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モモの反抗期

「……この辺りかな?」


「ギャオオオオォォォォ!!」


 ……ついさっきも似たようなパターンだった気がするな、これ。考えても仕方ないので、声の方向目指して進んでいくと、モモがここを管轄している国境警備兵の皆さんに猫可愛がりされていた。


「モモさん凄いです! あんな凶悪な魔物を一撃で!」


「しかも身体強化も使えないこの状況で! 凄い凄い!」


「モモさん、お菓子ありますよ、食べますか?」


「食べるのですー!!」


 ウチの子を餌付けしないで頂きたい!

 

「モモ、どうやらがんばってるようだな」


 声をかけながら近寄ると、モモを取り囲んでいた皆が一斉にこちらへ視線を向けて来る。

 

「勇者様! モモさん凄いんですよ、ビックリしました!」


 それからはモモを称える兵士達の褒め言葉を連発され、肝心のモモと物理的に離されてしまう。その間に、お菓子をもらえなかったばかりか俺とも離されたモモはみるみる機嫌を悪くしていった。

 

「むー!! マサヤ、こっちを見るのです!」


「ちょ、ちょっとまってください、皆さん。モモが呼んでるので……」


「あらあら、ごめんなさいね!」


「すみません、すみません通してください!」


 僕は半ば強引に人垣を割ってモモの元へと辿り着くと、彼女はぷくーと頬を膨らませて腕組みなどして顔をぷいっと横に向けていた。

 

「モモ、どこでそんな仕草を覚えたんだ……」


「そんな事マサヤにはかんけーないのです!」


「なっ……!?」


 ま、まさか……モモが反抗期に入ってしまった!?」

 

「も、モモ……」


 よたよたと、頼りない足取りでモモの前へ立つ。

 

「なんですか! モモは忙しいのです!」


「そんな悲しい事言わないでおくれよ、モモ……」


 取り付く島もないモモを、反射的に抱きしめた。モモは僕の行動にビックリしたのか、怒っているのも忘れてされるがままになっている。

 

「マサヤ……?」


「僕はモモの事をあのお方に託されたんだ、言ってみれば、モモは僕の家族みたいなものなんだよ」


「マサヤ……」


 モモの顔をしっかりと正面から見つめて語りかけると、モモは、若干気落ちしたように俯く。

 

「家族なんだから、モモの事は僕に関係あるんだよ、おおありなんだよ。だから、そんな悲しいこと言わないで?」


「う、うぅー……。だってマサヤが……」


 駄々っ子のように、ばつが悪そうにするモモに、僕は謝罪した。


「ごめん、モモのことをないがしろにするつもりはなかったんだ」


「……モモも、ごめんなさいなのです」


 僕の気持ちが伝わったのか、モモも素直に謝ってくれた。良かった。もう一度だけぎゅっと抱きしめてから、立ち上がる。

 

「モモはここでがんばってくれてたんだよね、偉いよ、モモ」


 そして褒めながら頭を撫でる。

 

「え、えへへ……そうなのです! モモはがんばったのです!」


 くすぐったそうにしながらも、まんざらでもない様子のモモ。そしてそんな様子を固唾をのんで見守っている集団が一つ。

 

「うぅー、家族愛って良いものなのねー」


「あたし感動しちゃいましたー……ぐすっ……」


「わたしも子供が生まれたらこんな光景見れるのかな……」


 一部やたら遠い目をしている人がいるが、気にしないようにして僕は警備兵の皆さんに頭を下げた。

 

「モモの事、見守って頂いてありがとうございます」


 すると彼女たちは、慌てたようにわたわたと否定する。

 

「いえいえ、私達こそモモさんに頼りっぱなしなくらいで!」


「そうそう、何しろ今は身体強化の魔法も使えないので、決定打に欠けていたんです」


「それをモモさんが一撃必殺してくれるのだから、大助かりでしたよ!」


 モモの事を褒めそやされて、まるで我が子を褒められているような錯覚を覚えて嬉しくなる。……まあ子供を持つにはまだ早い年だと自覚はあるけども。

 

「それでは、僕はまた別の部隊へと移動しますので、皆さん、引き続きよろしくお願いします!」


 もう一度頭を下げると、お任せ下さい! と頼もしい返事。と、くいくいと袖を引く感触が伝わってくる。

 

「マサヤ、もう行っちゃうのです?」


 少し寂しそうな顔。出来るならここに残っていたいが、そうも行かない。これでも僕は勇者の端くれなのだから。

 

「うん、僕はもう行くけど、ここのことはモモに任せたいんだ。出来る?」


 すると、モモは寂しそうな顔から一転、子供とは思えないような覚悟のある顔をして、しっかりと頷いた。

 

「それが……マサヤの役に立つのなら、モモはがんばるのです!」


「ははっ、流石はあのお方の子供、僕たちの家族だ!」


 感極まった僕は思わずモモを抱き上げてくるくると回りだした。自分が恥ずかしいことをしていると気付いたのは、警備兵の皆さんが生暖かい目で僕たちを見つめていたからだ。僕はゆっくりとモモを地面に下ろすと、こほんと恥ずかしさを誤魔化す咳払いを一つすると。

 

「じゃ、後はお願いします!」


 ダッシュで逃げた。

 

「行ってらっしゃいなのですー!!」


 モモの見送りの言葉を背に受けつつ、その更に背後から逃げた、逃げたわね、逃げましたねと言われているような気がするが恐らく気の所為だ。

次回は18時更新です

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