俺は俺のせいで、また女王戦のようだけど……自業自得で笑えない……。
前回のあらすじ、
ダナーが水筒を量産してくれたおかげで一儲けできた。
遺跡攻略は無事終わったのであるが、屋敷に戻ってきて数日後のこと。
「で、貴様は何を企てているのだ?」
俺は毎度のように簀巻きにされて王城に拉致られ女王様に詰問されていた。
さすがに3回目になると耐性がついてくる。
人間、慣れってのが一番怖いな。
俺の適応力ってスゲー。
俺の順応性って一流だ。
ちなみに経緯をはしょったわけではない、特に変わらない日常を過ごしていると拉致られたのだ。
『特に変わらない』な。ここ超重要。
「まず、拉致した理由を聞かせてもらいたいのですが?」
「こちらの質問が先だ。何を企てている?」
このババァの質問は毎度理解に苦しむ。
俺は毎日毎日堅実に生きているだけだ。
なぜそんなことを言われなければならないのだろうか?
「まだ惚けるか?最近、貴様が異世界の秘密道具を作って売っていると巷で話題になっていることはこの私の耳に届くほど大きな話になっているぞ」
な、何のことだかさっぱりだなぁ~。
だって俺は『特に変わらない』日常を送っていたのだから。
調子に乗って誤魔化そうとしていると、毎度のように剣が飛んできた。
こればかりは慣れない。命の危険を感じる。
「謎の冷却箱を売ったり」
ケース1、真空クーラーボックス。
『さぁさ、見てください!種も仕掛けもないこの箱を。こちらの箱の中に冷たい氷を入れてハンドルを回すとあら不思議!火で数分炙っても氷は全く解けはしないのです!こちらの商品は中に生肉や生魚などの生物を新鮮なまま乾燥させること無く保存することができるのです!こちらのお値段はたったの1980ダラーなり!』
「謎の名刀を売ったり」
ケース2、超耐久セラミック包丁。
『こちらの包丁を見てください。軽くて強固、そして金属を使用していないゆえ刃が錆びる事もありません。さらに例えこの包丁と包丁で鍔迫り合いのように刃と刃で傷つけ合ったとしても微塵も傷がつかないのです。金属を使用していないために軽い、錆びない、刃こぼれしないという良い事ずくめ!軽すぎて使いにくいという貴方もご安心を、重いものも用意しております。こちらが3本で2480ダラーとなります』
「謎の農作具を売ったり」
ケース3、人力発電多目的耕うん機。
『今回ご紹介させて頂くのはこちらの乗り物でございます。なんと!この乗り物のペダルを漕ぐ事で鍬などよりも効率よく、楽に畑を耕すことが出来るのです!おまけに耕すだけではありません!畑に存在する雑草を掘り起こすこともできるのです。しかもオフにすることで爪をしまい、畑から簡単に出ることも可能、それ以外にも純粋な乗り物としても使える一石二鳥の代物なのです!こちらは少々お高いですが7680ダラーでご提供させていただきますが、それだけの価値はあります!』
「改めて問おう。貴様は何を企んでいる?」
もちろん、金儲けである!
などとバカ正直に答える俺ではない。
だから誤魔化している。
『特に変わらない』日常を送っていると誤魔化しているのだ。
しかし、何時までも誤魔化し続けられそうではない。
覚悟を決めなければ殺されそうだ。
このババァにはエロマンガ朗読以来酷い目にしかあっていないのだが、変態イベントは起こっていないから安全な気がするような錯覚に陥ってしまいがちだが、こいつは非道イベントが起こりまくってるから全く安心できない。
「どうかしたか?言えないような理由があるなら言いたくなるような目に合わせてやろうか?」
この発言だけ聞くと『ここが良いのか?口で言ってみろ。気持ち良いのか?もっとやって欲しいのか?どうなんだ?』的な何やら拉致監禁からの陵辱イベントのようにも見えるが、こいつが言ってるのはそんなイヤらしいイベントではない、ガチの拷問イベントだろうさ。
電気椅子とか鋼鉄処女とかそんなのが待ってると思って間違いない。
考えてるゆとりは今の一言で消えた。覚悟を決めろ。
「ま、まぁ、当方も更生してこの世界で真面目に生きていこうかと思いまして事業を行おうかなと思いまして……は、働いてみたわけですよ?」
「貴様はすでに仕事をしているはずだ。なぜそこまで金を手に入れようとする?」
「そ、そりゃ当たり前じゃないですか?お金は皆欲しいじゃないですか?ここの食堂でまた満漢全席を食べたいですから……」
「嘘だな」
な!?
「貴様はそのようなことのために必死になるような男ではない。もしも食欲を満たすためだけなら、まずここの食堂がどのような食材をどこから仕入れているかを調べるはずだ」
ごもっともであります……。
そして食材を安く仕入れるように努力し、社員割り的なのを利用して安く済ませようと企むだろうな、食欲を満たすだけなら。
「白状しろ、さもなくば」
威圧的なあの肉食の爬虫類のような目が俺にガンを飛ばしてくる。
どうやらこれ以上の茶番は無理そうである。
俺は溜息を吐いて覚悟を決める。
「純粋に金が欲しかっただけですよ。それ以上の理由はありません」
もちろん、このクソババァに(以下略。
「なぜ、そこまで頑張ろうと思ったのだ?」
「満漢全席を食べたいというのも決して嘘ではありません。先日用意してもらった料理並の料理は我々の世界では年に1回食べれるかどうかです」
日本人でありながらローストターキーを1羽まるまる用意するなんてそうそう居ないだろうし、用意したとしても他のマリネだのスープだの赤ワインの煮込みだのも用意できる人間なんて相当なお金持ちか大家族じゃないか。
「それに金があればここの食堂以外の店にだって行けますし、この国の各地方の特産品を求めて旅だってできるじゃ……」
「それも嘘じゃないか?」
うぐっ!なんて勘の鋭い奴だ。
こいつは嘘か本当か見破る能力でもあるのか?
「貴様の主張には何か裏を感じる。なぜだろうか、そんな気がしてならない。食欲の化身ならばもう少しそれなりの行動に走りそうだ」
まるで野獣だな、野生の勘とはこれのことを言うのだろう。
女の勘ではない、これは生物学的に女と言うだけでこういうのは鬼女とか言われる部類のはず。
「何を言うのですか、女王様。食欲だけではありません、肉奴隷だって欲しいですよ。金さえあればそういう娼婦を雇う事だってできるはずでは?」
「なんてクズな発言をするのだ……貴様は……」
クズで結構だ!
この場を乗り切れるならばクズと言う汚名も喜んで拝命してやろう。
「しかし、カオルーン公爵はそういう噂が流れていると聞きましたが?」
「貴様はそこまで知っているのか……まぁ、奴の職権乱用はこちらも把握している。なんとかしたいとは思うが公爵には女王である私でもそう簡単に制止できないのだ……(いや、私だから制止できないと言った方が……)」
最後の方は言葉が小さくて聞き取りにくかったが、どうやら女王ですらあのハゲデブエロ公爵には困っているらしい。
しかし、さきのクズ発言のおかげで女王の疑いを何とか晴らすことが出来た、……と思っていたのだが結果から言うと出来ていなかったようだ。
「で、話を戻そうか。貴様は何を隠しているのだ?」
「衣食住は手に入れたので性欲を満たすために努力しているのですが?」
「性処理用の相手なら既に1,2人ほど居るではないか?」
2人?……BPはそんな目では見れん!!
「ほれ、その一見紳士的に見えて全然紳士的でない貴様のその感覚が貴様が性欲のために行動していない気がするのだよ。本当の変態は相手を選ばないと聞く」
いや、俺はそこまでアグレッシヴな変態じゃないし……。
「だからこそ、何か裏を隠している。相手を選ぶつもりがあるのに娼婦を雇おうとするような童貞が居るとは思えない」
くッ!?確かにマトモな意見な気がする。
女王はロングソードを持って俺の正面に来る。
あれ?この展開は……?
「吐け、でなければ貴様の首はその胴と離れることになるぞ」
最初に出会った時の冷徹な眼光が簀巻き状態の俺を襲った。
マズイ、本格的に死ぬ気がする。
かといって『この国を内側から乗っ取る気です!』などと本音を言えるわけが無い。
カオルーン公爵から3000万ダラーを奪えたからと言ってもこのクソババァは出し抜けないようである。というよりもこのババァは俺に油断などしていないのが今回の敗因かもしれない。
……あれ?敗因?
勝利条件はもう満たせない、というよりも存在しない上に敗北条件を複数個も満たしているようであった……。
神は言っている、ここで死ぬ運命だと。
ちょ!?待てよ!!
違うだろ! 『死ぬ運命ではない』だろ!?
これじゃあゲームオーバーじゃねぇか!!
「そうか、本当に黙っているつもりなのか。しかし、私も異世界人に翻弄され続けるわけにもいかないのでな」
呟きながら女王様はロングソードを振りかぶる。
マジで!?
え!? 何この展開!?
ここで俺の人生終わりなの!?
ふざけんじゃねぇよ!
せめて…………せめて1回くらいHしてみたかった……。




