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彼女は僕に、小説家になろうと言った。  作者: 宮野遥
第1章 あなたのファンになりました
6/6

第6話 あなたのファンになりました

作中作『あなたのファンになりました』http://ncode.syosetu.com/n4788ef/


「ハァ、白石君」


「何かな、彩風さん?」


 翌日の放課後。文芸部の部室で、僕は彩風さんに溜息を吐かれていた。


 何かな、なんて白々しいことを言ったけど、原因はちゃんと分かっている。


「あなたの投稿した小説、読ませてもらったわ」


「ありがとう。どうだったかな?」


「どうだったも何も、予想外だったに決まってるでしょう。いくらなんでも『詩』を書いてくるなんて……」


「あはは、やっぱりビックリした?」


 そう。僕は短編で詩を書いたのだ。


「まさか、文章力の判定がほとんどできないものを書いてくるとは思わなかったわ。どういう意図であんなジャンルにしたのかしら?」


「別に大した理由があるわけじゃないよ? 僕が書きたいことを一番うまく表せるのが詩だっただけなんだ」


「書きたいこと、ね……」


 彩風さんはそこで一度言葉を止め、僕を冷たい視線で睨んだ。


「それで、あの文は私への愛の告白ということでいいのかしら?」


「えっ?」


「……え?」


「…………」


「…………」


「…………あっ」


 た、確かに、改めて詩の内容を考えてみると告白にしか見えない!?


「い、いいいいい、いや、べべべべ別にそういうつもりじゃなななないんだけど」


「そうという風にしか見えなかったけれど?」


「そ、それはたまたまそうなっちゃっただけで、あれは友達でありたいっていうことを表してて……」


 ま、マズイ。自分で弁解しててなんだけど、まったく説得力がない。


 彩風さんも胡乱げな目を抜けてくる。


「まあ、言いたいことはわかったわ」


「あ、よかったぁ」


「あなたが告白じゃないと思うのならそうなのでしょう。あなたの中ではね」


「ぐはっ……」


 それ全然わかってないやつ……。むしろ全力で僕の言葉を告白だと断定しにいってるんだけど。


「冗談よ。読んだときはともかく、今は誤解だったのだと理解しているわ」


「あ、ありがとう」


 よかった。本当によかった。


「だけれど、告白じゃないというのなら、どういうつもりで書いたのかしら、アレ」


「う、それは……」


 どうにか弁解するために、作品ページを開いた。


 僕が書いた詩の名前は『あなたのファンになりました』。


 一人ぼっちだった『あなた』という人と『僕』とがある時出会い、仲良くなっていって、いつまでも側にいたいという内容。


 要約すると。


 孤高な彩風さんと知り合って、だんだん惹かれていった僕が愛の告白を詩にしたもの……って、違う! そうじゃない!


「『ヤバい、言い訳の仕方が見つからない!』というような顔をしているけれど、大丈夫かしら?」


「大丈夫じゃないよ! え、これ本当にどうしよう! まさか、実は僕は無意識のうちに彩風さんに告白していたということなの!?」


「ごめんなさい」


「一瞬でバッサリと振られたァ!? 彩風さんが流石すぎる……。ちなみに何故僕は振られたんでしょうか?」


「生理的に無理」


「一番どうしようもないやつ!」


 って待て待て。僕はさっきから何を口走ってるんだ。


「落ち着きなさい、白石君。あなたの中に私への恋心がある可能性は否定しないけれど、さすがに今回のは違うのでしょう?」


「う、うん。そうだね」


 そう、違うはずだ。僕にはこんな告白の方法を選ぶ勇気なんかない!


 ……それはそれで、だから童貞なんだろうなとは思うけど。


「純粋に、友達として、作家として尊敬できるなって思ったんだよ」


「小説家として尊敬されるほどの成績は残せてないわよ?」


「ううん。彩風さん、結果が出ていない時でもどんなに人気のない作品でも、必ず毎日七千文字更新してるでしょ? それは、本当に辛くてすごいことだと思うんだ」


「何故あなたが私の更新事情を知っているのかしら。ストーカー?」


「そんなわけないじゃん! 過去作の更新日時とかを見ただけだよ! 彩風さん絶対わかってて言ってるよね」


 と僕が抗議すると、急に彩風さんが真剣な空気をまとった。


「白石君。あなたは、小説を書いていて楽しかったかしら?」


「え? う、うん」


「そう。それならよかったわ。今回の執筆は、あなたの文を把握したかったのと同時に、あなたに書くことの楽しさを知って欲しかったのよ」


 ……彩風さん、そんなことを考えて。


「私は小説家の仲間がいなかった。それこそファンの方やネット上での繋がりがある作家さんはいたけれど、リアルには誰一人としていなかったのよ。だから、私はあなたに仲間になって欲しいと思ったの。あなたは私のことを笑わなかったから」


 …………。


 笑わない。何故か彩風さんはその言葉に過剰なほど執着していた気がするけれど、もしかして誰かに笑われたことがあったのかな。


 だから、他人と関わることをやめてしまった。


 …………。


「彩風さん。1つ聞きたいことがあるんだけど」


「何かしら? スリーサイズは教えないわよ」


 彩風さんって絶対そんなキャラじゃなかったよね!?


 って、今はそう言うふざけたモードじゃないんだ。


「文芸部に入るには、どうしたらいいの?」


「白石君、それって……」


 珍しく驚愕の色を浮かべた彩風さんに向かって、今までの人生の中で最高の笑顔を浮かべた。


「彩風さんの仲間になりたいんだ」


 何故なら僕は、あなたのファンなのだから。

この物語は一旦ここで終わりにしようと思います。プロットは全然消化できていないので本当の意味での完結ではないのですが、執筆意欲の限界が来ました。また気が向いたら続きを書くかもしれません。

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