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(ガワだけ)胡乱なカードゲームおじさん  作者: 十田心也


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10/14

10枚目 閉幕は明暗孕み

 あの試合を見ていた観客からすればトーナメントはその後特に波乱もなく進み、順当に御園(みその) (しげる)が優勝した。

 しかし見ていない観客からすれば、自身の推しが良く分からない冴えない男にやられていくという有様。

 観客はブーイングを浴びせる者とそれを咎める者に分かれ、当の本人は終始涼しい顔で試合を進めていった。

 そうして依頼主の会長より表彰を受け、繁は会場を後にする。

 今イベントでの繫の仕事はこれで終わりであり、会長直々にあとは好きに楽しんでくれと許可が出ていた。

 ひとまず控室に戻り、取り急ぎ繫がしたことといえば──



「やっぱり【泥濘の大吞】でキルターン延ばされたのが痛かったよな。赤じゃ破壊以外の除去手段がねえからどうしようもねえし」


「直接ダメージのバーンカードが来なかったのも私にとって運が向いていましたねぇ。あとは【霧撒く鵯】が生き続けるのもありがたかったです」


「鳥は焼けっていうからなあ。先人の言葉は含蓄あるぜ」



 トーナメントの進行でお預けとなっていた感想戦を、1回戦の相手である細猛(ほそたけ) (れつ)と行っていた。

 他の対戦相手にも繫は声をかけたが、その誘いに乗ったのは烈1人だけ。

 よって繫と烈は控室にて、見学者も交えて1回戦の振り返りをしているというわけだ。


「鷹介、プロの感想戦が生で、目の前で……」


「……流石にテンションおかしくなりそうだなこりゃ」


「陽映姉さん……、もしかして今わたしたち結構な体験してるんじゃ」


「かなり貴重な体験してるよ透。試合の熱冷めやらぬところに、当事者であるプロ2人の感想戦を間近でっていうのはね……。一介の学生が経験するのは、ちょっと、あぁ駄目だ興奮で上手く喋れない!」


 門地(かどち) 界斗(かいと)炉井(ろい) 鷹介(ようすけ)五色(ごしき) (とおる)観月(みつき) 陽映(はるえ)

 見学者の内訳はこの4人であった。

 流れとしては、優勝のお祝いとチケットのお礼を会場スタッフを介して繁へ伝えて貰おうとした一行だったが、何故か本人がスタッフと共にその場へ。

 そして今から感想戦を控室でするから良かったら一緒にどうですかと誘われ、現状にいたるというわけだ。

 まだトーナメントの、何より1回戦の余熱がとれない一行にその申し出を断るという選択肢はなかった。


「あるいは速攻で焼くのではなく、腰を据えて炙るのもありだったのかもしれないですね。皆さんはどう思いますか?」


「いきなり巻き込んでやるなよ……、まあでも若い知恵ってのもなくはねえか。悪いな学生諸君、ちょっとばかしおっさん2人に付き合ってくれや」


 そこへ追い打ちをかけるように、プロ2人からの感想戦への誘い。

 立て続けに起こるサプライズにいよいよ平常心を保つのが難しくなってきた4人。


「あの、僕は細猛プロの判断は間違ってなかったと思います」


 しかし何とか己の考えを口にしようとし、その先頭を界斗が切った。


「相手の準備が整うよりも早く自分の土俵で勝負するのは、理にかなっている筈です」


 授業での回答の何倍も緊張しながらだが、界斗は己の考えをプロ2人に述べる。


「しかしですね門地さん、あの時はまだエネルギー加速が役割のユニットが1体のみでした」


 そんな姿に押されてか、後に続けと他の者たちも感想戦に参加する。


「それなら相手の出方を伺いつつ対処した方が丸かったのでは?」


「俺も先輩に同意見だな。赤はダメージを底上げするカードも色々あるし、それならユニットを介さないで直接相手を焼き切ることだって可能だ」


「いや、御園プロのデッキは青い上に緑なんだよ? そんな相手を悠長に焼いてたら手がつけられないことに」


 一度カードについて熱が入ってしまえば、そこはバトルワールドのプレイヤー。

 プロの前で感じていた緊張など薄れ、各々の考えを飛び交わせる。



 そんな3人から遠慮がちに少し離れた場所にいるのは、五色 透。

 繫が学園に来訪した日に友人たちとのわだかまりは解消できたが、バトルワールドの知識がない透にとってこのような場ではやはり疎外感を感じてしまうもの。

 あの日に買ってからまだ開けていないカードパックをお守りのように彼女は握る。


「あは、わたし場違いだなぁ……」


「そんなことはありません」


 ぬぅっと意識外から差し込まれたその声と顔に、思わずその場でちょっと浮いてしまうほど驚く透。


「みみ御園プロっ!?」


「驚かせてしまい申し訳ありません。どうも私は人に要らぬ警戒心を与えてしまうらしく」


「いえ、わたしこそ失礼な態度をとってごめんなさい!」


 お互いに謝り、透は今回のイベントに招待してくれた繫へ改めて礼をする。


「今回は素敵なイベントに招いてもらってありがとうございます。あと、優勝本当におめでとうございます!」


「ありがとうございます。私自身楽しめ、皆さんにも同じように楽しんでいただけたなら何よりです」


「あの、うまく言えないんですけど1回戦の試合ほんと凄かったです! 心の底からワクワクドキドキするような感じで!」


 あの時に感じた熱を思い出すように、当事者の片割れたる繫へ話す透。

 それを聞き、他人からは常に何かしら企んでいると噂される繫の顔が変わる。

 いや、本当に変わったのかは分からない。だが透の目にはそう見えたのだ。

 それは自身の信仰が実った様を見たような、どこか満ち足りた柔らかい表情で繁は透を見ていた。


「……ありがとうございます。今日いただいた言葉で一番のものかしれません。そしてやはり私の考えは間違っていなかったと確信できました」


「確信、ですか?」


「ええ、彼らに疎外感を持つ必要などありません。五色さん、彼らとあなたに隔たりなどないのですから」


 己の心境を見通されたことに一瞬驚き、それもバトルワールドのプロならばと納得する透。

 だがその後の言葉には透は納得できず、繫へどのような意図かを問う。


「いや、わたしは界斗くんたちと違ってバトルワールドの経験や知識はゼロですし」


「知識や経験の差は誰にでもあります。彼らや私も歴戦の方々と比べれば、その差は五色さんと変わりません」


 真っ直ぐに目を見て語りかけてくる繫。

 これはただ自分を慰めようと気休めを言っているのではないと、透は思いなおす。


「五色さんは私と細猛 烈さんの試合を見て、ワクワクドキドキしたと言ってくれました」


「はい、それは確かに……」


「つまりその時五色さんの胸にはバトルワールドへの情熱、プレイヤーとしての灯火が宿ったのです」


 繁が両手を左右へ広げ、透を歓迎するように語りかける。


「そしてその灯火こそが、何よりバトルワールドにおいてなくてはならないもの」


「で、でも気持ちだけなんて」


「意思なき力は自他を巻き込みいずれ果てるしかありません。しかし灯火が胸にあれば険しき道も進んでいけます」


 力が無くとも、バトルワールドへの挑戦の道をその灯火は照らしてくれる。

 旅路の中で、プレイヤーは自然と力を得ることができるのだ。


「灯火が、胸にあれば……」


 カードパックを握ったまま、透は自分の胸に手を当てる。

 そこに灯火が宿っているのかを探るように。



「……みたい」


 思えば()()は、最初から少女の中にあったのかもしれない。


「……ってみたい」


 小さな小さな、しかし確かにあり続け、そしていま目覚めの時を迎えようとしている。


「わたしやってみたいです、バトルワールド!」


 その言葉が持つ意味。

 五色 透という少女の胸にプレイヤーとしての意思、灯火が宿った瞬間であった。


「おめでとうございます。新たなプレイヤーの誕生を歓迎しましょう!」


 繁は新たなプレイヤーの誕生に立ち会えた嬉しさを滲ませながら、透を言祝ぐ。

 自身の試合を切っ掛けにバトルワールドを始めてくれるなど、繫にとってこれほど嬉しいことはそうはない。



 そしてそれは、繫以外の面々にとっても同じであった。


「透ついにバトルワールド始めるの!? デッキはなに使うか決めた? 僕のお勧めは」


「落ち着けよ界斗。ビギナーの楽しみを奪うのは野暮ってもんだろ」


「おっといけない。ごめん透、嬉しくてつい」


 自分の友達がバトルワールドを始めるという慶事に、先ほどまでの議論はいったん中止し我が事のように喜ぶ界斗と鷹介。

 陽映も2人に続き、いとこのバトルワールドへの挑戦を祝う。


「……その選択は間違ってないよ透。誰が何と言おうと、透の意思は透だけのものだから」


 皆の祝福を受け途端に照れくさくなる透。

 学生たちが嬉しく楽しそうにする様を眺めながら、こちらは大人2人がしみじみとした様子で話している。


「なんつーか、こういう場面に立ち会えるとプロになった甲斐ってやつを感じるぜ……」


「おっしゃる通り。加えて言うならば彼女の切っ掛けの1つになったバトルを、あなたという強者との試合で演じることができたこともですかね」


「……やめろや、俺様まで攻略しようとすんじゃねえ」


「はて?」


 こいつ色々油断できないやつだなと烈が繁を評していると、学生4人がそわそわとした様子で近づいてくる。

 先頭を歩く透の手には、彼女が今の今まで開封することが出来なかったパック。


「あの、わたしさっきは威勢のいいこと言ってたんですけど、実はカード1枚も持っていなくて。パックもこれだけで」


 バトルワールドには様々な遊び方やルールがあるが、公式競技にも採用されている最も一般的な[ベーシック]では最低40枚のカードでデッキを作る必要がある。

 透が持っているパックは1パック10枚入り。

 デッキを組むにはあと30枚のカードが必要となるわけだ。


「皆が言うには学園で申請が通ればカードの補助なんかが受けれるそうで、足りない分はそこも含めてなんとかしようってことになりまして」

「それで、あの、こんなことをプロの方にお聞きするのも失礼なんですが……」


 透は思わず後ずさりそうになりながら、先ほどの決意を思い出す。

 始める前から尻込みするなど、皆の祝福を裏切ることなどできない。


「このパック、初めてパックを開けようと思ったんですが緊張してしまって。何か心構えなどあれば教えていただけますでしょうか!」


 何十枚とカードを束にしてデッキを組んでいるプレイヤーを見て、バトルワールドに詳しくない者の中にはカードが大した値段ではないと考える者もいる。

 そういう者がちょっとした興味で初めてみようとショップなどに赴き、かかる費用に慄く様子はショップの店員などからしてみれば日常茶飯事の出来事である。

 このような事例で分かる通りバトルワールドのカードは決して手軽なものではなく、透の緊張を全国のプレイヤーが知れば共感する者は意外と多い。

 そして幸いなことに、目の前で教えを請われている2人はその考えに共感する者であった。


「懐かしいですねぇ、私も初めてのパック開封の際は緊張したものです。何時間も部屋の中をウロウロしたり」


「俺様も同じ感じだな。落ち着こうとストレッチしたりランニングしたり、結局1日経っちまってた記憶が」


 プロである2人から共感が得られるとは思わず驚く透。

 驚きと同時にあれほどの試合をした2人すら緊張したという言葉で、感じていた重荷が軽くなった気がした透。

 そんな少女の気持ちの揺れを察したプロ2人は、この機を逃すようなことはしなかった。


「せっかくですから、この場にいる方たちに同席してもらいながら開封するのはどうでしょう? もちろん五色さんが構わなければですが」


「まあでも1人より気心知れた奴らと一緒の方がいいと思うぜ。今ならおまけに、末席とはいえプロ2人も付いてる」


 プロたちの提案に界斗、鷹介、陽映の3人が賛同し、ついに透も覚悟を固めた。

 席に座る透を囲うように他の者たちが集い、その時を見守る。


「では、い、いきます!」


 透1人だけではいまだ踏ん切りがつかなかったかもしれない。

 だが、今この場には心強い友人たちや先達が見守ってくれている。

 怯む心に活を入れ、透はついにそのカードパックの封を切った。



 透が封を切る、その瞬間であった。

 控室の中を、色とりどりの光が駆け巡ったのは。


「おいマジか!? 今の光……」


「まさか招来現象の場に立ち会えるとは……。今日はずいぶんと学びが多いですね」


 プロ2人が意味深に驚いている中、学生たちも別種の驚きを味わっていた。

 正確に言うのならば、透を除いた3人が彼女の手にしたあるカードを見て驚愕している。


「え、このカードってこのパックから出るの……?」


「このイラストにテキスト、確かにこれは。透、あなた……」


「……そろそろ俺の許容量超えそうだ」



 自分以外が驚いている空間で、透は1枚のカードをなんとも不思議な気持ちで見ていた。

 そのカードを認識した瞬間に湧いたこの感情をなんと表すべきか。

 旧来の友人や家族と再会した時とも異なる、この奇妙な安堵感。

 まるで自身の半身が戻ってきたような感覚を、透はこのカードを通して感じていた。


「【色彩の具現家 アンリ】……」


 カード名が印字された箇所をなぞりながら、その名前を透は呟く。

 そうしていると漠然とした、何の確証もないが揺るがぬ気持ちのようなものが湧き上がってくる。

 自分はこのカードと一緒にバトルワールドの旅路を進むのだという、そういう気持ちが。


「まだデッキも組めてないけど、これからよろしくね」


 天井の明かりが偶然にも反射したのか、応えるようにイラストが一瞬光る。

 カードすら不足している前途多難な道のりだが、透は不思議と不安は感じない。

 それこそ彼女に灯火が宿っていることの、なによりの証左なのかもしれなかった。


 ちなみに【色彩の具現家 アンリ】の価値を聞いて透が大いに慌てるのは、このすぐ後の話。








 透がパックを開封した時、会場内の離れた場所にてそれを感じ取る者たちがいた。

 そこはスポンサー用にあてがわれたスタッフルームの一室。


「ふむ、成ったか。無駄骨にならず何より」


 文字が刻まれた石片を持ち呟く老人、イベントの中核スポンサー企業の会長である剪拿(せんだ) 大樹(たいじゅ)


「それがあなた方が大事にしている預言ですか。傍からだとただの石ころにしか見えませんね」


 対面にて軽口をたたくのは、コンクエスト社の人事本部長を預かる征座(せいざ) 嵐斬(らんざん)


「簒奪しか頭にない者は本質を見誤ることが多い。随分と生き辛そうではないか」


「はは、媚びを売るのが大好きな忠臣気取りは言うことが違う。さぞ見えている世界が狭いのでしょうな」


 お互い笑っているが室内には言外の圧が満ちている。

 外にまで漏れているのか、部屋の前を通る者は皆一様に扉を避けるように通過していく。

 そうして他者には迷惑な圧のかけ合いが続くこと数分。

 お互い時間を持て余しているわけではないので、挨拶もそこそこに本題に入る。


「さて、剪拿会長。今回のイベントでの狙いは無事達成できたと認識していいのですか?」


「十分だと断言できる。先ほどの招来現象はそちらも確認した通りで、今回も預言は成就された」


 石片に刻まれた文字が嵐斬に見えるよう、大樹がそっと机に置く。

 そこにはこう記されていた。



 天を衝く火は深き森の先触れである。

 森の主が招いた一人は果実を食み、枯れた器へと明かりは注がれた。

 血を辿れ、世界を巡れ。

 汝は彩る巫覡であるがゆえ。



 石に彫られた抽象的な文章。

 嵐斬はこのイベントに来ることになった要因を思い起こし、眼前の老人へと問い掛ける。


「いつから今日の事態になるよう仕掛けを?」


「仕掛けとは浅慮な。いったい何を確かめたいのかね」


「たまたま出場選手がチケットをあげた者が例の一族で、たまたま選手が預言と同じ試合運びをして、たまたまその試合を見た一族の者が招来現象を起こすと?」


 今回のイベントに嵐斬は作為的なものを感じ調べたところ、関係者に眼前の老人の名前を見つけたのだ。

 コンクエスト社と暗闘繰り広げる、()()()()に席を置く老人の名前を。


「いやそもそも、彼が学園と接点を持ったきっかけは……」


 そこまで言った嵐斬を見て、大樹はいたずらが成功したような妙に幼い笑顔を一瞬覗かせる。

 嵐斬は全て察した。

 そして戻り次第、社員の洗い出しを急務で実施することを決意する。


「まったく、ユートピアなどという寝言に騙されるとは」


「奪うことが好きでも得意でもない、善良な人間を責めるのは筋違いというものだよ」


 ちょくちょくお互いに仕掛けながら会話を進めていく2人。


「さて、君も感づいているだろうが王の降臨がいよいよ現実的なものになっている」


「結社のお墨付きをいただけるのはありがたい。うちも競会もそこら辺はいまいちですから」


 王の降臨。

 それは何を意味するのか。



「剪拿会長、改めてお伺いしますが本当に()()()()()()()()()()()()などが可能だと思っているのですか?」


「可能だとも。そして旧き秩序を祓い、新世界到来の笛を鳴らすことが我らに課された責務」


「馬鹿馬鹿しい。伝承にある王ならまだしも、実態はその王の意思が消えつつある巨大なエネルギーに過ぎない」


「だからその力だけ奪い自分たちのものにしようと? いかにも征座の人間らしい考えだ」


 歩み寄りなど不可能なことはお互い分かり切っていた。

 道が交わる箇所はあれど、その終着点は両極に位置しているのだから。



「そちらの気遣いは感謝する。王の降臨まではこちらも協力の意思はあるのでな」


「お互いその認識で助かりました。まぁ陰ながらの協力ですがその時まではどうぞよろしく」


 いざその時が来れば殺し合う関係だが、今はまだその時ではない。


「では今回はこれまでだな。また何か動きがあれば連絡しよう」


「おや、何か急用でも?」


「そちらや競会と違ってこちらは小さな寄り合い所帯なのでな。余裕などないのだよ」


 どの口が言ってるんだこの爺と内心毒づく嵐斬。

 今回は見事に掌の上で転がされたため、口に出すことはしない。


「今回は勉強させていただきましたよ。流石は最高幹部の1人、庭師の名を持つ方だとね」


「征願部隊1番隊の隊長殿にそう言ってもらえるとは光栄だ」


 別れの挨拶は必要なかった。

 バトルワールド業界にてトップクラスの影響力を持つ企業、コンクエスト。

 様々な事態に対応するための精鋭たちを束ねた征願部隊、その1番隊を率いるは征座 嵐斬。

 無数の信奉者が転じ各地に潜在的な構成員を抱える秘密結社、祓い笛。

 結社が有する預言を課された十の席からなる十警蹕(じっけいひつ)、その庭師の称号を持つ剪拿 大樹。

 バトルワールドの暗部でその名が恐れられる2人。

 イベントの盛況さに紛れるように両者は別れ、今日この場であっていたことを知る者は当事者たち以外に存在しない。



 ドームを貸し切った合同イベント、ポップフェスタはこうして盛況のうちに幕を閉じた。

 新たなプレイヤーの誕生も暗部の企みも、全てを覆い隠しながら。

 


カードとプレイヤーを巡り合わせるという噂の招来現象。

元より不可思議なことが付き物のバトルワールドですが、この現象の観測事例はその中でも極めて少ないとされています。

発生時には謎の発光が起き、いずこからプレイヤーの元へ招かれるようにカードが出現すると言われています。

人為的な発生の研究も進められていますが、現在まで成功した報告はありません。


カードは拾った。



招来現象の観測事例


・カードパックを開封している際に発生を確認

(観測事例の中では最多。発生源のプレイヤーはいずれもその年に好成績を残している)


・プレイヤーの修行中に発生を確認

(巨岩を割る、滝を裂く、猛獣を仕留めるなど)


・バトル中に発生を確認

(既存のカードが未知のカードに書き換わる事例は派生現象として定義)


・■■■■■■■■■■にて発生を確認

(改訂レベル2以上を付与された職員のみ閲覧可能)



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