金髪美少女のせいで悪夢に襲われて変なモノに目覚めそうで怖い。
前回のあらすじ、
アン・ウィルバインは同性愛者で俺の体が目当てだった……。
これは夢だ……。
なんとなく、というよりも確信的にそう思っている。
俺はいつものように寝室で寝ていたのだが、気付いたら屋外で棒立ちしていた。しかも、周りは戦車で市街地戦でもやったのか?と思えるような廃墟ばかりな上に曇天で紫色の瘴気が充満していた。
こんな世界は現代の世界でも異世界でも存在しないだろう。
つか紫色の瘴気ってなんだよ?
毒ガスにしては分かりやす過ぎないか?
ロープレのやりすぎだな。
さてさて、なぜ俺はこんなところに居るのだろうか?
夢なんだからとっとと覚醒してくれないか、と願いながら自分の顔面を殴打してみるが痛くもなんともない。どうやら夢の世界からは脱出できないらしい。
夢オチイベントの割には頑張るな。
ロープレっぽい世界なのだから新しい街にやってきた時に宝箱を見つけるみたいな感覚でこの瘴気まみれの世界を探索してみる。
まさにゲーム脳!
探索していると何やら雑魚敵が現れた。
けれど雑魚敵とは思えないような恐ろしさがそこには存在した。
右腕には鶏の首を切り落とす時に使うような鉈を持ち、左腕には肉を捌くための出刃包丁を持っている。全身は黒く塗りつぶされ髪の毛はドス黒い赤で目は金色に輝いている。
トゥルルゥ~、と言ったBGMは夢だからと言って聞こえて来ない、むしろ全身を恐怖が襲う。
故に全力で逃亡する。
そりゃ今説明したような魔物が目の前に居たら回れ右して全力で逃げるだろ?
熊には死んだ振りは効き目がないというのは一般的になっているが、正しい対処法というのをご存知だろうか?なんでも目を見て後ろに下がっていくのがベストらしい。これは目を見ていることで熊が警戒するためで、背中を見せてダッシュすると熊は高速で追いかけるから止めた方が良いと言う。
因みに熊はあの見た目だが人間よりもかなり早いそうなので背中を見せた場合は狩られるので注意が必要。
闘うという選択肢もあるらしいが、熊と闘って勝てるわけがないのでそれは選択肢に入らないと思うぞ?散弾銃でも使うのだろうか?
熊のことはともかく雑魚敵とは思えないような雑魚敵に背中を向けて逃げたが、逃げ切れなかった。逃げ切れないんだな、てっきりここは俺の夢だから逃げ切れるものだと思っていた。ゲーム脳の夢なんだからそこら辺は合わせろよ。
「クキャーー!!」
雑魚敵は鉈と出刃包丁を振りかざして飛び掛る。
夢とはいえ全身から変な汗が飛び出してきたような気になってしまう。
しかし、雑魚敵は空中で何者かに撃たれて消滅した。
「こっちだ!こっちに来い!」
雑魚敵を屠った何者が物陰から俺を呼ぶ。
無意識にそっちに向かい話しかける。
「な、なんなんだ?あれは」
俺を呼んでいた人物は夢の中の登場人物らしく、人間ではなかった。
その姿はロボットアニメにでも出てきそうなゴツゴツな装甲を纏った200cm程度の八頭身人型ロボットであった。
「あれは悪夢だ」
そのまんまだな、おい!
「そして俺は悪夢消滅隊の1人だ」
な、ナイトメアバスターズ?
なんか微妙な漫画に出てくる微妙な設定みたいだな。
「これは昨日、我々の宿主である君が酷い目にあったこと記憶を脳が消去しようとしている作業なんだ」
「ど、どういうこと?」
「簡単に言うとトラウマを少しでも軽くするためにあの悪夢と闘っているわけ。さっきのように悪夢共を消滅させることが俺の、俺達の仕事だ。血液中のバイ菌を消毒する白血球みたいなものだと認識してくれ。悪夢を滅ぼして君の寝起きを良くする事が目的なのだが、宿主の君がここに来るとは珍しい」
物陰から顔を出して機関銃っぽいのを乱射する。
どうやらさっきのような雑魚敵がまだまだ沢山居るらしい。
「ところで悪夢って?」
「昨日のアレを覚えてないのか?」
昨日……昨日……あ、アレか……犯されかけたアレか……。
「なるほど、だいたい理解した。けど俺はどうすれば良い?君らが悪夢を殲滅するのを指を咥えて見てればいいのか?」
「いや、あっちに瘴気が存在しない光に満ちた空間があるだろ?あそこに辿り着いて欲しい」
「あそこに着いたら覚醒できるのか?」
「いや、瑞夢を見ることが出来る。サキュバスが待っているぞ?」
サキュバスって夢魔とか淫魔とか呼ばれて男の夢の中にやってきて好みの女性に変身して精液を搾り取って行くっていうあの羨ましいイベントを引き起こす悪魔の?
「そうだ、悪夢から君を守り、君自身を癒してくれる女神みたいな方だがな」
当然ながら悪魔や神と言った概念は人間が作り出したマヤカシである。
昔の人は理解できない現象を悪魔や妖怪の仕業にすることで納得するように心がけていたという説が存在している。
サキュバスと言うのは親が分からない子供がルネサンス期に増えたからそんな悪魔が作られたそうなないような。
となると悪魔なんてのは人間に都合が良いモノにだって簡単になりえる。
もっとも人間にとって都合が良いモノの場合は人間は悪魔ではなく神と定義するけど。
「なるほど、サキュバスか……エッチなお姉さんは大好きです!」
「ふっ、さすがは我々の宿主様だ。あなたとはゆっくりたっぷり話したかった……さて、準備は良いか?」
「OK!」
エッチなお姉さんに犯されたいがゆえに俺は光の向こうへ走り、悪夢消滅隊が俺を援護してくれる。
しかし、光の空間はまだまだ先にある。
「走れ!もっと全力で走れ!!」
「サーペント!こっちの敵はあらかた片付けたぞ!」
「よくやった、イェーガー!」
イェーガーと呼ばれた隊員は俺の隣のサーペント(?)の近くに行く。
「行け!行って未来を掴み取れ!」
「グッドラック」
ありがとう……本当にありがとう……それしか言う言葉が見つからない。
ついに光のすぐ傍までやって来た。
だが、そこで右足の足首を何者かに掴まれる。
走ることが出来ない。
何が起きたかと思ったら、地面から雑魚敵が出現してきた。
「やっと……捕まえた♪」
黒いシルエットが徐々に明度が明るくなり姿が判明できるようになった。
その姿は予想通り、ウィルバイン嬢であった。
「はぁ……はぁ……はぁ……この瞬間を待っていました」
いやぁあああ!!犯されるぅぅぅうう!!
しかし、現とは違い夢の中ではダナーのような助っ人は居ない。
あの悪夢消滅隊の姿も見当たらない。
つまりデッドエンドである。
ウィルバイン嬢は俺を四つん這いの形で押し倒してくる。なぜか力が入らない、ここが夢だからか?
「大丈夫、痛いのは最初だけですから……♥」
そんな甘い言葉を耳元で囁いてズボンをずり下げてくる。そして尻を撫でられる。
だから、やめ……やめろ……るな……入れるな……。
「俺の肛門に指を入れるなぁああ!!」
肩で息をする。過呼吸気味になりながら俺は目を覚ました。
最低の悪夢だ……。
なんて朝なんだよ……。
俺は悪夢から脱出したのだが、なぜか俺の寝室にパティが入っていた。
どうやらタイミング悪く俺を起こしに来たようである。
「…………あ、そのスミマセン。お邪魔してしまったようですね」
絶句している。
そりゃ部屋に入ったらいきなりあんなことを叫んでいる人間が居たら引きますよね。
弁明の余地がないな。
はぁ、最悪の朝である……。




