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調査隊のせいで面倒な遺跡調査はもう少し続くそうである。

 前回までのあらすじ、

 幼なじみの黒魔術に付き合ったら女にさせられた挙げ句、異世界に飛ばされてしまう。その後女王様からの依頼で遺跡の調査に来たのだが、謎のモンスターの咆哮に怯えたり、(自称)人造人間のダナーが仲間になったり、古代人について調べたりと時間的には1日程度なのだが妙に濃密な日だった気がする。


「ダナー入って来い」

「かしこまりました」

 俺達4人の会議である程度方向性がまとまった所でダナーを部屋に入れる。


「ダナー、お前はあの遺跡の中にある発電システムを複製することは出来るか?」

「あれほど大規模な発電システムは無理です」

「その言い方だと小規模なら出来るのか?」

「無論です。しかし、金の延べ棒の生成はかなり厳しくなります」

 それは残念だ。帰る前に延べ棒1本くらい生成してから帰りたいな。


「エネルギーが必要ならいっそのこと発電所でも女王様に言って作ったら?この国の技術レベルも上がって金も手に入るし便利も手に入る。良い事尽くめじゃない?貴族様だってのどから手が出るほど欲しいだろうから主導権はこっちが持てるじゃん」

 忍にしては良い考えだが、所詮は忍だ。

「それは止めた方が良いと思われます」

「そりゃなんで?」

 ダナーが俺よりも先に忍に忠告する。


「お前は産業革命時の労働者の暴動を知らないのか?」

「そんなこと有ったの?」

 あったんだよ、このタコ。

「技術者が創り出した機械等は当時の労働者の労働力を補うくらいのものだった。機械の労働力と労働者の労働力が等しきなれば賃金を払わなくて良い機械を採用するだろ?となれば職を失った元労働者はどうなると思う?」

「さっき言った暴動?」

「そうだ、職を失って金を手に入れる方法が無くなった低所得者が取る行動といえばそうなる。日本だって昔は一揆なんてよくあってたし」

 現代日本も人件費削減のために機械を大量投入して人民から職を奪っているように思える。

 事実、リーマンショック以来ニートや無職、フリーターなんてのが大量に居るし、最近はブラック企業のサービス残業が問題視されてる。

 酷いよな、世界の技術レベルが高くなっても世界は不幸や絶望で溢れてる。

 不幸と絶望の使い方が間違っている気がするが気にしない。


「そっか、じゃあどうするの?」

「誰も損をしない程度の便利グッズを売りつければ良い。ほどほどに便利だけど、超便利ってわけじゃない便利グッズを」

「何その分かりにくい謎々。で、それの答えって何?」

「なんだろうかね?北国であった方が良さそうな物……魔法瓶?」

「ここでそのチョイスか~」

 いや、便利だろ?あった方が。


「お嬢様、その魔法瓶とは?」

 パティが魔法瓶のことについて質問する。

「ボクらの世界に存在した保温、保冷性能に優れた瓶のことだよ」

「それは便利そうですね」

 事実、それに味噌汁とかを入れてる奴は居るから便利だろう。

 水筒としての魔法瓶の性能は語る必要など無かろう。

 1日中持ち歩いていても中の液体が温くなることはほぼ無いが、完全な熱遮断能力は無いからいつかは温くなるはずである。


「マスター、その程度の箱や筒如きなら簡単に量産することはできます。さらに言えば完全な熱遮断能力だろうとお望みであらばお造りいたしましょう」

 まるで『紙ヒコーキや折鶴を作るくらいなら悪魔やカブト虫を作ってやろう』くらいのことをさらっとダナーが言いやがった。

 26世紀末の科学は世界一チィィィ!!


 しかし、完全な熱遮断すら可能なのか……。

 本当に凄いな、何でもアリな奴だ。

 永久機関すら生成出来たのかもしれない。

 永久機関はエネルギー保存の法則的に出来ないそうだが、それを言ったら完全な熱遮断すら出来なさそうだ。

「とりあえず、量産することが出来るなら量産してくれ。ここの調査隊に安値で売りつけるから」

「アイマム、しかし、素材がありません」

「外に大量の雪があったぞ?H2Oだって立派な物質……」

「素材の確認、錬金を開始します」

 俺の言葉を無視してダナーがスイートルームの窓から雪原に飛び降りる。

 本当にスペック高いな……。

 ここってかなり高いんだけど……。


 感心していると雪が見る見る内に形を変えて黒い塊になっていく。

 どうやらアレが錬金らしい。


 数分後、50個ほど黒塊を抱えてこのスイートルームまで跳躍して戻ってくる。

 ここってかなり高いんだけど……。



 翌日。

「暑い……暑いな」

 俺達は昨日あれだけのハイキングをやったにもかかわらず今日もまた遺跡内でハイキングを強いられている。かれこれ2,3時間は歩いている気がする。

「でも、ボクらの水筒は支給されたのじゃないからまだマシでしょ?調査隊の皆さんのはもうきっと温いよ?気持ち悪いほど温いよ?」

 忍が挑発気味に発言する。

 その忍の妙な発言に何人かが軽く反応した。

「そうだな、俺達のはまだ全然冷たいからな。……ゴクゴクゴク、プハァー!!最高の1杯だ!!」

 この水筒は昨夜ダナーが作り、俺達よりも先回りして遺跡内のハイテク3Dプリンター(仮称)でダナーが造ってくれたものである。それに駐屯地でアイスティーを入れただけの俺達の世界では馴染みの何処にでもある普通の魔法瓶なだけだ。


 俺のダメ押しの発言に一番近くの調査員が話しかけてくる。

「ミコト様、その水筒の中身はまだ冷えているのですか?」

「キンキンに冷えてるよ?飲みたい?」

「身の程を弁えた上で発言させていただきます。飲ませてもらえませんか?」

 この世界は熱中症と言う概念が無いのかも知れない。

 近年は『根性だ!』と言うアホなオッサンは老害とバカにされ、勉強しろと言われるから俺は我慢しろ等と鬼畜な事は言わない。

 俺は背負っていたリュックから水筒を取り出して調査員さんに見せる。

「2000ダラーで売ろう。少々高いだろうがこの水筒は特別製だからこれからも半永久的に入れていた液体は冷たいままさ」

「……後払いでよろしいでしょうか?手持ちが」

 俺は無言で手渡してはにかむ。

「ありがとうございます!」

 歩きながら敬礼して水筒のアイスティーを飲み幸せそうな顔をしていた。


 そして次から次に調査隊さんが俺から水筒を買い取っていく。

 誰もなぜ俺がこんなに大量に水筒を持っていたのか疑問に思わなかったらしいが、俺にとってはそっちの方がありがたい。


 次第に隊列が乱れ、乱れたことに気づいた隊長が鬼の形相でこちらに向かってきた。

 あちゃー、調子に乗りすぎた?

「ミコト様、これはどういうことですか?」

「……正直な話をしよう。我々異世界人の技術を使用した水筒の量産に成功したから調査隊の皆さんに格安で提供しようかと思ったのですが?」

「しかし、そのような勝手をされては我々調査隊が女王陛下に怒られるのですが……」

 そうだな、確かに女王が煩そうだ。

 だからこそ、あのババァの居ないところでやらなければならない。

 俺はそんな弱気な隊長の方に手を回して耳にささやく。

「黙っていればバレっこねぇよ、黙っていれば」

「……そうですね、黙っていれば。では私にも頂けますか?2本ほど」

「もちろん」

 計画通り!!

 売れる!これは売れる!

 この調子で売っていこう!


 遺跡の調査という名目のハイキングは約10日も行われた。

 この間に俺と忍は暑い暑い遺跡内部を延々と散歩していた。

 体育会系ではない俺達にはこのハイキングは辛い……。

 筋肉痛でもお構いなしでハイキングは行われる……辛い。



 水筒は駐屯地の兵士にも売りつけて合計43本も売れた。

(隊長に至っては2本も買ってくれたし)

 1つ2000ダラーで売ったから8万6000ダラーである。


 金銭感覚が麻痺ってるから端金に思えるが平均収入が2,3日でだいたい5000ダラーであるから、1ヶ月分ほどの収入になるのだ。

 調査隊の水筒以外にも色々売ればさらに儲かるだろう。

 けっけっけ、やはり俺の計画に狂いは無かった。


 遺跡の調査が終わり俺達は北国から遂に帰ることが出来た。調査はあまり良い結果が手に入らなかった。どうやらこの調査隊は忍よりも無能らしい。

 というよりも忍ってかなり有能なのではないだろうか?

 クリストフォード家の108つもある隠し通路から宝物庫への通路を偶然とはいえ簡単に見つけ出し、おまけにこの遺跡では古代人の秘密基地を簡単に見つけ出したし。

 こいつはバカじゃなければ相当な地位が保障されてもおかしくは無いだろう。

 いや、バカだからこんなことができるのか?

 バカには不思議な力が宿るようである。黒魔術とかそういう災い的なの。


 バカが力を手に入れちゃダメだな。

 もしも忍がダナーの主君マスターになっていたらこうなっていたかもしれない。

『行けっ!ダナー、火炎放射で火の海だ!!』

『がってんだ』

 ボバァー!!王城は炎上した(言葉通りの意味で)

 


 俺達が不毛なハイキングをしている中、ダナーは秘密基地の発電システムを起動させて金塊の錬金を頑張ってくれている。

 延べ棒の大きさまで大きい物を作るのが10日かかるとしてもその十分の一の大きさの物は作れるってことだ。ハイキングしていた10日とそれ以前に溜まっていたエネルギーのおかげで金塊が3つ。6つで1億なので5000万。この金塊を捌ければ5000万も手に入る。

 ようやく1億ダラーを手に入れられたというわけである。

 長かった気がする……。

 実際はまだここの来て一月半程度しか経っていないのだが。


 もちろん、ダナーは発電システムが稼動しているのを指を咥えて見ていた訳ではない。その間に俺達が読んで良いらしいアクセスレベル2の書物をホテルに移動させてくれた。

 このアクセスレベルのレベル1は壁の文字、つまり異世界語の意訳で壁の文字を意訳してくれる。意訳であるため壁に書いてあるレベル2へのパスワードのアナグラムを読解することは出来ない。

 そしてレベル2は技術の使用権、つまり錬金術や発電システムを使う権利を手に入れられたということである。俺達が持っているのはこの使用権までである。

 これ以上の俺達が持っていないレベル3からレベル5は技術の製法、つまりこの秘密基地に使われているような超素材や疑似太陽、空間歪曲装置などの原理や仕組みが当てはまるらしいが、俺達にはその原理が分かっても応用するだけの頭脳なんてない。つまりレベル3~5までを手に入れたとしても猫に小判であるわけだ。

 最後のレベル6はアクセス禁止の封印指定の歴史事項だそうである。このレベル6の内容についてはダナーは発言権がないだけではなく、知る権利すらないそうで彼女も知らないらしい。『白の巫女様』もここに当てはまるわけだが、知る方法は存在しないっぽい。

 これが分かった時、忍は泣き喚いていたな、駄々っ子のように。


 なお、この10日の間、パティとミシェルはホテルでずっと待機している。

 無論、彼女達がここに来る理由なんて無い、無能と罵るわけではない。むしろここには俺だけで来るつもりだったので役に立たないことは当然なのである。


 というわけで、俺達の北方遺跡攻略は無事終わったのである。

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