第16章 : 聖なる杖は何をするのか?(第1部)
ブライアン: 本名 セサル。聖なる杖の泥棒。
聖なる杖の奪還に成功した。
「別の宇宙の亡霊が私を助けてくれた」
狂ったように通りを駆け抜ける。狂気に満ちた天使たちが追ってくるのではないかという恐怖が心にある。
「だが、何も起こらなかった」
ビルの間、共有住宅の通路をすり抜ける。猛スピードで走りながら新聞紙が視界を埋め尽くす。浮浪者を探したが、いくら探しても一人も現れない。
「どこだ、どこにいる?」 問いが頭の中で響く。
「あの忌々しい杖を手に入れたんだぞ」
「この杖のために、槍と雷で首をはねられそうになったんだ」
「探しに探し回ったが、浮浪者たちは一人もいなかった」
「一体どこへ消えやがった、このクズ野郎どもは!」(ヤクザ風の口調)
「杖を持ってきてやったんだ、どこにいんだよ!」(ヤクザ風の口調)
「新聞紙が目の前で舞い上がる」
「誰も姿を現さない」
「あの野郎ども、俺を見捨てやがったな」
「死んでたかもしれないんだぞ…」
「もし死んでいたら、俺はどこに行き着いたんだろうか?」
ようやく、浮浪者たちの最後の隠れ家にたどり着いた。そこで俺は新しい名前を授けられたのだ。
「ブライアン」 俺の偽名だ。
場所は完全に空っぽだった。浮浪者は一人もおらず、完全な孤独。
「言いようのない孤独が私を襲った」
「クリスタルがそばにいてくれたら」 それだけが思考から浮かび上がった。
床に座り込む。夜明けが私に挨拶する。未開封の“魔法の”ボトルが床に転がっていた。
(それを手に取る)
そして、飲み干した…
「忌々しい夜明けが私に挨拶する」
「ここで待つことにしよう」
「行く場所なんてない、どうでもいい」
「いつか司祭や、あの魔法を使う教授の一人にでも出くわすのではないかと考えるだけで十分だ」
「もう何も考えたくない」
(頭痛)
「窓から日が差し込み、腐った布が風に揺れている」
「ついに一筋の光が、私の青い瞳に届いた」
「飲んでいるボトルに自分の反射が見える。太陽の光を浴びて、青い瞳がネオンカラーに変わっていく」
「クリスタル…」 「私は彼女ほど強くも、大胆でもない」
「彼女は一人で三体の天使に立ち向かったが、私は一体にさえ敵わなかった」
「私は怠惰すぎた。マザー・サターンのあの日をまだ覚えている」
(点滅する光と、宇宙の虚無の中で消えていく数百の命の記憶)
「彼女の腕に食い込む軋む鎖、浮き出た血管、揺るぎない構え。自分を押し潰そうとする者を凌駕しようとする、悪魔のような形相」
「マザー・サターンの大反乱…」
「彼女の魂は最も過酷で強力な炎の中で鍛えられた。それでも彼女の刃は鈍ることも折れることもなく、ただ彼女を致命的な存在へと変えた」
(“魔法の”ボトルを一口飲む)
「彼女の意志は何でできているんだ?」
「なぜ彼女は決して諦めなかったのか?」
「自分に敵対する現実そのものに挑む、あの女の頭の中には何があったんだ?」
過去を考えるのはもうやめよう…
ここでは彼女は亡霊だ。だが、もし我々が皆死んでいるのなら、我々の魂は煉獄で眠りについているはずだ。
それなのに、彼女の力はこれほど遠くまで届く。
「亡霊の姿で」
プロジェクト・クロノス… 彼女はそれを動かす歯車だった。
「私はいつも彼女を過小評価していた…」
「彼女のことを正しく知ろうとはしなかった」
「彼女を直接のライバルだと思い込み… 彼女が成功すれば自分が取って代わられると信じていた」
「決してそうではなかったのに」
「私は常に特別扱いされていた。彼女はそれを変えることはできなかった」
「それなのに、彼女はこのあの世まで、私の魂の残骸を救いに来た」
「彼女は生きていて、私は死んでいる」
「生者の世界はどうなっているんだろうか?」
「彼女は無事なのだろうか?」
忘れかけていた。激しい敵同士だった時でさえ、彼女は私の命を救ってくれた。
「彼女は私の中に何かを見たのか?」 それは何だったのか…?
(再び“魔法の”ボトルを飲む)
そして今、またしても彼女に救われた…
「あの司祭は、何かを神に送るとか言っていたな」
正確に何を意味していたのか思い出せない…
(窓のカーテンが風に揺れ、それに合わせて光が動く)
(窓越しにセサルのシルエットが見える)
(彼は壁に背を預けて座り、ボトルを手に取り、思考が次々と押し寄せる)
…
…
…
腹が減った…
(太陽は昇り続ける)
床に食べ物の残骸があるが、そんなものは絶対に食べない…
(魔法のボトルが床に触れる)
疲れ果てた…
この孤独で、壊れかけ、私一人のために広すぎる部屋の至る所に日光が入り込む。
「風が私の顔を撫でる。浄化の過程で迷い込んだ魂の休息」
(ブライアンは眠りに落ちた)
…
…
…
夜になりかけの夕暮れ時に目が覚めた。
誰も来なかった…
この馬鹿げた“聖なる”杖と共に、俺は一人残された。
「見捨てられた」
「これは裏切りに近い」
「裏切り者のネズミどもめ」
このゴミのような杖のために全てを捧げたというのに、よくも俺を見捨てやがったな…
少しずつ、この杖が嫌いになってきた。
予告もなく夜が来た。今日はここで寝て、明日外に出て運を天に任せることにしよう…
腹が減った… 体が弱い。床でこのまま休み続けることにする。
「もう魔法のボトルはいらない」
また眠ることにしよう…
…
…
…
(翌日の朝)
また同じ一日が始まる… 夜明けが再び挨拶し、風が窓から吹き込み、古い腐った布のカーテンが再びあちこちで揺れている。
いつものように新聞紙が風に舞っている。
(セサルは床に倒れ、動かず、生気がない)
「この場所が嫌いだ…」
疲れ果てた… 腹が減った…
立ち上がれるだろうか?
どうでもいい、もう少し休もう…
再び太陽の光が、生きている実感を味わせるように私に挨拶する。
傷んだ木の板が太陽で温まっていく。
「私は疲れ、光、そして息子を愛する母親のように私を撫でる風の虜になった」
(足音が部屋に静かに響く)
「足音が聞こえる… 幻聴に違いない」
(ゆっくりと、少しずつ足音がブライアンに近づく。謎の人物が彼をじっと観察している)
「誰かが私を支えようとしている」
「おい、押すのをやめろ!」
ー「ブライアン? お前なのか! 生きていたのか! 死んだものだと思っていたぞ」
「死んだと決めつけるのが早すぎるな…」
「視線を向けると、そこにいたのはアドリアンだった」
ー「おい、悪く思うな。ちょっと待て… 壁にあるその杖は、お前のものか?」
「ああ、俺のものだ。前は司祭たちのものだったが、今は“俺”のものだ」
ー「まさか盗み出したのか! 閣下チョーがお前とその杖を見たら、狂喜乱舞するぞ」
「この杖は俺のものだ」
ー「おい、けちけちするな。それが何をするのかさえ知らないんだろ」
「助けてくれるのか、それとも何だ、“見知らぬ浮浪者”さんよ?」
ー「もちろんだとも。さあ、第二の秘密の隠れ家へ行こう。全員集まっている。その杖を持って現れたら、何ヶ月も続くようなパーティーが始まるぞ」
「その杖は何をするんだ?」
ー「すぐに分かる。自分の目で見るのが一番だ」
「アドリアンは精一杯私を床から抱え起こした」
「廃墟の部屋を出るために歩くのがやっとだった」
「我々は共有通路へと向かう」
「それで、杖が何をするのか教えてくれるんだろうな?」
「我々の足取りは覚束なく、通路に響く」
ー「坊主、お前はかなりせっかちというか、無礼だと言われないか?」
「杖が何をするのか教えてくれるのか?」
ー「ああ、全くだ! 岩のように頑固な奴だ!」
(ネズミや害虫が溢れる場所をしばらく歩いた後、空っぽの部屋に到着した)
(部屋の奥には壁に絨毯が貼られていた。明らかに不自然な場所だった)
「秘密の扉」
「まさか、秘密の部屋がこの部屋の、絨毯のすぐ後ろにあるなんて言わないよな? あまりに安直じゃないか? もう少し創造力を働かせて隠れ家を作ったらどうなんだ?」
ー「ハハ! 坊主、お前はまだ新人だな」
「トイレの中か?」
ー「違う」
「床の下か!」
ー「それも違うぞ、坊主」
「じゃあ、どこだ?」
ー「まあ、トイレに行けば分かるさ」
「やっぱりトイレじゃないか!」
「トイレに着いたが、何もなかった」
奇妙なことに、トイレは非常に清潔だった…
「何もないじゃないか、クソジジイ。アドリアン、ふざけるのはやめて杖の機能を教えろ」
ー「レバーを引け、ブライアン」
「何だと? だが俺は何も(用を)足してないぞ」
ー「レバーを引くんだ、ブライアン」
「足してないと言ってるだろうが…」
ー「レバーを引けと言ってるんだ、坊主!」
「ああ、分かったよ、分かった。全く… トイレは綺麗で完璧な状態なのに、なぜレバーを引かせるんだ」
(レバーを引く)
(配管を水が流れる音)
「外に出て、杖の機能を言わないアドリアンに一発食らわせてやる」
「外に出ると、天井から折りたたみ式の梯子が出ているのに気づいた」
「一体どうやったんだ?」
ー「レバーを引けと言っただろう」
ー「秘密の部屋に行こう。皆、お前の帰還を喜ぶぞ」
「行こう。杖が何をするのか、教えてもらわないとな」
梯子を登り終えると、エチルの証人たちが私を迎えてくれた。
「屋上だ」
浮浪者たちの間を歩き、閣下チョーの元へたどり着いた。
「二度目に見た時、フレイアネが私を見つめているのに気づいた」
「彼女は私に気づいていた」
「杖を盗むなんて狂っていると思っているだろう」
ー「生きている! 生きていたな、ブライアン! そして聖なる杖を持ち帰ったか!」 チョーが歓喜の声を上げた。
「この杖は何をするのか、教えてくれるか?」
ー「もちろんだ。その杖を私に渡しなさい」閣下チョーが要求する。
「何をするか、教えてくれるんだよな?」
ー「もちろんだとも、ただ杖を渡せばいい」
「分かった、受け取れ」
(聖なる杖を渡した)
チョーは聖なる杖を見て、頬を赤らめた。
ー「なんと喜ばしいことか」
ー「アドリアン、あの日手に入れた特別なボトルを私に」チョーが言う。
ー「特別な赤いボトル、おまちどうさま!」アドリアンが答える。
「あのボトルは、俺がアドリアンと初めて会った時に盗んだものだ」
「この野郎、自分の手柄にしやがった」
ー「聖なる杖には、聖なるボトルを」
「もういい加減にしてくれ… あの忌々しい杖は何をするんだ!」 「杖が何かすると言ってくれ!」
「もし、この浮浪者たちのために無駄に二度目の命を懸けたのなら、頭が痛くなるぞ」
(チョーは“聖なる”赤いボトルと、聖なる杖を手に取った)
(ボトルの内容物を流し、聖なる杖を完全に浸した)
(床一面が赤ワインで満たされた)
「魔法だ! 本物の魔法だ、新人!」アドリアンが叫んだ。
「杖の準備が整った」閣下チョーが言った。「私に数本のボトルを。聖なる杖を試すのだ」
(フレイアネがボトルを一本持って近づいた)
杖を手に取ると、その力が閣下チョーに作用し始めた。新しい種類の“評価”が彼の中に流れ込んでいるようだった。彼の瞳は白に近い金色に変わっていった。
チョーはゆっくりと宙に浮き始め、場所が激しく震えた。テーブルやボトルが猛烈に転がった。
「なんて力だ!」
「これこそが本物の魔法だ」
「あの物体の力に耐えられそうにない」
ー「呪文を間違えた!」チョーが言った。
「杖の力が突然止まった」
(私は床に叩きつけられ、他の物も次々と落ちた)
ー「すまない皆! 杖を振るうのは久しぶりなのだ。今度は間違えない」閣下チョーが説明した。
(チョーは、原初の大きな力を放ちながら浮遊する杖を再び手に取った)
杖は、あらかじめフレイアネが床に置いていたボトルを、ある種の繊細さで叩いた。
「目も眩むような光の閃光」
もともとボトルが一本あった場所に、今は二本の“魔法の”ボトルがあった。
「ボトルを複製したのか?」
ー「そうだ、新人! その通りだ。魔法だと言っただろう、魔法だ!」
「なぜサンドイッチを複製しないんだ、腹が減ってるんだよ!」
ー「セサルと浮浪者たち(エチルの証人)編 完」ー
まず何よりも。
多大なる遅延が生じてしまったことを、重ねて深くお詫び申し上げます。
心より、深く反省しております。
急ぎ足ではありましたが、多大なる愛を込めてこの章を執筆いたしました。
私は皆様のことを忘れたことはありませんし、これからも決して忘れることはありません。
現在、オリジナル作品『8人の預言者』の漫画版第0話について、16ページ目まで描き進めていることをご報告いたします。
当該話のネーム(下書き)は全て出し終えており、全37ページの構成となっております。これは、初公開に必要な作業の約5割を完了したことを意味します。
40ページの大台まで残り3ページとなりました。これらの最後のページは、表紙、中表紙、そしてこの旅路を静かに共にしてくださった皆様への最善の願いを込めた後書きに充てる予定です。
感想をくださった皆様のことも、決して忘れてはおりません。
私は異邦人であり、謙虚でありたいと願っておりますが、皆様の作法、礼儀、伝統を正しく理解できているわけではありません。迷惑をかけぬよう言葉を選ぼうとする子供のような心境です。
コメントをくださった方々にどのようにお言及すべきか作法が分からぬため、ここでは簡潔に記させていただきます。
「ライトノベルに感想をくださった皆様に、無限の感謝を捧げます」
無知ゆえの礼失いや非礼によって、誰かを傷つけたり、晒したりすることは本意ではありません。
学ぶべきことは山ほどありますが、過酷な道へと突き動かされ、あるいは打ちのめされた歩行者にとって、その先は常に未知の領域です。
「砂漠を巡礼する預言者の義務は、孤独な歩みを止めることなく進むことにある。なぜなら、真に共に歩んでくださるのは神のみだからだ」
「荷が重すぎれば、他の者たちは去っていくだろう」
ですから、読んでくださる皆様に心から感謝いたします。一回一回の閲覧が私にとってどれほどの価値があるか、計り知れません。
皆様は、私にとって非常に大切な存在です。
「幸せになり、そして増え広がりなさい」
次の祈りの中でお会いしましょう。




