探索の前夜
トイレしてたら遅れましたすいません!
―――ローレライは緊張の糸が切れたかのようにイヴァンを引っ張ろうとする。それは嫌な気分では無く親しい友人のような関係だった。
「とりあえず温泉の後は飯です!良い場所知っているので行きましょう!」
大人の風格を見せた彼女だったが、今の彼女は明らかに年齢の低い子供のような振る舞い方で生き生きしていた。
「ちょ、待っ!」
彼女は言葉を聞く前に代金を2人分払い店を飛び出す。周りを見るとざわざわしている。その顔を見ると機嫌が悪い嫌悪している顔を見せた。何故そのような顔をするのかは一目瞭然だった。
「あっ、着け耳!」
ローレライは気づいたように走り、山中のような所へとイヴァンを連れて行く。
「ごめん、着け耳返すのを忘れてた」
そう言い、彼女は谷間から着け耳を取り出す。後少し遅ければイヴァンはトラウマをフラッシュバックさせて誰彼構わず傷つけただろう。ローレライは無邪気な表情から、申し訳無いような顔になる。
「もういいよ、それ」
「えっ?」
イヴァンは心が少し落ち着き悲しくなってしまう。自分は姿を変えなければいけないのか?人間の姿をして人間の生活をすれば魔女と疎まれ、人間からエルフの姿になりエルフの生活を見ても疎まれる、そんな世界は間違っている。否、世界が間違っているのか?僕自身が間違っている存在なのか?そう思い怒りと悲しみが沸く。
「明日、神殿に向かうから今日はここら辺で野宿する、だからもう帰って」
「えっ、でも着け耳を着ければ・・・」
「もういいんだよ!」
彼女は着け耳を渡そうとしたがイヴァンはそれをはね除けて心の内に秘めた言葉を叫んだ。
「これ以上自分を偽るのは嫌なんだよ!自分で自分を殺すしかないこの世界が嫌なんだよ!」
彼女へ怒りと憎しみを込めた本音を言う。彼女に話す自分を表すなら獣と表すのが正解だろう。魔女になってから本音を言える相手はクラリスとスライムだけだったが、ローレライには怒りと悲しみの本音だけが出た。
「そもそも、この世界が間違っている!何で、僕だけがこんな目に合わないといけないんだ!どこに行っても差別され・・・夢も希望も失った!」
正直彼女への八つ当たりにしかならない、分かっている。だが、自分の気持ちに支配されどうする事も出来ずにいた。そんな怨念がましい雑言を連ねてローレライは失望するだろう。自分が英雄と称え親友のような距離で話した人が、少しの事で絶望し、悲願し、同情を求めさ迷う愚かな魔女・・・・・
「・・・・・!」
それは突然の事だった。ローレライはうつむいたままこちらに近づき抱き締めてくる。肉厚で丸みを帯びた胸が顔を包み込み、それと同時に暖かさを感じる。どこかで味わった暖かさに戸惑いながら記憶をたどる。それは何年前か分からない程昔の事、暖かい愛を感じたあの日。生誕のすぐ後の事。
「もう、悲しまなくて良いんだよ、辛いなら言っても良いんだよ、打ち明けられないのなら逃げても良いんだよ・・・」
彼女は目に涙の粒を浮かべ優しい口調で話す。イヴァンが言った言葉の暴力を受け流したり、攻めたりするのでは無くただ言葉で丸め込んだ。
「貴方だけじゃない、この世界は間違っていると思う人は」
「えっ・・・」
憎しみと怒りに身を任せ忘れていた、自分と夢を語り会い朽ちた親友の事を。
あの日、あの場所で約束を交わした彼を・・・・
「クラリスっ・・・・」
彼程世界を変えたいと思う者等いなかっただろう。彼は死ぬ直前まで世界を変えて欲しいと言った。その願いを聞き叶えたいと考え今ここにいる事を忘れていた。
「ん?イヴァンさんクラリスさんと知り合いだったの?」
「知り合いも何も彼の願いを聞き届けここにいるんだから」
それを聞きローレライは唖然としつつ満面の笑みを浮かべた。
「それならそうと言ってくれればよかったのに!」
彼女に言うのを忘れていた・・・そう言えばこの里の人達はクラリスに恩があるのだ。それを思い出すと服から金属製の薄い箱を取り出すローレライ。彼女はその箱に長い耳を突き立てしゃべる。
「もしもし?私だけど、うん、私、今人間の人といるけど、うん、その人がクラリスさんの友逹らしくて、うん、いま町の中心部から少し離れた山にいるからお願い」
意味の分からない言葉使いと口調に戸惑いながらも内容を解読しようと思い聞き耳を立てるが全く分からない。
「それじゃ行こうかイヴァンさん」
これからどのような目に合うのか緊張してしまうが彼女は笑って手を引っ張った。さっき登った道を下り、歩いた。そして先程出た里の中心部に着く
―――――そこは先程よりも輝かしくお祭りムードだった――――――
どうも!積雪に困っているくぼってぃーです!この積雪だと家に引きこもるしかなさそうですが明日も連続投稿出きるよう頑張ります!




