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最果ての魔女 ~魔女となった少年の時を超えた復讐の旅~  作者: くぼってぃー
エルフの森と目指した英雄
20/27

番外EX ロベリアの誓い

今回はクラリスとミーニャの過去についての番外編です!

新年明けましておめでとうございます!(2022年1月1日)


追記、番外編から2章に移動しました

――――――――暗い森の中、人影も無くあるのは孤独と消失感・・・

 頭痛が酷く体が動かない。目の前は永遠と続く暗闇に覆われ意識が奪われていく中、誰か分からない影と白黒の光がこちらを照らす。


「私をいつか必ず救いに来てね・・・」


「・・・!!」


 そして思い出す、彼女の存在、命を賭けた争いに敗してここにいる事を・・・

世界を覆す程の聖戦、全てを無に帰すあの存在が生まれた日から何日、何ヵ月、何年たったのかも分からない。だが、同時に感じる・・・自分の体と意識はあの時分割されて無に帰したはずだ。それなのに今もこうして考えられる。つまりまだ死んでいないということだ。


「苦しい・・・痛い・・・」


 意識と思考の次に訪れた物は苦痛と吐き気の両方だった。そして白黒の目の前に色と景色が見える。だが、やはり地面が白く寒い。季節が恐らく冬だからなのだろう。寒さを耐えて進もうとしたが、目を凝らし手を見ると、あるはずの手はグズグズの肉になっており、足は原型を留めておらず液状化しつつウジ虫が沸いていた。


「・・・との誓いを果たすんだ・・・」


 声にならない声になりながら這いずり進む。一つの目的の為に一歩一歩少しずつ歩む。痛みに耐えていると、少しずつ1日に数ミリ感覚で再生している事を感じる。意識を削り、精神を削りながら這いずっていく。


――――――何年かかったか分からない・・・途中、獣に襲われたり、ウジ虫が完全に侵食して機能を失ったりしてはの繰り返しで、1日に50メートルを這いずるのが限界だったが、森を抜け人里のような所に近づけた。里が見渡せる程の距離にあった近くの樹木に少しずつ再生してきた足で近づく。木にたどり着き安堵をしてそのまま意識を失った。


 意識を失いあの時の夢を見る。彼女と私の儚い夢物語、意識を失い夢見る時の唯一の楽しみ。ロベリアの花畑で彼女と誓った約束・・・


 だが、その約束も果たせないまま彼女は・・・死んだ。白黒の情景に彼女の影が写し出される。優しい笑顔と轟ヶと燃えるような瞳、広大な大海を連想させる髪、その全てが目に焼き付く、それでも白黒の世界では彼女の姿形をした影しか残らず屍を連想させる。彼女の影は「嘘つき」と言いたいような気持ちで白い涙を流し、ロベリアの花を踏みつけながらゆっくりと濃く禍々しい霧の方へと歩んだ。


「まっ、待って!」


 手を差し伸べようとする度に距離が離れていき彼女の影は霧と同化するように消えて行った。そして自らが作り出した白黒の世界は終わりを迎え・・・崩壊した。


「はっ!」


 荒々しい息と冷や汗を流しながら目が覚める。気がつけばあの木とは違うどこか別の場所のようだ。


「お目覚めになりましたか」


 目の前に眼鏡を掛けた白髪で耳長な少女がいる。どうやら彼女がここまで連れて来てくれたらしい。 


「君が俺をここに連れて来てくれたの?」


「ええ、薬草を探しに行った際、貴方が重症で匂いも酷かったから連れてきました」


 彼女は冷静で感情が無いような顔と口調をしていたが助けてくれた恩人には変わりが無い。それでも少し寂しい気持ちになってしまう。


「助けてくれてありがとう、ここはど・・・」


「貴方には私の質問に答える義務があります」


 彼女は喉仏に鋭い剣を突き付けようとするが太刀筋があまりに遅く、再生と完璧な治療を受けた手で受け止めた。


「ぐっ!」


「いきなりこんな危ない物を突き付けてくるなんて、危ないじゃないか」


 彼女は悔しそうな顔をしながら剣に力を込める。それでも剣はびくともせず両方向からの力に耐えきれず折れてしまう。


「何で、こんな力を」


 彼女は力を込めた手を押さえながら警戒を続ける。少なくとも彼女の剣撃は並の騎士よりも速かったが、その剣を扱う技量が少し足りない気もする。それでも彼女には才能がある。伸ばさないのは勿体ないが彼女は今それどころでは無い。折れた剣の破片が手に刺さり、怪我をしてしまった。


「ごめん、恩人なのにこんな酷い事を・・・」


御託(ごたく)は結構です!それより貴方の目的を・・・」


 正直目的等無かったが、やはり怪しいと勘違いされる。それでも彼女は目的等を語って敵か味方かをはっきりしたいようだ。


「君達を助けに来た、かな?」


「はっ?」


 彼女は目の前で爆発が起きたように目を白黒させる。適当に言った目的だったがここに長いする予定も目的も無かったので適当に言って置けば大丈夫だと思いながら言った。


「じゃあ、貴方が、あの英雄・・・なのですね」


「えっ?」


 何を言っているのか意味が分からない。第一英雄とは何のことだ?ここに着くまでの時間が長すぎて今の事情や出来事が分からなかった。だが、彼女は見せることの無かった感情を表にして涙を流す。今さら嘘だと言って彼女を泣かせるのも気持ちが悪く、自分で言ったことだから断れなくなってしまった。


「あっ、ああそうだよ俺があの英雄さんだよ」


「良かった、これで・・」


 彼女の泣く姿を見てそれが嘘や偽りの涙で無いことは一目瞭然だった。


「涙を流さないで、君達全員助けるから」


「はい、すみません、でも嬉しくて」


 彼女がいるこの場所、この地にはどのような事が起きているかも分からなかったが、彼女は本物の涙を流してすがり付いて来た。それに答えられずに夢で見た彼女との約束を叶える事も支えていく事も出来ない。必ず全員を助けよう、そう誓ったのだった。


「そう言えば君人間じゃないよね・・・人よりも魔力が多い、それに人に似て違う匂いがする」


「はい、私はハーフエルフのミーニャと言います」


 道理で少し人に近い匂いとエルフ特有の匂いが混じりあって分かりにくいはずだ。彼女、もといミーニャは少しずつ涙を拭き白い肌が少し赤く染まった所でこの里に起きている現象を語り始めた。


「3年前、我々エルフの領土にて疫病が発生し、多くの仲間逹が息絶えました」


 彼女は悲しそうな顔をしながら仲間の死や現状を話していく。


「3年で死者は数千を越え何とか押さえ込もうと原因を探りました、それでも原因が探せず最悪な事態が起きました」


「最悪な事態って?」


 彼女の顔は悲しみと怒り、救えなかった自分への憎悪と嫌悪に溢れて周りに負のオーラが流れていた。


「転移したんです、私達が作っている野菜や土、植物に・・・くそっ!私が一刻も早く特効薬や治療法を見つけていれば、妹は!」


――――――数年前



「ミーニャお姉ちゃん!」


 妹は私と違って活発で皆に親しまれていた。腹違いで私は妹を妬み恨み、憎んでいた。彼女は憎まれているとは知らずに皆と接して親睦を深めていく。彼女の顔といつも笑っている顔に吐き気と嫌悪感が絶え間なく、消えて欲しいと何度も思い、頭の中で何度も殺す瞬間を創造した。


「お姉ちゃんは私の中で一番の世界一大好きなお姉ちゃんだよ!」


「・・・・・」


 私は何を言われようが無視を貫き通す。それでも彼女は私と仲良くしようと努力を繰り返した。私の好きな木の実を泥だらけになり怪我をしてまで採ってきたり、私が暴力やいじめに逢えば、必ず助けに来てくれる妹だった。それでも気持ち悪く感じて仲良く出来ずにいる自分が変に感じ、やってはいけない事をした。


「お姉ちゃんが一緒に出掛けてくれるなんて初めて!とっても嬉しい!」


「今まで無視してごめんね、これからは仲良くしましょう」


 私は今出来る限りの造り笑いをして彼女と雑談を繰り返し山の奥深くに妹と向かった。山頂の景色は最高だった、これから起きる事を考えると気分が高揚して仕方が無かった。


「とってもキレイな景色だねお姉ちゃ・・・」


「さよなら・・・」


「えっ?」


 私は彼女が山頂の崖付近に来た瞬間、力を最大限振り絞り彼女を高さ120mある山の頂上から落とした。最高の気分と最悪の気分が混じり、私は息を切らしながら走り、家の方へと目指した。家に付き息が上がりながら安堵感を覚え笑った。甲高く人生で一番の高笑いだった。


 だが、それも数時間で終わってしまう。妹は片腕骨折し、足は血だらけでいつも笑っていた気持ち悪い顔はたくさんの擦り傷を作り、膿んでいた。妹は暗い顔をして足を引きずりながら黙って自室に入った。


 今になり思う、私は二度と償う事の出来ない罪を喜んで作った獣のような我欲と嫉妬に狩られた怪物なのだ。傷だらけで暗く憎むような目をした妹を思いだし寝る事も出来ずに涙がこぼれ罪の重さを知った。彼女に対して謝る事も償う事も出来ない私自身が憎らしくなり、自分の体を何度も何度も何度も何度も何度も何度何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も、気が狂う位に引っかき回した。


 そして彼女を崖から突き落としてから2年経ち、彼女はリハビリをしている状態だった、そして私は引きこもり、誰とも会わない事が増え、妹の事を思うと狂うような罪悪感を思い出す。


 そして久しぶりに部屋から出てみると、妹が倒れ体に紫の斑点が写りだす。そう言えば、この里内で疫病が流行っていると数ヶ月前に聞いた事がある。まさか、妹がその疫病にかかっているのか?それなら・・・・確実に殺す事が出来る。そして脳裏によぎるのは同じ間違いを犯し、絶望を繰り返す私だった。もう繰り返さない、そう思い彼女を助けようと部屋の寝具に意識が朦朧となる彼女を運び出した。

 寝室に入ると彼女の額に濡れた布を載せ、急いで薬草を調合し、彼女に飲ませる。彼女の容態は芳しくなく今にも力尽きそうな顔をしている。そこで妹はうっすらと意識を取り戻す。


「私、お、姉ちゃん、が・・・大好きなの」


「リール!!」


 妹は声を掠れさせ空気のような声にならない声になっても叫んだ。死ぬ前に自分を殺そうとした腹違いの姉に対して憎しみの言葉や怨恨を流さず、優しい気持ちで顔は笑っていた。


「私、お姉ちゃんが、傷つく事が嫌なの、悲しいの・・・お姉ちゃんが、私を、恨んでいるのは知っていた、腹違いでも、家族だから」


「っ、ダメ、リールお願い死なないで!」


 私は自分の全てを差し出しても構わない気持ちで願う。すでにほとんど死に体彼女、私が恨み続けていた彼女。だが、そんな彼女は痛く辛いはずなのに満面の笑みを浮かべ私を見る。


「大丈夫、私はお姉ちゃんが、生きているうち、は必ず死なないから」


「っ、今は安静にして! 必ず貴方を助けられる薬を調合して見せる!」


 不可能な事は自分が一番分かっている。それでも妹を救えるなら全てを賭けると決めた私は、家にある全ての薬剤を集め、急いで調合した。


「これを飲んで!」


「ぐっ! 苦い・・・けど姉ちゃんが調合した薬なら、必ず、治るよ」


 だが、妹はもう手遅れで数分後、眠るように息を引き取った。救えなかった喪失感と絶望に襲われ、全てを恨んだ、特に自分を恨み続けた。世界よりも妹を救えない自分が憎らしくてたまらなかった。


―――「私は、あの疫病が憎い、私の妹を奪った、私の彼女へ償う機会を奪った疫病が憎い、だから人里に行き、英雄と呼ばれる奇跡の存在を頼ったのです」


「そうか、そんなことが・・・」


 彼女の話を聞き、疫病を根絶させる事で彼女の恨みや気持ちが晴れる事は二度と訪れないが、それでも本気の彼女に対して嘘を付いた私の罪を消すためには英雄を演じきり、疫病を根絶させる事が必要だ。


「その話は、この英雄クラリスが引き受けた!」


「ありがとうございます、本当にありがとうございます」


―――――――まずは情報収集を始めよう


こんにちは!投稿遅れる底辺作家くぼってぃーです!

今回は本編と少し関係あるかな?の番外編を書きました!

新年でとてもめでたい事ですが、今年もよろしくお願いいたします!

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