第7章 : 教室へ戻る(第1部)
セザール:雷の力を隠し持つ者
カフェテリアの喧騒は少しずつ静まり返り、テーブルが一つ、また一つと空いていく。皆がそれぞれの授業へと向かい、俺たちもまた、その流れに従った。
「もうすぐ授業の時間だ」と、俺は口にした。
「あんたがそんなこと言うなんて、皮肉ね」とアリアナが笑う。
「行こう!」とジャンナが声を上げ、 「了解」とゲオが続いた。
俺は彼らの後に続いた。 廊下は次第に静寂に包まれ、俺たちはちょうど時間通りに教室に到着した。
今回の授業は**「言語論理学」**だ。
俺たちは離れた席に座った。ジューンとアルテミサはすでに席に着いており、他の生徒たちも慌ただしく準備を整えていた。
名前のない教授がやってきた。誰もその名前を思い出せず、そもそも重要ですらないような、影の薄い人物だ。彼は口を開いた。
「言語とは抽象的思考の形態である。言語なくして、思考に形は宿らない」
「知恵とは、単なる記憶の相関関係に過ぎない。思い出すことができるなら、それはすでに『知恵』を手にしているということだ」
「言語とは組織化された情報の宇宙であり、現実のメタ形態であるが、現実そのものからは欠落している」
「最初の対象が、それに続くものに先行する(それらに形を与えるのだ)」
「言語の最初の形態は『意志』であり、それは自然の摂理によって万物に先行する」
(教授の声が乱れ始めた。まるで、その言葉によって自身のソースコードが露出してしまったバグのように)
「点Aから点Bの間の統計的モデルは、その間に無限の点を生成する。これは意識のシミュレーション、あるいは根源的欲求の失敗した反復として知られている。点AとBの間には無限の点があり、それぞれがBまたはAに接近する。この二点間には一画層(次元)が存在する。点Cを加えれば二次元となり、点Dを加えれば無限の次元となる。各点は一つの知恵であり、各知恵は知識の変曲点である。その間にあるものこそが、我々が思考と呼ぶもの、自らの中に探求する正解なのだ。そこには正しい交響曲、正しい芸術、正しい動きが存在する。だが、正解を見つけるためには、まず点AからBの間の各点を航行しなければならない。人間の意識とは、あらゆるものに適用可能な統計的モデルとして機能し、解釈され、圧縮され、情報の波として再解釈されるのだ……」
「先生!」
「先生!」
(教授はトランス状態から我に返った)
「もう、そんな話はやめてください。授業をやるんですか、やらないんですか?」 生徒の一人、どこにでもいる平凡な少年、ジェームスが声を上げた。
「……すまない、諸君。気分が優れない。今日はここまでにしよう」 言語論理学の教授はそう言い残した。
(これは『ヴェレディクト』のバグだ。間違いない)
終業のチャイムが予定より早く鳴り響いた。 その後、教授は廊下で倒れた。 だが、俺は見てしまった。他の教師たちがまるで共謀していたかのように準備万端で現れ、彼を教員室へと運び去るのを。あるいは、そう見えただけだろうか。
(確信した。あの教師たちは、見たままの存在じゃない)
放課後、俺たちは出口で集まった。
「なあ、誰か気づかなかったか? 教師たちの様子が変だっただろ」
「セザール、またその話? 本当にしつこいわね」 ジューンの冷ややかな言葉が突き刺さる。
「……いや、言ってみただけだ」
「よし、みんな。今日はゆっくり休みたいんだ。各自、解散にしよう。じゃあな」
(皆がそれぞれの家路につく)
「じゃあな、アリアナ。じゃあな、ジャンナ。ジューン、アルテミサ、またな……」
(束の間の別れの言葉が響く)
「ゲオ、家まで送ってもいいか?」
「何言ってんだ、セザール?」ゲオが不思議そうに聞き返した。
「悪い、迷惑だったらいいんだ。ただ、昔からの友人だと思って……」
「わかったよ、セザール。俺の家族の前で行儀よくするなら問題ない。来いよ」ゲオは承諾した。「家に着いたら、PlayStation 1で何か遊ぶか?」
「ああ、『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(SOTN)』をやりたいな」俺は少しの懐かしさを込めて答えた。
「いいぜ。俺はもう達成率300%でクリアしてるから、一晩中やってても構わないぞ」 ゲオは友好的に笑った。
「ゲオ、お前は何をするんだ?」
「お前がプレイするのを見てるよ。食事して、一晩ゆっくり休むさ。女の子たちと過ごすのは、めちゃくちゃ疲れるからな。信じられるか? ジューンの奴、俺に料理をさせたんだぜ」
「いつものことだろ。あいつらはみんな、怠け者だからな」俺は返した。
(笑い声)
「ジューンに聞かれないようにしろよ。最近、あいつは機嫌が悪いんだから」
歩いていると、白いユリが咲き乱れる大きな庭のある家の前を通った。その家は完全に放置され、荒れ果てていた。
(現実のバグが視界を侵食する。その家で起きていた何千もの出来事が、一瞬だけ脳裏をよぎった)
「何でだろうな、ここを通るたびに少し懐かしい気分になるんだ。まるで、ここに友達が住んでいたのに、それを忘れてしまったような……」ゲオが少し恥ずかしそうに言った。
(「誰か」は、確かにそこにいた)
「セザール、お前もそう感じないか?」ゲオが詰め寄る。
「……ああ。実際、そこには誰かが住んでいた」
「誰だよ?」ゲオが問いかける。
「お前の親友の、エミリーだ……」
「誰? アハハ、またセザールの変な話が始まったよ。まあいい、お前のノリに付き合ってやるよ」
「親友の他に何を知ってるんだ? なんで今は住んでないんだ? 引っ越して、俺たちが忘れちまったのか?」ゲオはしつこく問い続けた。
「ヴェレディクトが彼女を『サーバー』から除去したんだ。エラーを多発させていたから……」
「おお、そりゃすごいな。俺の家ではその話、続けないでくれよ……アハハ、恥ずかしいのを通り越して面白くなってきたぜ」ゲオは茶化した。
(ゲオの家に到着する)
(典型的な西洋風の平屋。広々としていて、部屋がいくつもあり、庭にはあらゆる種類の異国情緒あふれる植物が植えられ、家の中には猫たちが散らばっている)
(ゲオが鍵でドアを開ける)
玄関を入ると、多様な植物が入り口を彩っていた。パッションフルーツの蔓が屋根のように覆い、緑や黄色の実が飾りのようにぶら下がっている。
一匹の雌猫がゲオを出迎えた。
「おっ! マグノリア、俺のお気に入りの猫ちゃん、元気だったか?」
ゲオが猫と戯れている間、俺は家の植物を観察した。 (普通じゃない) (種類が多すぎる。まるで、何かの執着のようだ)
家の中に入ると、母親の声が響いた。
「帰ったの、息子よ?」 ゲオの母親、尊敬すべきエディリア夫人が姿を現した。
「ただいま、母さん!」
「昨日は帰らなかったわね。何をしていたの?」母親が問い詰める。
「女の子たちの家だよ。ジューンの家だ」
「セザールも一緒だったの?」エディリア夫人が俺を見た。
「いいえ、エディリアさん。ゲオは何か問題でも?」
「いいえ、ちっとも。あの子も大人になってきたのね。父親と相談しなきゃ。もうすぐ私の息子も立派な男になるわ」 ゲオの母親は、希望と誇りに満ちた目でそう言った。
「母さん、セザールを泊めてもいい? もう子供じゃないけど……」ゲオが言った。
(遮るように)
「もちろんよ。セザールさんなら、いつでも歓迎よ。ただ、あまり騒がないようにね」 そう言って、エディリアさんは念を押した。
(ゲオは少し興奮気味に、俺を二階の自分の部屋へ案内し、荷物を置いた)
(エディリアさんが二人に食事を運び、食べ終わる頃には特別なアイスクリームを持ってきた。それは、決して再現できないような不思議な味だった)
俺は座って『月下の夜想曲』をプレイし始めた。
(古い時代を思い出していた) (だが、それと同時に別の「古い時代」も思い出していた。戦いに明け暮れ、力が渦巻き、神々が互いに一歩も退かずに戦っていた日々を)
(これは未来なのか、それとも過去なのか?)
「ああっ、もう! また負けた。このゲーム、難しすぎるだろ」
「ハハハ! お前、初心者だな」 俺が何度もゲームオーバーになるのを見て、ゲオが楽しそうに笑った。
夜が近づき、熱気が増していく。
(永遠の夏)
「夜、寝る前にシャワーを借りてもいいか?」
「ああ、いつでも使えよ」 ゲオはベッドに横たわり、眠りにつく直前の虚ろな目で答えた。
「セザール……本当にお前の夢の中に、あの青い瞳の女の子が現れたのか?」
「ああ、ゲオ……確かに見たんだ」
(「クリスタル」)
「名前を知りたいか?」
(ゲオは完全に眠りに落ちていた)
「やれやれ、疲れてるんだな」
俺も眠る準備をすることにした。
(熱気が凄まじい) (俺はシャワーを浴びに向かった)
(鈴虫の声、蛙の合唱。比較的静かな夜が訪れていた) (水の音だけが絶え間なく響き、滴る水の冷たさが体を癒やしてくれた)
(着替えを済ませて脱衣所を出ると、ゲオの母親が俺のために布団と毛布を部屋に用意してくれていた)
(一階からはゲオの父親の声が聞こえてくる) (廊下を渡り、ゲオの部屋に入る)
布団の横には、チーズトーストが二切れと、クリスタルグラスに入ったマンゴージュースが置いてあった。 グラスを手に取った瞬間、その反射の中に、暗闇に浮かぶ青い瞳の幽霊が見えた。
(すぐさま振り返る)
(そこには何もなかった) (俺の手から、小さな火花が散った)
「……見たものを気にするのはよそう。俺も寝るんだ」
(トーストを食べ、マンゴージュースを飲み干した) 俺は布団に潜り込み、横になった。
扇風機が部屋の空気を何度も何度も循環させ、少しでも涼しくしようと回っている。
(永遠の夏) (俺は眠りについた) (そして、夢が始まった)
夜中に目が覚めた。
(そこは完全に、夢のような場所だった) (ゲオはまだ眠っている) (光に溢れていたはずの街は、今や完全な暗闇に沈んでいた)
(永遠の夏の熱気は消え去り、別の宇宙から来たかのような凍てつく寒さに変わっていた)
「……寒い。この気温に耐えられる服じゃないぞ」
「この寒さはどこから来てるんだ? 電気も消えてる……停電か?」
(ゲオを起こそうとしたが、無駄だった。……時間がない。この寒さが続けば病気になってしまう)
(寒さの源を突き止めなければならない) (永遠の夏が止まったのだ)
暗闇の家の中を歩く。ゲオの両親の気配はどこにもない。 階段を降りると、家の裏手から強い光が漏れているのが見えた。
覗き込むと、半分に砕けた柱の先端に、青い瞳の幽霊が立っていた。
(ドアはナイフで開けられるはずだ。あいつ、鍵をかけてなかったからな)
台所に何かナイフがあるはずだ。 (何かが光った) (フォークだ)
「……構わない、これで十分だ」
カラン! (大きな音が響く) (ドアが開いた)
「よし! 開いたぞ!」
俺は足を引きずりながら歩いた。寒さは周囲の環境から来ているようだったが、実際は違った。 その寒さは、青い瞳を持つあの影から放たれていたのだ。
(氷のような、死の寒さ)
「お前は誰だ?」
「……私はクリスタル」
「何用だ、旧知の仲よ」
「セザール……奴らがお前を狙っている」
「誰が?」
「お前が目覚めたことに、奴らは気づいた……」
「……そうなるだろうとは思っていたが、本当だったか。だが、誰が、どんな目的で俺を追ってくる?」
「お前を殺そうとしている……ゲオを守って……」
(幽霊は氷の風と共に消え去った) (クリスタルのハートが一つ、庭の地面に落ちて輝きを放っていた)
俺は幽霊が残したものを確かめるために近づき、それを手に取った。
(クリスタルのハート)
(「目覚めろ!」)
(荒い呼吸) (永遠の夏の熱気)
「……頭が痛い。体が重い……」
手の中のクリスタルのハートを探したが、そこには何もなかった。あのクリスタルのハートは庭に落ちたはずだ。
(街には明かりが灯り、停電はしていなかった)
階段を降り、一階の裏庭へと向かう。 (裏庭のドアが開いていた)
そして、あの氷の夢の中でフォークを置いた場所には、代わりにナイフが置いてあった。
「おかしいな、ドアが開いてるなんて……偶然か?」
(裏庭を覗くと、密集した植物の間で何かがかすかに光った) (近づいて、それを手に取る)
俺の手の中には、微かな光を放つプラスチックのハートがあった。夢で見たものと瓜二つの形だ。
何が起きたんだ? まるで現実と夢が融合してしまったかのようだ……。 あるいは、この場所での夢は、単なる「夢」ではないのか?
顔を上げると、隣家の屋根の上に二つの不気味な人影が立っていた。
(瞬時に、彼らの殺意を感じ取った) (本能的に雷の力が応え、俺の手から電気の火花が激しく飛び散った)
(明らかだった。あの二人は、友達になりに来たわけではない)
今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
まず最初に、更新が大幅に遅れてしまったことを深くお詫び申し上げます。続きを楽しみにしてくださっていた皆様、本当にお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。
お待たせして本当に、本当にすみません。何度も更新が止まってしまい、読者の皆様には合わせる顔がありません。
遅くなってしまったこと、重ねてお詫び申し上げます。本当に、本当に申し訳ございませんでした。
今後はもっとスムーズに更新できるよう、精一杯頑張ります。これからもセザールたちの物語を温かく見守っていただければ幸いです。
本当に、本当にすみませんでした!次回もよろしくお願いします。




