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42話 放課後ダンジョン探索

翌朝、1組の教室では懇親会でお互いを知り、仲を深める事が出来た7人の談笑する姿があった。

今は2つのグループに分かれて話をしている。

やはりポジションが同じだと話が合うのか見事に前衛と後衛で分かれている。


「でしたらパーティーは3人で組むのですか?」


片方はエリーゼ、カミラ、レイラの3人で今後のパーティー編成などについて話している。


「ええ、そうですわ。

 本当ならファーレン達と6人で組む予定だったのですが、あの3人は3種になってしまいましたから。

 授業の進みなんかも違いそうですから、休みの日以外は大体3人で組みますわ」

「アタシはルイスと組むし、レイラはユリスとよね?」

「ええ、しばらくは2人で組んで修行をつけてもらう事になっています」

「あのユリスの修行って…レイラとの差がどんどん開いていきそうで怖いわね。

 私も勉強を進めてバリエーションを増やさないとね」

「そうですわね…置いていかれないためにも努力は必要ですわ。わたくしも牽制か手数を増やす方法を考えませんと…いえ、まずは魔法の行動発動の練習ですわね!」


一方で、残りのアーリア、サミュ、ルイスの3人は強くなるための秘訣をユリスの話から学び取ろうとしている。


「そうか…やっぱ魔力操作を鍛えるのは必須か」

「必須とまでは言わないけど、魔術を併用するなら鍛えておいた方がいいのは事実だね。

 それに、スキルがなくてもある程度までは鍛えられるし、既に持っているスキルによってはその幅を思いつくままに広げる事が出来るから楽しいよ?」


(奥義もそうやって色々試してる時に出来たしな)


「スキルの幅を広げるですか〜?」

「ああ、ルイスとサミュは属性を纏うスキルを使っているでしょ?

 簡単なところだと、纏っている風や雷を放出したり、一箇所に集めて威力を高めたりとかかな」

「なるほどな…

 確かに剣を振りながら遠距離に即応できるのはでかいな」

「私も魔法ってあまり好きではなかったので〜

 発動準備の時間なしで遠距離攻撃が出来るようになるのは、ちょうどいいかもしれません〜」

「私は?」

「アーリアは確か水属性変換だけなんだよな…

 うーん…水を薄く凝縮して振るえば普通に刃物と同じ感じになるし、短剣を一時的に長くするとかは出来そうだよな。打撃でよければ薄くする必要もないし振った時に放出すれば飛ぶ斬撃にもなりそうだ」

「がうがう…それは便利そう」


そんな感じで談笑している内に教師が入ってきて授業が始まる。

内容は1年のカリキュラムや学園内施設の利用方法、規則などであった。特筆するとしたら学園の目玉である生成ダンジョンや行事の説明があった事だろう。

どうやらユリスの提供した構築盤の一部は学園に渡されたようで、今年から中級と上級が実装された事を説明される。


(騎士団でも危ないのに学園生に上級がクリア出来るのか?当分は生徒全員が中級に群がりそうな気がするが…)


案の定、利用者の集中で混乱をきたさないようにするために半年間は上級生のみの利用となるようだ。

それ以降は利用できるが、1、2年生は1日1回の回数制限がつくとのこと。

そして構築盤についても説明があったが、やはりメダルを嵌め込む位置ごとの意味については解明されていないようだ。

嵌めたメダルはボス部屋の装置から回収する様になっているらしい。というか外さないと帰還装置が作動しないように設定されてあるそうだ。

ちなみに、途中でパーティーが全滅した場合は最後に転送された人の周囲にばら撒かれるようになっている。


(つまり、周囲の人に全滅した事がバレてしまうわけだ。しかも、鑑定されればどのメダルを使ったかもバレる可能性があると)


メダルそのものについては学園が資料作成のための買取をしているようで、未発見メダルなら有用度に応じて10万〜100万フォートで買い取ってもらえる。

既に発見されているものは100〜1万フォートに落ちてしまうが、気づいたら溜まっているものなので小遣い稼ぎに売る人が多いらしい。

ちなみに、未発見なら現物を鑑定させる必要はあるが情報提供だけでもいいらしい。その場合は買取額の半額が支払われる。


(まあどんな組み合わせで有用なダンジョンになるか分からないし、10個以上ダブらない限りは売るのは情報だけになるだろうな)


年間の行事では夏から秋にかけて王都全体で行われる盛大な祭り『競技会』が行われる他、冬の半ばには『品評会』という名の王城主催大規模オークションが開催されるそうだ。ちなみにちゃんと生産職の発表の場にもなっているので学園の生産科や研究所、生産系ギルドの所属員はここで評価を得ることを目標としている。


(学園主催の大規模行事は順位決定戦くらいなのか。

 前世での文化祭みたいなのはないんだな)


ユリスがイメージしているのは生徒が屋台や教室を利用した店を開くというものであるため学園行事が少ないと思っているが、実のところ競技会に参加をしない生産課の生徒が同様の事をおこなっている。

また、説明はなかったが品評会という本来の目的を押し退けてオークションが目玉となっているのは、このオークションに出品される品目の半分が王城の宝物庫にあるものである為だ。本来功績を上げた褒賞としてでしか貰えないような物だが、容量の関係でずっと溜め込むわけにもいかず、宝物庫の整理を兼ねて開催されているという経緯がある。

ちなみに最重要機密になっているが、宝物庫とは王国で唯一の空間収納機能を持つ設置型アーティファクトのことである。かなりの容量を誇ってはいるが、騎士が訓練や仕事で手に入れた物は国に所有権があり、一定期間内で買い戻さなければ保存が効くものは大体宝物庫に収納されるため、数年も経てば容量が一杯になってしまうのだ。



授業も終わり、放課後になったところで全員でダンジョン広場に向かう。

ユリス達は手に入れたメダルを早速使ってみるようだ。


「持ってるメダル全部使うとして、場所は…適当でいいよね?」


レイラの承諾を得て、円、上質、石、魔のメダルをそれぞれ6、7、8、9時の位置に嵌め込んでから生成したダンジョンに突入する。


「これで何か変化したのでしょうか?」

「分からないね…

 とりあえず進んでみようか」


周囲の見た目は昨日入った洞窟にそっくりである。

しかし、遭遇した魔物に若干の変化を見つける。ゴブリンが石の棍棒のようなものを持っていたのだ。


「おっと、道中の時点で武器持ちゴブリンか。

 ちゃんと難易度は上がっているようだね」


(これは多分『石』が影響してるんだよな…)


「そうですね、しかし強さはボス部屋にいたのとは全然違いますね。普通のゴブリンくらいです」


ユリスが変化への考察をしている内にさっさとレイラが倒してしまう。レイラの修行がメインなのでユリスも咎めるつもりはないようだが、難なく倒してしまうので修行になるかは疑問である。


「若干スライムの手応えが硬くなりましたか?」

「それは石みたいに?」

「いえ、なんか弾力があったような…?

 気のせいかもしれませんが」


(それなら、こっちは魔だろうなぁ…

 スライムだし、魔力で弾力が強くなるとかあり得そうだ。

 変化が微妙すぎて何ともいえんが…やっぱりあの本の内容は参考程度にするのがいいか)


「あ…!あれは宝箱ですね!」

「そうだね、罠も無いみたいだし開けて大丈夫だよ」

「では開けますね。これは石…ですか?」


木箱に入っていたのは、見た目ただの石である。

しかし、念のため鑑定したユリスにより魔石である事が告げられる。

魔力が内包されていない空の魔石である上、大きさは中サイズレベルは優にあるだろう。


「空の魔石(中)ですか!?

 ものすごい貴重なアイテムじゃないですか!

 普通の魔石なんか比べ物になりませんよ!」

「そうなの?

 魔力を充填してしまえば同じように思えるけど…」

「そこです!

 確かに魔力の充填さえすれば普通の魔石と同じように使えます。ですが、普通の魔石とは違って内包する魔力を全て引き出しても壊れないんです!

 つまり何度も繰り返し使えるんですよ!

 しかも充填する魔力の属性を変えれば、魔石自体の属性も変化するので上位属性の魔石も容易に作れるんです!」


(属性の要素は無いが前世の乾電池と充電池みたいな違いか?)


レイラの力説にユリスは前世の知識を引用してとりあえずの納得を見せる。ただ、今のところ通常の魔石で十分間に合っていたため今回はレイラに譲るようだ。

結局それ以外だと、レイラがゴブリンを倒した時に『棒』のメダルをドロップしたくらいで特筆するような出来事は起こらなかった。

そしてボス部屋の扉前まで到着する。


「なんか思ったより変化無いなぁ…

 やっぱメダルを全部嵌めないと変化しにくいのかな?」


道中での変化からボス戦もそこまで大きくは変わらないだろうと気楽な気持ちで扉を開ける。

…しかし、そこには全く別の存在が部屋の中央に鎮座していた。


「あれは…岩ですね?」

「岩だね。ただの地形かボスなのか…あ、いや、ボスだね。ロックゴーレムだ」


ユリスが鑑定で正体を見破った途端、岩の中心?にあった水晶のような部分が光り出し、岩がその姿を変えていく。そして5秒ほどでずんぐりとした人型が完成する。


(おお…!

 下級だから弱いのは分かっているが大きいし見た目は強そうだ。

 そうだよ、メダルもかなり種類が有りそうなんだし、やっぱこういう大きな変化がないとな)


ボスの大幅変化という事態に内心喜びながらゴーレムの動きを注視するユリス。鑑定が敵対行動となったのか、ゴーレムはユリスに向かって一歩ずつ丁寧に地面を踏み締めながら歩いて来る。


「おっそ……

 レイラ、なんでもいいからちょっと1発攻撃してみてくれる?」

「分かりました」


レイラは火の魔術で攻撃するが、ゴーレムには傷1つついた様子がない。

これまでの敵と同じならば、ダメージ量に応じて攻撃した箇所に損傷が発生するはずである。

驚くレイラではあるが、ユリスがやはりといった様子なのを見て冷静さを取り戻す。


(やっぱ魔力の総量が減ってるな。設定通りのようだ)


「もっと威力が必要なのでしょうか…?」

「いや、威力は問題ないよ。

 原因はゴーレムにある特性だからね」

「特性ですか?」

「ああ、ゴーレムには魔力を消費してダメージを無かったことにする特性があるんだ。

 ダメージ量で消費する量も変わるから肩代わりと言った方が分かりやすいかな。まあ、HPみたいなものだね」

「なら気にせずどんどん攻撃すれば良いのですね?」

「ただ倒すだけならそれで十分だね。でも…いや今回は攻撃しちゃっていいよ。

 次にゴーレムに遭遇した時、ちょっと試したい事があるからその時は何もせずにいてくれる?」


(動くだけで魔力を消耗してるし、それで倒したらドロップが変わったりするんだろうか…?

 もし変わるようなら他の魔物にも倒し方によるドロップ変化が適用されていると見るべきだし、出来るだけやり易い個体で検証しておかないとな)


「??…分かりました。

 とりあえずこのまま攻撃していきますね」

「うん。まあさっきのなら60発も当てれば倒せるけど……水晶の部分を狙い撃ち出来る?」

「1発ずつでしたら問題なく。

 複数同時だとちょっと怪しいかもしれません」

「なら2発からやってみようか」


足の遅いロックゴーレムはただの的と化し、レイラの修行が始まる。

2発命中が安定すると3発、次は4発と増えていき、5発の練習をし始めたところでゴーレムが沈んでしまった。

水晶の部分は弱点部位だったために他の場所よりもダメージの通りがよく、予定よりも早く終わってしまったようだ。

最後の1撃がゴーレムに当たった時に水晶は割れて消え、体の石が崩れてそこら中に散らばる。


「…消えないな。

 もしかしてこれがドロップアイテムなのかな?」


(石が戦利品って…)


「ゴーレムの体を構成していた石…もしかしてゴーレム石でしょうか?

 だとしたら魔道具の素材として実家で使用していたので、宜しければ頂きたいのですが…」


(へー…魔道具に使えるのか)


「別に構わないけど…どうやって持ってく?」

「あっ…」


ゴーレム石は建物などに固定するタイプの魔道具に使用されるが、なかなか集まらないためそれなりに高価な代物だ。

それもそのはずで、世の中には収納のスキルや魔道具なんて便利なものを持っている人はいないのだ。

つまり、手や荷車などで持ち帰ることになる。

実際は荷車なんて嵩張る物をダンジョンに持ち込む輩はいないため、通常の石と同等の重量がある素材などはせいぜい十数キロ分を持ち帰るのが関の山である。

だが、ここには非常識な存在が約1名存在する。


(どうしようか…

 収納を教えていいものかどうか判断つかんな)


「袋ならあるからそれに詰められる分だけ持っていくか」

「そうですね…

 こういう時皆さんどうしているのでしょうか…?」

「流石にそこまでは知らないなぁ。

 その辺は授業とかで聞いてみるといいんじゃない?

 同級生だと詳しくはないだろうし…上級生の知り合いでもいれば別だけど」


ユリスはまだ教えることはしないようだ。

レイラを好ましく思ってはいるが、まだ正式に婚約者として決まっているわけでもないからだろう。

結局は袋に入れて持てる分だけ持っていくことになり、先程から触れていなかった宝箱の方に目を向ける。

今回は2つ出現していたため、話し合いの結果、開けた方を自分のものに出来ることにしたようだ。


「今回の中身は何でしょうね?」

「それじゃあ開けようか…ふむ、魔鉱石?」

「私の方はメダルです。

 それにしても魔鉱石ですか。ナイフなら大丈夫そうですが、それ以外だと足りなさそうですね」


(欲しいのは剣だし、少なくともあと5個はないと厳しそうだよな)


「そうだね。職人に知り合いはいるし、自分でも作れない事はないから数を集めておきたいね。

 今はロクな武器がなくて素手で戦っている程だし」

「ロックゴーレムの出てくるレシピは分かりましたし、今後もこのダンジョンに潜りますか?」

「そうしてもらえると有難いかな。

 今日は後2回が限度だろうけど、道中を短くできれば1日に4回は潜れそうだし、内1回はこのレシピにしたいね。

 ああ、そのメダルも鑑定して…“鉱石”?」


(まさかの鉱石問題解決か…?

 いや、まだ入手量も分かっていない状態だし早計か)


「えっ!?鉱石のメダルですか!?

 まさか、鉱石が手に入るダンジョンが出来る…?」

「可能性はある。ちょっと色々な配置で試してみようか。手に入る量によってはレシピも売れるかも」


こんなところで鉱石問題の解決の糸口になりそうなアイテムが見つかってしまう。もっとも、1つだけなのでこれだけで解決とはいかないだろうが。

ちなみに、ユリスがレシピを売ると言っているが、実は学園が買取しているのはメダルだけではないのだ。有用と認められたダンジョンのレシピも買い取っており、それを学生向けに販売もしているのだ。

そして、そのレシピの提供者に買取額とは別に利益の1割が渡されるシステムとなっている。


そしてダンジョンを出て、広場に戻る。

他のクラスメイト達と一緒には来たが帰宅は各自でという話になっていたので、すぐに生成の列に並びなおす2人。どの配置で生成するか相談しながら順番がくるのを待つのであった。


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