第44話
森で阻まれていた二人の視界が開けた。
「上手く誘い込めたな」
同時に、チェスリンの肥大した拳がルミナリスを襲った。一瞬で距離を詰められたルミナリスは防御が間に合わず、腹に直接攻撃を受けて吹っ飛ぶ。プリシラは心配してルミナリスを見るが背後の気配に気づきすぐにチェスリンに向き直って距離を取る。
「やってくれるじゃねえか」
起き上がって咳をするとともに大きな血の塊が口から出ていく。ルミナリスはよろよろと立ち上がり、構え直す。
「ダイブキイテイルミタイダナ……」
以前の細長く、かつたくましかった身体は全身が肥大し、顔は膨らんで目や鼻が潰れている。肩は突き出て原型をとどめておらず、魔獣のように四つん這いになって歩く。二人はじりじりと動いてチェスリンを挟むように位置取る。
「オットガルからも聞いていたけど、小人族じゃなかったの?」
プリシラが杖を左手にも持って両手で構える。
「オレハアイツトハチガウ。ウエヘイクタメニカラダヲケンキュウシタ」
自分の右肩に突き出た魔法臓器を撫でる。
「まさかそんな理由で無限の書を……」
信じられないものを見るようにぞっとする。それを見たチェスリンは何かに気づいたように呟く。
「……アア、ソンナコトモアッタナ。アノコドモ……」
「なんのために殺したの?」
チェスリンの言葉を力強く遮る。潰れていても分かる醜悪な笑みが、不快な顔に変わって睨みつける。
「キケンナモノダトイッテ、ワタサナカッタカラダ」
「ふうん……」
杖に目を落とす。ルミナリスとチェスリンは黙って見つめる。
「……たった、それだけでっ‼︎」
不意に両手の杖からどうじに魔法を放った。竜巻が走り、雷がいくつも落ちて近づく。
チェスリンは獣のように吠えると、真っ直ぐにプリシラに迫った。驚いたプリシラは続けて竜巻を放つ。それらは全て命中するが、身体を傷つけられずに消えていった。ルミナリスは目を細めると、チェスリンに迫りガラ空きの背中を狙う。
しかし、そこまで待ってたかのように動きを止めて後ろを振り向いた。口の前にはまばゆい光が集まっている。ルミナリスは撃たれる前にと、光の元へ手を出してそのままチェスリンの顔に当てた。光が顔に当たって消失すると、わずかに顔全体がただれていた。ルミナリスは再び距離を取る。
「フタリデソノテイドカ……」
二人を同時に見られるように崖の上に移動したチェスリンが見下ろす。ルミナリスはチェスリンを見て笑い出した。
「わざわざ高いところから見下ろしたり体をいじって大きく見せたり、拗らせてるんだな」
「……ヨクモ、ヨクモイッタナァァァ!」
肥大した身体が更に膨れ上がり、二人の三倍はあるだろうというところで止まる。
「ミタメヲカエヨウト、ドリョクスルコトノナニガワルイ!!」
地面を蹴って削り、岩を落とした。




