ。光属性の魔力を持つ者……つまり聖女だ」
光属性の魔力……
「聖女は魔物とも心を通わせたという話を耳にしたことがある」
「……わたしも、今は光属性の魔力を持ってますよね。だから鳥さんと会話できるようになったんでしょうか?」
「おそらくだが」
うーん、なるほど。まあ、便利だからいいよね。
「……本題に入るとしよう」
と、クロウが仕切り直す。
「まず、今の状況についてだ。はたして聖女の封印は解けたのか否か。解けたのだとしたら、屋敷を囲うこの森はなんなのか……」
「あの、さっき可能性が三つとか話してましたけど……」
「そうだな……シャル、まずはお前の考えを聞かせてくれ」
クロウが、シャルティアさんに話を振る。
「ええ、まず一つ目の可能性ですが」
シャルティアさんが人さし指を立てる。
「残念ながら、聖女の封印は解けていない。我々はまだ、外界と隔絶された場所にいるのでは……という可能性です」
「俺としては、この考えは排除していいと思うがな」
「ええ、同感です」
クロウが意見して、シャルティアさんが同意する。
「あのー……ちょっといいですか」
わたしは、遠慮気味に口を挟む。
クロウとシャルティアさんの視線が、同時にわたしへ向いた。
二人とも、なにも言わない。無言で続きを促している感じ。
「ええと……単純な疑問なんですけど」
「ああ、言ってみろ」
「封印が解けたのだとして……いつ、どうやって解けたんですか?」
黒い空間に進んだだけで、特になにもしていない気がする。
「おそらくですが……地下倉庫にあった札を消し、ルベーリアさんが屋敷の外に出たことによって封印が解けたのでしょう」
シャルティアさんがそう解説してくれる。
「わたしがですか?」
「ええ、光の魔力を持つルベーリアさんが、封印になんらかの影響を与えたのではないでしょうか」
うーん、なるほど。正直、よくわからないけど。
「屋敷とルビィが強い光を放っただろう。あれがまさに、封印が解除された瞬間だったんじゃないか?」
言われてみると、それっぽい光景だった。
「ところでルビィ、気がついているか?」
「え、なんですか?」
クロウが意味ありげな目線で、わたしを見つめてくる。




