13枚目 鬼が仕合えば
「それじゃ繫さん、これ鍵ね。返す時はうちのポストに入れといてくれたらいいから」
「すみません、ご無理を言ってしまって」
「無理でもなんでもないってこの位。……それより、何かあったら遠慮せず連絡して」
商店街組合会長の己を案じる言葉。
御園 繫もそれを汲み取り、いざとなったら頼らせてもらうと伝える。
2人とも今回の来訪者の目的はさっぱり分からないが、わざわざ足を運んでくれた相手を無碍に扱うなことなどできるはずもなかった。
「お待たせして申し訳ございません。お茶とコーヒーがありますがどちらになさいますか?」
「お茶をいただこう。こちらこそ突然押しかけて申し訳ない」
繁が2人分、自分と来訪者である経津 重花のお茶を淹れる。
5月下旬とはいえ日が落ちれば今日などまだ肌寒い日もあり、そんなところにお茶から立ちのぼる湯気や香りが室内を漂う。
実際はほんの僅かな変化だが、それだけで室内が十分に暖かくなったように繁は感じた。
「ありがとう。……良い香り、檸檬の緑茶か」
「ええ、商店街のお茶屋さんで初夏頃に出るんです。毎年の楽しみの1つでしてね」
ほんのわずかに青さがある檸檬の香りと一緒に、甘みのある柔らかな口当たりのお茶を一口、二口。
喉を通っていく温かさに、思わぬ来訪者への驚きで固くなっていた意識がほぐれ一息ついたことを感じる繫。
何とか落ち着いた己を自覚し目の前のプロ、国内ランキング5位の経津 重花へ向き直る。
「先ほどは失礼な態度を取ってしまい申し訳ございません。まさか経津プロが来ていると思わずつい」
「いや、御園プロが謝る必要はない。これ見よがしに鯉口を切ったこちらに責任がある」
そう言って笑う重花。
我慢しようと思ってはいたが、ついどのような反応を繁がするのか気になりやってしまった。
いきなり目の前で猛獣が大口開けてこれからあなたを食い殺しますと言っているようなもので、これは重花に十割責任がある。
「それで経津プロ、本日はどのようなご用件でお越しくださったのですか? 何やら私にご用がおありのようでしたが」
「ああ、今日訪ねさせてもらったのは御園プロに依頼したいことがあったからなんだ」
ランキング上位で鎬を削る者が、下位どころかいまだランキングに入ってさえいない者へと依頼したいことがあると言う。
自分などとは比べ物にならない強者である重花の依頼とは何か。
不安も僅かに感じるが、繫の内心ではどのようなものかという興味の方が勝った。
「7月頃に開催されるあるイベントのために腕利きのプレイヤーが大勢必要なんだが、その人員集めに苦戦していてね。そんな時に御園プロの事を耳にして、是非にと思ったわけだ」
「目をかけていただきありがとうございます。日程にもよりますが、7月ならおそらく問題はないかと」
講習会や公式戦以外には特に7月は予定は入っていないことを確認し、繁からは前向きな回答。
「それは良かった。この前のポップフェスタでの試合を見て、御園プロならばと思っていたものだから」
自分の試合を重花が見たと知った繁。
決してあの試合に手抜かりがあるなどではないが、その事実にどこか繫は面映ゆくなる。
「遅くなったが優勝おめでとう。確か御園プロはスポンサーから招待されてあのイベントに出たとか?」
「お祝いの言葉ありがとうございます。ええ、剪拿大樹会長という方からお誘いを受けた形でして」
繫から告げられた名前。
競会上層部が危険人物としてマークしている名前が出たことで、今回の絵図は誰が描いたのか答え合わせができたと納得する重花。
相も変わらず我らが組織は後手後手の対応だなと内心で呆れ、またしても一杯食わされた上層部の怒り心頭な様子が容易に思い浮かぶ。
「直々のご指名とは、剪拿会長とは古い付き合いなのかい?」
「いえ、初めて会長とお会いしたのは1年ほど前でして。ありがたいことにその時から度々ご贔屓にさせていただいています」
「なるほど。しかし今回のイベントでのオープンセンス貸し出しには驚いたが、あれも剪拿会長の手腕というやつかな?」
「オープンセンスですか、実は私も当日に知らされたので驚きましたよ。結局あれが会長によるものなのかは聞けずじまいでしたが」
まず探りを入れるなどしない、眼中にないような重花の直球な質問。
繫も繫で、自分が競会から意図しないオープンセンス貸し出しに関係しているのではないかと疑われているとは露知らず素直に自分の状況を答える。
「それは随分なサプライズだな」
「まぁ、おかげで試合をより良いものにすることができたと思っています。何より楽しかったです」
「……そうだな、確かにとても楽しそうだった」
試合当時を思い出し楽しそうな様子の繫を見て、何かを堪えるように重花が反応する。
もう十分ではないか?
バトルワールドに限り途端にナーフされる重花の忍耐は、もうそろそろ限界を迎えようとしていた。
上層部から指示された調査は本人が語る限り白、御園 繁は今回の事件に関与してはいない。
本人がそう言っているのなら、問題なしと判断して良いのではないか?
もちろんそんな訳はないが、既に調査が建前と化している重花。
今日ここに来たのは、調査にかこつけてたくさん楽しむためだ。
彼女が知り合いから猛獣と同列の扱いを受ける理由の一端が見えた気がしたが、幸いと言うべきか舌なめずりの対象である繫には気付かれてはいない。
「御園プロ、申し訳ないが重ねてもう1つ頼み事を引き受けてくれないだろうか」
「何でしょう、私に出来ることでしたら」
「バトルして欲しい。今すぐ、ここで」
デッキがセットされたデバイスを持ち、真っ直ぐに目の前の繫を見つめる重花の顔は既にバトルワールドのプレイヤーとしてのもの。
己の同族と見ている繁の承認の言葉を、今か今かと待ちわびる。
ランキングで競い合う者たちはいずれも強者だが、重花の渇きに理解を示すことはなかった。
弟子入りを希望する者たちは、猛獣にとってのじゃれ合いが致命傷となり去っていった。
繫を見て感じた直感を重花は一片も疑わず、ただこれからのバトルに思いをはせる。
さぁ戦おう。存分にやり合おう。
早く早く早く早く早く。
「申し訳ありません、それは少し難しいです」
よって繫からのやんわりとした拒絶は、自ら壁に激突したかの如き衝撃を重花に与えた。
「…………ぇ?」
呆けた様子で重花の口から声がもれる。
なんで? どうして?
存分にやろう。OK。2人は楽しくバトルできました。
こんな感じの展開を思い描いていた重花。
それが何故、どうしてこんなことになってしまったのか。
「おやもしかしてイベントのための試験と勘違いしてしまったのかなそれは勘違いだそのような篩にかけるような非礼ではなくあくまでプロ同士の親睦を深めるためのものであって何かしらの思惑があるわけでは」
じりじりと距離を詰めながら、息継ぎなしで重花は繫へと語りかける。
口調は親し気な様子だが目は一切笑っておらず、そんな人物が獲物を追い詰めるように迫ってくるのだ。
まともな感性を持っているのなら危惧を抱くのは当然と言えるだろう。
「ああ、勘違いさせてしまったのなら申し訳ありません。バトルしないと言っているのではないのです」
そしてこの場合、やはり御園 繁が経津 重花の期待通りの人物であっただけのことだ。
「へあ?」
「デバイスありのバトルですとここは些か手狭ですので、テーブルトップでも問題ないでしょうか?」
刃境と称されるプレイヤーの呆け顔がそこにあった。
繁の言葉と、手で示している先のプレイマットが敷かれたテーブル。
重花はその意図を数秒のタイムラグをもって理解した。
「何の問題もない! プレイヤーとデッキ、この2つがあれば十分だ!」
残像が見える速さでデバイスからデッキを抜き、テーブルへと重花が着く。
続いて繫も重花の対面へと座る
「お気遣いいただきありがとうございます。今日は商店街での屋外デバイス使用申請を取っていないもので」
「いや、急に訪ねたこちらが悪いんだ。御園プロが謝ることじゃない」
デバイスならば自動で行ってくれるが、今回は手ずから自分と相手のデッキをそれぞれシャッフル。
流石に2人とも日頃からカードに慣れ親しんだ者たちであり、その手つきには一切の淀みがない。
そうしてシャッフルが終わり、プレイマットに示された位置にデッキを置く繫と重花。
「せっかくのテーブルトップですから先攻後攻はダイスの数字が大きい方が決める、でもよろしいでしょうか?」
「確かに普段はデバイスが判定しているからな。面白い、任せよう」
「では言いだしっぺの私から」
そう言って繫が多面体のダイスを振るう。
続いて重花が振り、結果は繫が先攻となった。
対戦の順番も決まり、テーブルの上にはデッキ以外にダイスやコイン、電卓にメモ帳などが置かれ準備も万端。
あとは当事者である2人が口火を切るのを待つだけである。
「礼を言う、御園プロ。バトルを受けてくれてありがとう」
「いえいえ、こちらこそお礼を言わせていただきたい。いずれ対戦したいと思っていた方からの申し出、どうして断ることなどできましょう」
繫にとって今回の重花の来訪は完全に予想だにしない出来事であり、その内心は実に様々な感情が渦巻いていた。
そこにランキング上位選手からのバトルのお誘いと来れば、快諾以外の選択肢などあろうはずがない。
落ち着いているように見えてその実、繁の感情は縁ギリギリまで満たされたコップの様相を呈している。
なみなみと注がれたそれの大部分は、闘志や挑戦心であろうか。
「いずれ対戦したいと……。ふふ、やはりあの時の勘は間違っていなかった」
自分の繁に対する直感が正しかったと再認識した重花が、その笑みに闘志を滲ませる。
ランキング入りの、しかも上位の選手を競争相手と見る者はプロでは少ない。
ランキング外のプロにとっては別世界の住人という認識が大多数であり、関わろうとする少数派もその庇護下に入りたいと考える者がほとんどだ。
だが目の前の男は、御園 繫は経津 重花を競い合う相手として捉えている。
バトルワールドのプレイヤーとして対峙している。
その事実がただ重花には嬉しく、同時に自制心が薄れていくのが実感できた。
「御園プロ。どうやら1戦だけでは満足できそうにない」
その言葉を受けて、何とか留まっていた繫のコップからも感情が溢れ出す。
「……構いません、それは私も同じこと。存分にやりましょう!」
「はは、はははは! そうだなやろう、ただのバトルワールドのプレイヤーとして全力でやろう!!」
2人の闘気のぶつかり合いとでも言うのだろうか、お茶の表面に波紋が次々と広がっていく。
互いに遠慮や躊躇などこれより無用だと察し、それが嬉しくて仕方がないとばかりに笑う。
競会所属か未所属か? ランキングに入っているか否か?
そんなもの今この場では何の意味も持たない。
最重要事項は、気力が許す限りとことんバトルワールドで競い合うことのみ。
「御園 繫、参ります!」
「経津 重花、この身はただ一振りなれば!」
裂帛の気合がぶつかり渦を巻く。
今よりここは修羅の果たし場。
繫と重花、2人だけの月夜の決闘がいま始まろうとしていた。
「先攻、私からいきます! エネルギーフィールドにカード1枚をチャージし、ターン終了です」
「ターンを貰う、ドロー! こちらもカードを1枚チャージし終了だ」
突如として始まった2人のバトル。
その1ターン目は、どちらもカードをチャージして終了という静かなスタートで始まった。
「私のターン、ドロー! チャージし緑と黄の2点、【香蟲花草 結び合う接ぎ木】を召喚!」
四方へ伸びる枝木に酷似したナナフシのようなイラストが描かれたカードが、繁のフィールドへ召喚される。
【香蟲花草 結び合う接ぎ木】
カードコスト:[緑][黄]
カードタイプ:ユニット
世界:緑
種族:香蟲花草
戦闘力:2000/生命力:2000
「私はこれでターンを終了します」
「香蟲花草……、持ち主である御園プロと同じく興味深いカードたちだ」
「ふふ、経津プロほどの方に興味を持っていただけるとは光栄です」
重花が繁について調べていくうちの関心は大部分がバトルワールドへの姿勢、自分と同じだと感じたその在り方である。
だが関心は他にも示され繫が度々バトルで使用しているカードたち、その中でも【香蟲花草】というカテゴリーは重花の目を引いた。
少なくとも重花はこれまでの対戦で同カテゴリーのカードを見たことがなく、同じランキング選手でも使っている者はいない。
気になり調べてみたところ、重花の予想は当たった。
【香蟲花草】の名が付くカードたちはその全てが、《《パック未収録》》のカードであったのだ。
それらは文字通りの意味で、市場に流通しているカードパックには収録されていないカードたちを指す。
未収録の事情は様々であり、家や流派に代々伝わる相伝のカード、生成方法が失われてしまったカード、競会がそう定めたカードなどがよく知られている。
「対戦記録を見る限り、プロになった当初から使っているのかな?」
「ええ、私のプレイヤーとしての歩みを始まりから支え続けてくれているカードたちです」
長年の戦友を見る目で、繁はフィールドに召喚されたカードを見ていた。
目の前の対戦相手がどのような馴れ初めでカードたちと今にいたるのか聞きたくもなったが、重花にとっては何よりも優先すべきは今このバトル。
「ではそんな相手に応えられるよう、こちらも奮起せねばなあ! ドロー!」
フィールドに召喚されている【香蟲花草 結び合う接ぎ木】は、重花が確認した繫の対戦データにも何度か登場していた。
その身に秘めた能力も把握しており、放置すれば厄介な存在になることは必定。
このターンに対応するか一瞬だけ考え、重花は手札からカードを繰り出す。
「カードをチャージし、まずは黒1点で【飢えた宝刀】を召喚!」
【飢えた宝刀】
カードコスト:[黒]
カードタイプ:ユニット
世界:黒
種族:魂魄武具
戦闘力:0/生命力:1000
立派な拵えの、しかし怪しげな妖気が漂う刀が描かれたカード。
重花が信頼する1枚だが、今回の本命は後に続くカードである。
「種族が魂魄武具のユニットが自分フィールドに存在している時、このカードは黒1点で発動することが出来る。手札から【妖刀一閃】を発動! 相手のコスト2以下のユニット1体を破壊する!」
既にフィールドに出ているカードの力を借り、あえなく墓地に送られる繫のユニット。
「残念、見逃してはくれませんか」
「可能な限り対戦データは確かめさせてもらったのでね、そのユニットを放っておく愚は犯さないさ。これでこちらはターンを終了する」
自分より圧倒的に強い相手から警戒され、対策されている。
それは何て、何てプレイヤー冥利に尽きるのだろう。
デッキからカードをドローしながら、繁は内心でこのバトルの巡り合わせに感謝していた。
「カードをチャージし全エネルギー抽出! 【香蟲花草 結び合う接ぎ木】と【香蟲花草 漂う綿毛】を召喚!」
召喚されたのは同カテゴリーのユニットが2体。
先ほど重花のカードがシナジーを発揮したが、それは繫のユニットたちも同じ。
フィールドに召喚されたことでその効果が発揮される。
「【香蟲花草 結び合う接ぎ木】がフィールドに出ている限り、このユニット以外の自分がコントロールしている【香蟲花草】ユニットの戦闘力と生命力はプラス1000されます!」
【香蟲花草 漂う綿毛】
カードコスト:[緑]
カードタイプ:ユニット
世界:緑
種族:香蟲花草
戦闘力:0/生命力:1000→戦闘力:1000/生命力:2000
自身と同じカテゴリーのユニットをフィールドにいる限り永続的に強化する能力。
接ぎ木された植物が耐性を高めるよう、このカードは自軍の同族を支援する力に長けているのだ。
「危ない危ない、先のターンで1体目の接ぎ木を破壊したのは正解だったな」
ターンをもらい、重花は盤面から繫のデッキを推測する。
2枚目の接ぎ木や他の【香蟲花草】カードが出ていることから、デッキ内の【香蟲花草】の割合は多いはず。
採用されているのは緑や黄のカードが中心で、足すとしても恐らくはあと1色。
ユニットの横並びやその強化に長けたデッキに付け足すのなら同じく強化が得意な赤か、不足しがちな単体の除去手段が豊富な黒。
これらの推測が当たっていた場合に取るべき一手はどのようなものか。
「チャージし黒含む3点、【カース・レリック】発動! 相手ユニット1体の生命力を3000下げる! さらに魂魄武具がいる時にこの効果はもう1度発動する!」
【香蟲花草 結び合う接ぎ木】
戦闘力:2000/生命力:2000→戦闘力:0/生命力:-1000
【香蟲花草 漂う綿毛】
戦闘力:0/生命力:1000→戦闘力:0/生命力:-1000
繫のユニットの生命力が下がり、ついにはマイナスの数値に達する。
バトルワールドにおいて生命力はユニットが存在するための支えであり、それが0になってしまえばフィールドに残ることは叶わない。
0以下のマイナスになった場合も同様であり、先ほどと同じく繁のユニットたちが墓地へと送られる。
「ターン終了。さあ、そちらの番だ」
「さすが、思うようにバトルをさせてはくれませんね」
繫がユニットを並べても、重花が攻撃の起点を即座に潰してしまう。
ユニット中心の繫にとっては辛い展開だが、この程度はバトルワールドの常。
多くのプレイヤーにとって、逆境は転じれば反撃という心強い友となる。
「緑4点で【生き残りの選別】を発動します! デッキの上からカード4枚を見てその中からユニットカード2枚を選択、1枚を手札1枚をエネルギーフィールドへ!」
ユニットの展開ではなくリソースの補充に動いた繫。
この判断が吉と出るか凶と出るか。
「ならば今度はこちらから動かせて貰おう。赤1点で【熱波の短剣】、黒含む3点で【滴るデスサイズ】を召喚!」
新たに2体の魂魄武具ユニットが重花のフィールドに召喚される。
【熱波の短剣】
カードコスト:[赤]
カードタイプ:ユニット
世界:赤
種族:魂魄武具
戦闘力:1000/生命力:1000
【滴るデスサイズ】
カードコスト:[黒][黒][1]
カードタイプ:ユニット
世界:黒
種族:魂魄武具
戦闘力:3000/生命力:1000
「さらに召喚された【滴るデスサイズ】の効果により、デッキの上からカードを3枚墓地へ送る」
これで重花のフィールドにはユニットが3体、対して繫は0体。
魂魄武具はその種族デザインから単体では攻撃も迎撃もできないユニットであり、他ユニットに装着されて初めてその真価を発揮することができる。
なので繫にとって、重花のユニットは直接の脅威にはまだなっていない。
「私のターン、ドロー!」
しかしそれも時間の問題であり、悠長にしていたらあっという間に切り伏せられることは繫でも分かる。
だからドローしたカードを見た繁は表情には出さず、しかし内心ではこの状況に応えてくれた自分のデッキに感謝した。
引いたカードは黄の世界のカード。
それら黄のカードのモチーフで代表格は、天界の住人である神々や天使たち。
いと高き存在を示す、下界を一掃する力を持ったカードとは何か。
「チャージはせず黄を含む4点で【恩寵ある氾濫】を発動! フィールドに存在する全てのユニットを破壊します!」
敵味方を問わない、問答無用の全体除去。
それは神罰、または天誅が具現化した力の行使として揮われた。
今回は一方的に重花のユニットのみが破壊され、フィールドは壊滅の様相を呈している。
「この時墓地に送られたユニットカードの枚数が最も少なかったプレイヤーは、デッキからカードを1枚ドローできます。墓地に送られたカードは私が0枚、経津プロが3枚。よって私は1枚ドローします!」
盤面のリセットに加えて手札補充。
今の状況で繁にできる、精一杯の重花への回答がこれであった。
「綺麗に流されてしまったな」
「こんな楽しいこと、そう簡単に終わらせたくはありませんから。まだまだお付き合い願います」
「……ああ、それはこちらも望むところだとも」
カードを引きながら、楽しげに重花が繫を見る。
ランキング上位の選手になってからというもの、重花にとってただの娯楽としてのバトルは縁遠いものとなっていた。
競会所属のランキング5位、刃境の二つ名をもつトッププレイヤーの1人。
そのような肩書が、重花の全てのバトルを飾り立てた。
意義のある、価値のあるバトル。
重花のバトルは、もう既に重花1人のものではなくなっていた。
今の立ち位置に不満があるわけではない。
強者たちと日々戦うことのできる環境は重花が望んでいたもので、そこに噓偽りは一切存在しない。
しかし、時折ふと浮かんでくる感情があることも事実であった。
「この戦いは2人だけのものだ。誰にも邪魔はさせない」
自分と相手。
本来、バトルワールドの対戦に関わることが許されるのはこの当事者たちだけだ。
継いだ意志や、背負った想いなどはあるだろう。
だがそこに、勝負の世界に余人が割って入る隙など何処にもない。
いや、あってはならない。
重花の心底にある、バトルワールドへの気持ち。
奇しくもそれは目の前にいる対戦相手、繁の心情と一致するところがあった。
あるいは繫を同族だと重花が感じたのは、そこを感じ取ったが故であったのかもしれない。
バトルワールドにおいて大半のカードはパックから入手可能ですが、例外も存在します。
パック未収録であるカードはその入手性の低さから多くの場合は高額で取引され、盗難被害に合う確率も高いと言われています。
また収録されたパック以降は再録されないカードも同じような扱いを受けており、中にはあまりのカードパワー故に未来永劫再録が望めないカードたちも存在すると噂されています。
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【恩寵ある氾濫】
カードコスト:[黄][黄][2]
カードタイプ:サポート
全てのユニットを破壊する。
その後、墓地に送られたカードタイプがユニットのカードが最も少なかったプレイヤーは、デッキからカードを1枚ドローできる。
喜ぶがいい。
最も持たざる者であるお前にのみ、祝福はもたらされるのだ。
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・高い、高すぎる
・先週ショップ行ったらまた上がってたわ
・おい去年ここで氾濫はもう頭打ちっていったやつ出てこい!
・↑お前ここで前に売った方がいいか相談してた自称投資家?
・↑↑その様子だとまじで売っちまったのか
・↑↑↑年々ユニットの質が上がってきてんのに下がるわけなくない?
・(このコメントは削除されました)
・残当
・上のやつとか見るたびバトルワールドで小遣い稼ぎは程々が1番だと戒められるわ
・フレーバーテキストもしっかり確認すべきだったな
・相変わらずこのフレーバー煽り性能高い
・手札強いやつに言いたくなるのオレだけじゃないはず




