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49/60

金髪美少女のおかげで、俺の人生がプチ修羅場を迎える。修羅場イベントってリアルじゃ最悪だな……。

 前回のあらすじ、

 ハーピィの卵が孵化したので家族が増えた。

 家族が増えるよ!やったね、忍ちゃん!

 忍のバカに子育てなんてできるわけがない、三日坊主で飽きてしまうだろうと思っていたのだが、意外なことにちゃんと子育て出来ている。これが母性本能って奴なのだろうか?

 ニートだから子育てくらいしてもらいたいな。

 世の中の父母は仕事や家事をやりながら子育てをしているのだから。


「はぁ~い、ミドリちゃん♪ あぁ~ん」

「アァーン」

 スプーンでミドリにシリアルを食べさせる。

 そしてミドリはシリアルを頬張る。

 くちゃくちゃっくっちゃとマナー悪く音が聞こえてくる。


 これは注意すべきか?それともあと少し大きくなってからか?と俺まで子煩悩になっている。


(妹ができたみたいで楽しい♪たった数日で家族がたくさん増えた気がする)

 どうやらミシェルは俺達を家族扱いしてくれているらしい。

 非常に嬉しいな。

 俺は君と本当の意味で家族になりたい(プロポーズ)


 チリンチリンッ。

 家の外から呼び鈴が鳴らされた。

 よく中世ヨーロッパが舞台のドラマやアニメで出てくるあの洒落たヤツな?

「はいは~い」

 パティが来客(?)を呼びに向かう。

 どうやら異世界だろうとドアの向こうの人に聞こえないのに返事をするのは同じらしい。海外だとどうなのだろうか?返事しないのかな?するのかな?

 などとくだらないことを考えていると先日の金髪美少女がリビングに入ってきた。


「朝早くから失礼します、ミコト様。先日のお礼をさせていただこうと思いはせ参じました」

「……おぉ……おはよう」

 朝から非日常なイベントが起きてしまい戸惑う。

 いや『非日常イベントなんて起こりすぎて新鮮味ないだろ?』って突っ込みはナシな?こういう物語の主人公的な非日常イベントは全然起こりませんからね。

 忍はお礼なんて概念がないのは当然の事ながら、バレンタインの義理チョコすらもらった事はない。パティは仕事なので謝礼などは存在しないし、ミシェルとはそういうフラグが立たないし、ダナーとはそういうイベントすら起こらないだろうし(こいつの場合は俺がお礼をしなければいけないだろう)


「ミコト、誰それ?」

 忍が突然の訪問者に対して質問する。

「先日、いろいろあって助けたんだよ。えっと……名前はアン……」

「アン・ウィルバインです。以後お見知りおきを、ミコト様の居候さん」

「あれ?俺、名乗ったっけ?というかなんでこの家が分かったんです?ウィルバイン嬢」

「ミコト様がロイヤルガーターにお乗りになっておられたのでそこから。ミコト様達のことは伯母上から少々」

「伯母上?」

「まぁ、伯母上のことは今は関係ありませんのでお忘れください。ミコト様、こちらがお礼の品になります」

 伯母の話への脱線を回避され、見事な金色のフィギュア(?)が手渡された。

 金属を使っているのか知らないがかなり重い。

 超合金ってロボットフィギュアとかあるだろ?

 あれよりは重い感じだな。


 オマケに所々に宝石が使われている。

 ルビーとサファイアとエメラルドとダイヤと……後は分からん、だって俺は男の子だから。

 宝石とか知らないから、誕生石すら知らないから

「おぉー……(ダナーこれは純金か?)」

「解析完了。爆発物の危険性は皆無です。(残念ながら合金です。しかしながらかなりの量の金を使用しています。宝石の方も一流のものに見えます)」

 さっすが、貴族様。

 お礼がもはや勲章レベルに豪華ではないのだろうか?

 しかし、このフィギュアって何なのだろうか?

 少女って感じだが、もちろんアニメキャラっぽくはなく西洋人形な感じな上に金色なので誰をモチーフに作っているのか全く分からない。

 これで『それはわたくしをモチーフに作らせました』と決め顔で言われたらどうしようか?

 褒めるべきか率直な感想を言うべきか、それとも俺の世界のフィギュア技術の話をして話題を逸らすか……。

 最後のはなんかヤダなー。


「ママー?あれは?」

「あれはお客さんだよ」

 飯を食べていたミドリが忍に質問した。

 やはり、食事中のマナーから躾けるべきか?

「あら、こんにちは。わたくしは……」

「……おねぇさん、くちゃい」

 ミドリが女性に対して言ってはいけないことを言ってしまった。

 今後はそういうデリカシーをつける様に教育しよう、忍共々な。


「く……くさい?わたくしが?このアン・ウィルバインが?」

「ウィルバイン嬢?大丈夫、臭くなんか……」

「あのお姉ちゃん、くちゃいねぇ~♪」

 フォローしようとした俺を無視して忍がなぜかウィルバイン嬢にケンカを売りながらミドリをあやす。

 何がしたいんだ?こいつ。

「あ、あの……そこの居候さん?わたくしに言ったのかしら?」

「しゃべらないでくれますか?貴族様。この子が嫌な顔をするので」

 先日は女王とダナーがガチの死合をして、本日はウィルバイン嬢と忍が女の意地をかけて闘うのか……。

 俺はそんなにキャットファイトは好きじゃないですよ?


「ミコト様に養われている分際の阿呆でこのわたくしを汚物扱いしているというの?」

「オフコース!」

「お、おふ?」

「あ、ごめんなさい。1ヶ国語しかしゃべる必要が無いこの世界の貴族様はボクらの世界の多様な言語文化は理解できませんよね?阿呆にも理解できるくらいなのに」

 なんでこんなに仲が悪いの?

 今さっき出会ったばっかだよね?

 実は既に出会ってましたってオチでもあるの?


「あ、あなたみたいな阿呆がそんな数種類の言語を扱えるわけが……」

「扱えないと思った?残念!扱えるのでした!!」

「ふっ、わたくしが分からないからってそんな出鱈目を……」

「ミコトくん、私の英語の成績を教えてやりたまえ」

 いや、知らねえよ。

 お前の母親じゃないんだからお前の成績までは記憶してない。

「成績はともかく、こいつは言語だけなら相当頭良いぞ?」

 言語だけならな。ここ、最重要項目。


「う、うそですよね?伯母上からこの阿呆のことは良く聞いてるのでどれだけの阿呆かは理解していますわ……」

 伯母上?伯母って親の姉や妹の伯母か?

 さっきから誰のことを言ってるんだ?

 俺たちのことを知ってそうでこのくらいの姪が居そうな女となると……女王か?でもウィルバイン嬢とは全く似ていないからたぶん違うな。伯母と姪って遺伝子的には5割くらいは同じだから似てないとおかしいよな?


「はっ!この異世界人を阿呆と罵ろうと思っても無駄の極地!!異世界人は君等よりも相当頭が良いのだぞ?阿呆扱いしているボクでも連立二次方程式くらいは楽勝だよ!」

 連立二次方程式なんて楽勝だろ?

 それ解けない奴って相当なバカだって。

「な!?連立二次方程式が楽勝……?こんな阿呆が?」

 どうやらウィルバイン嬢にとっては連立二次方程式は楽ではないらしい。

 貴族だから勉強くらいしていると思ったが、どうやら数学は得意ではないようだ。

 もしかしたらこの世界はそんなに勉学の普及に関しては疎かなのかも?


「おやや?まさかとは思いますが、連立二次方程式が解けないわけじゃないですよね?」

「……そ、そんなわけありませんわ……。お茶の子さいさいですわ」

「へぇ~、では2X+3Y=32, 3X+6Y=60の時のXとYの値は?」

 簡単な問いだな。

 てっきりもっと難しいモノを持ってくるかと思ってた。

 えっと……Xは4でYは8かな?

 8+24=32だし、12+48=60だし検算完了。


「えぇ……あぁ~……うぅ……ぐすっ……わ、わかりま……」

「わかりま?」

 クズ、外道、ろくでなしと表現できるようなカスみたいな顔になって忍が挑発している。

 こんな機会がめったにならないからって大人気ない。

 こういう奴が中学生の頃に『勉強なんて将来の役に立つわけ無いよ!!だってボクのパパがそう言ってたもん!!』ってな感じのことを言うんだぜ?

 今のが誰かさんの受け売りってことは言うまでもないだろう。


「覚えてろー!」

 昭和のアニメの雑魚キャラのような捨て台詞を吐いて帰って行った。

 『覚えてろ』ということはまたリベンジに来るのだろうか?

 騒がしい日常になりそうだ。

 なんか面倒な展開になってきたなぁ……というかお礼に着たんじゃなかったのか?

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