神殿への来訪
僕はローレライと「めーる?」交換をしてから、彼女の家から散歩感覚で神殿へと向かう。最初に宴会場に足を踏み入れ、ボコボコになって気絶しているスライムに渾身のパンチを繰り出し、目を覚まさせる。
「ーーーー!(痛っ、痛い!)」
「昨日の分のお釣だ、受けとれ!それより神殿に行くぞ」
「ーーーーー?(ええ、もう行くの?)」
スライムが不満そうにするが、それを気にせず足早に神殿の方へと向かう。途中、昨日の宴会場にいた人から回復用の薬を少し貰った。神殿にはどのような危険があるのか分からないのでかなり慎重な準備を重ねた。
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~エルフの領地 神殿前~
全体的な装飾は無く、白色で統一された外見。まさに神殿と呼ぶにふさわしい神々しさを保ちつつ、そこから流れてくるオーラに近しい気配に少しの冷や汗を流す。乗り気で無かったスライムは、もっと冷や汗を流しながらぶるぶると震える。
「ーーーーーー!(こんな所無理だよ!諦めようイヴァン!)」
「少し黙っていて……」
「………」
スライムには悪いが僕自身の体も、この壮大な魔力を感じとり金縛りにあった用な気持ちになる。特に魔物等の種族は人間よりも魔力の感知に長けている為、実力の差が分かるが、魔力を感知出来てもそれを理解する知識が足りない魔物の方が圧倒的に多いので、大体の魔物は、勝てもしない相手に突っ込んで殺される。だが、この神殿から感じる異質な魔力は、そんな魔物でも逃亡を余儀なくされる程の物だった。
「ーー行くぞ………」
「ーーーーー!(あぁ!待って!)」
それでも臆する事は無く、ゆっくりと歩みを進めて行く。神殿の中を歩くと、自分の靴音が反響する程の広さだった。
だが、その広い空間には暗闇と影の冷たさだけの虚構の空間である。それでも、クラリスを信じたミーニャが、死の間際にここを訪れると良いと言った場所なのだ。何も無い方が不自然さを出している。
「とりあえず、暗いから明かりを出そう(光乱たる領域)」
イヴァンは無詠唱を極め、なおかつ魔法を酷使する代償も最小限に押さえる事が用意となっている。少なくとも並の魔物なら苦も無く討伐できるだろう。しかし、このオーラに関しては別物だった。イヴァンが放った魔法「光乱の領域」は、近く(約1キロ圏内)の暗所を魔法で作り出した光によって、数時間照らし続ける魔法だ。しかも便利なのが、魔力の強さ等の情報をある程度頭に入れられる事である。そこで見たのは、下の方に魔力が集まっているという事と、深淵の方に近づけば近付くほど、恐ろしく感じる魔力が漂っているのである。
「(スライムもいるし、なるべく慎重に行動しよう。もし仮に魔物が強ければ逃げればいいし)」
そうこうしている間に、先程までの暗い世界は優しい光に包まれていた。イヴァンから見て前の方向に縦長で、イヴァンの腰辺りまでなら届く石板のような物が存在感を放っている。近づき、上の方を見ると文字が書かれている。少し年代が経っていたが、難なく読める物であった。
~コノサキススムベカラズ。コノサキハナミノカクゴデイクベキバショニアラズ。モシススムノデアレバソレニミアウウデトカクゴヲシメセ。スベテノカイソウヲセイハスレバ、ワタシトカノジョガタクシタイモノヲキサマニワタス~
恐らくこれは、ブラフでも引っかけでも何でも無い、ただの注意喚起だろう。大悪魔クラリスが太鼓判を押すほどなのだから余程の覚悟と決意が必要な物と感じ取れる。だが、それでもクラリスとミーニャが託そうとした物をこの目で見届けると誓ったのだから、振り返らずに僕は進む。スライムも後を追うかのようについてくる。
あの石板から少し進むと、3メートル程の巨大な扉が現れる。扉は恐らく試練の役割をするのだろう、この扉からも魔力を感じる。罠に近い術式が扉に仕込まれている。それも、並大抵の人間なら扉に生命力を吸われる程の危険な術法である。これがクラリスが石板で警告した力の無い者は去れと言った意味だろう。もしこの扉に触れた命知らずがいたとすれば、骨も残らず扉に吸われている。それでもイヴァンは手を触れ扉をおもいっきり開く。「バタン!」という大きな音と共に扉は開かれた。
「よかった、開けた………」
少しの安堵と恐怖心はあったがそれでも扉を開けられたという達成感に今は胸を踊らせているイヴァンだった。
ーーーしかし、これが絶望を開ける扉と言うことは誰にも知るすべは無かったーー
こんにちは!くぼってぃーです。
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