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程なくして敵陣の第2波が襲来する。
地球側でも平和に向かったと思いきや、首脳陣が変わらぬので考え方は根本的に変わらないようだ。一昔前の戦争方法を繰り出すようだが、再起動させた電子機器によって軍事力を取り戻そうと足掻いている。簡単に言えばショートさせたようなものなので関連部品の交換で復活は近い。そもそも、軍事基地に焦点を当てただけであり、軍事用製品は民間にも委ねられている為、全ての根絶には至っていない。
ホーク陣営側のサーチによって第2波が襲来するが、最初の時とは違って敵軍もグレードアップしてるようだ。やはり向こうさんも様子見の第1波だったようだ。意外と強力な武器を使用し、ホーク陣側の艦隊のいくつかに打撃を被ってしまうが、アンドロイドが乗組員の無人艦隊とも言えるので怪我人は一切出ない。
第2波に続いて主力本体も追従してるようで、ホーク陣のバリア形成にも打撃が加えられ始めていた。的がデカイのもホーク陣の弱点とも取れるが、その中には無数の小型化した戦闘機がある。全てがAIによる操縦と展開であるが、少なからず予想外も発生していた。
敵陣にとっての予想外はホーク自身であるが、そのことは知らない。
戦闘も激化していく中で、シル星からの援軍も加わるが防御に徹していた。
3つの銀河間の中間地点からシル星寄りであるので、ホーク星には被害は出ていない。だが、戦闘艦の追加出撃は増加していく。
小型化した戦艦や戦闘機を急ピッチで組み上げての出撃が繰り返される。
そんな中で、地球での神風攻撃を思い出したホーク。敵軍に攻撃を加えつつ、機体そのものがミサイルと化すのである。乗員もいない自動操縦の機体を敵に突っ込ませていくので死傷者は居ない。古い機体であろうと、まるでゴミを投げ付けるかのように敵軍に放り出しては、ホーク陣営内では戦闘中にも関わらず笑顔が溢れる。
敵軍は、そんなことは当然知らないので全てに対して攻撃してしまう。フェイクと本体の区別がつかないので不意打ちも受けていた。しかもフェイクと言いつつ強力な爆発力を持ったコアが内蔵されているので、どう足掻いても撃ち落とすしかないが被害は甚大である。
漸く戦力差が敵軍にも見え始めた頃、隠していたような主力武器での攻撃が始まった。一発が放たれたその主砲らしきもので、ホーク陣の艦隊の一つが消滅してしまう。しかも敵軍の見方も居たのに一緒に消滅させていた。
報告を受けたホーク陣営本部では笑顔は去り、逆に怒りの表情も浮かぶ。
ホーク自身も眉間にシワを寄せての返答であった。
「何っ?・・・いくつ消えた?・・・そりゃ、こっちも本気出せってことだな。2発目がシル星に当たらぬよう誘導して、こっちも主砲ぶっ飛ばしていけ!もう、容赦するな。敵の星ごと吹っ飛ばしてもいい」
何故か微笑みを浮かべそうな喜びを交えた返事のソフィであった。
すぐに指令が下され、他の者もやる気満載で取り組んでいく。
抑制が外れたようであり、武器使用に制限がないことが個々の戦闘本能に火を点けたようだ。これはAIにも施され、戦闘特化仕様になり回避が二の次になるということである。
通信によるハッキング攻撃も行われ、敵のダメージは拡大していく。どうせ、何言ってるか解らない通信内容なので破壊に特化していた。ホーク陣側では通信をせず、あるとしても撤退時の信号受信のみで徹底した攻撃に転じていた。
敵の大型主砲の2発目を放つには時間が掛かるようで、その隙を突いての徹底抗戦が続く。敵側にとって前方は当然であるが囲まれるように攻撃を受けていく。本当に容赦のない攻撃で、回避もせずに突っ込んでいくホーク陣。
その操作をしているのは別艦隊からであるが、疼いている戦闘員もいる。
アンドロイド軍団と自動制御の戦闘機に混じって出撃する輩もいる。
機械が計算していくのと違い、人による予測攻撃も結構良い感じの結果になっていた。
その戦中に地球側の様子も確かめさせる。
こちらは想定内のホーク陣への攻撃がチラホラと再開されてるようだが、武器のレベルが違い過ぎるので問題は全くないに等しい。見た目は普通の今まで通りにしてるが、太平洋上にホーク陣営を築く計画を裏で進めていた。太陽系内にもコロニーを複数組み合わせた拠点も出来上がっており、一見、地球から撤退する用意も出来ているのであった。
ここでホーク自身からの第一級指令が出され、地球側に派遣されている部隊に撤退命令が下された。地球の本土での隠密部隊にではなく、宇宙空間に滞在しているアイン大佐とマリー中佐の部隊である。代わりに派遣させた部隊と交代になるが、地球側は分かりもしない。また交渉が設けられようとしても本人そっくりのアンドロイドが対応するのであった。
戻ることになった2部隊であるが、緊急指令ということもあって最大船速にて帰還する。ワープにて到着と同時に、補給等が行われコロニー内でメンテナンス。女王も兼任しているソフィの直属部隊へと承認され、大部隊が結成された。地球的には考えられないだろうが、このホーク星雲内では王自ら出陣するのが通例となっているのだ。ソフィには補佐官のマリアンヌも着いているが、ホークの強化された血液等の細胞注入後の戦闘能力は格別。地上戦に持ち込めれば本領発揮するであろうが、まだ宇宙空間での戦闘である。
ホーク自身はホーク星の本部の作戦司令室にいた。
人的被害は出ていないので、留まっているがホーク皇帝専用本艦はいつでも出撃可能状態。第3惑星のほうでのイザコザはジャーマン大将とガーネル大佐に任せている。第2惑星は一見平穏であり、上空では宇宙艦隊群が犇めくようにいるが、住民は至って普通に暮らしている。第1惑星であるホーク星の上空でもコロニー型の艦体集積場がいくつも展開されている。そのうちのいくつかに住民もいるコロニーもあるが、外壁を天候の景色にしているので直接の宇宙空間は見えない。
その見えないおかげで、引切り無しに艦が出入りしていることは住民は知らない。離れた場での激しい戦闘が行われていることもニュースにはならないので、全く違う光景であった。一方で平和な日常が繰り広げられ、もう一方では激しい戦闘なのだ。
ホークと共にいるのは参謀のオリガーであるが、主力AIに命令を出しているのはホーク自身であった。制空内統制、地上統括、宇宙艦隊の配置などもホークが決定している。オリガーは戦略などを伝えるが、まだまだホークのほうが上で日々勉強させられているオリガー。だが、大半の戦略の基礎はホーク自身が築き上げたものであるが、オリガーのヒントも役に立っている。
この戦闘時の最初の命令が、主力砲を含む武器の威力を半分以下に抑制させていた。遠隔操作にて古い戦艦や廃棄予定の艦などを誘導させ、盾換わりにしていたのだった。敵に無駄に撃たせて廃棄処理の代行をさせていくホークの案は至って有効であり、敵側は補給しないと連続戦闘は出来ないという情報が得られたのだ。その点、ホーク側は半永久的に発射可能な武器を備えており、威力も抑えていたので砲身の加熱も抑えられている。
それも敵の高出力砲が発射されるまでのことであった。
意外な一面の武器に対して総攻撃に出たホーク陣営は、その高出力砲の破壊を第一目標に定め、前進していく。敵も中々で、囲まれつつあった包囲網の中で頑張っているようだ。だが、シル星方面への別部隊が徐々に蹴散らし始めたのでソフィが束ねる部隊群が出撃したのだ。
敵は太陽系方面には向かっていないのが幸いであるが、戦闘の行われている空間では数百隻の艦同士が戦闘を行っている。無人機の数はホーク側のほうが圧倒的に多いが、血の気の多い隊員も戦闘に出ていた。その機体には無人機の護衛も付いているので早々撃たれて破壊されることはない。
出力を抑えた武器は20%の威力であったが、わざと撤退するように見せ掛けて敵を誘い、威力を50%まで上げて一気に叩く。後方の敵は知らずに次々に送り込んでくるが、スライドするように進む外郭の部隊もいるのだ。戦闘は内側だけではない。
敵の主力砲は円を描くように配置されていることが分かり、外郭から攻めるホーク陣営。敵の星の後方に補給部隊があるようで、そこへも攻撃を仕掛けていいく。まだ半分の威力しか出していないのは戦闘激化空間のみであるのを敵は知らない。
ステルス機能を使っての超光速移動で敵の後方に位置し、一気に殲滅に掛かるホーク軍特殊部隊。補給艦や施設を次々に破壊し、敵の星のリンド星にも乗り込み破壊をし尽くしていく。軍事拠点らしきとこを重点にしていくが、この星の住民は見当たらない。しかし、敵軍の兵士は皆、爬虫類系に似ていた。
補給路が絶たれた敵軍であったが、構わずに突進してくる傾向があった。文化の違いはホーク銀河内でも過去にあり、今でもそういった文化の違いは存在する。受け入れる努力をしてきたので、それぞれに平和が保たれているのだ。
敵地の乗り込んだ部隊からの連絡で、補給用である基地は殲滅したが、当然のうようにいくつもある内の一つに過ぎない。それでも任務完了とし、次は上空の敵の殲滅に掛かった。後方からの攻撃も受けていく敵軍は散らばるようになり、高出力砲を備える艦が狙われ破壊されていく。見方がいるのに発射する敵の理解に苦しむが、敵の星の地上からも攻撃が来るのを避けながら、ホーク陣は体勢を整えていく。
その頃、シル星のほうではソフィが率いる部隊が敵を圧倒的な戦力で壊滅に追い込んでいた。最後の1隻まで見逃がさずに殲滅していくので、シル星軍のほうは驚き、手を出せずにいたほどだった。戦闘技術然り、艦体の技術も圧倒的に違うので絶対に敵に回したくないトップになったようだ。ソフィの戦略と戦術が大いに役立ったのである。
壊滅を恐れた敵軍がやっと退散していくのが目に見えたところで、ホーク陣営も動きを止め、全ての報告を本部に通達する。高出力砲を備えた艦体が半分以上破壊されれば撤退も止むなしとなったのであろう。だが、ホーク陣営はシル星を防御する編成で宇宙空間に留まるようにした。
離れた場の銀河系での戦闘は一時終了となったが、ホーク銀河内の第3惑星内でのイザコザな地上戦は続いていた。獣人族の反乱が大きくなっていたようだ。そこに住む住民の避難も行い、コロニーや第2惑星への移住も行っていた。知能の低い獣人族が大半を占めているが肉食系が反乱分子である。知能が低いと言っても、言葉は話せるし武器も使えるので厄介なのだ。
一度、敵と見なすと襲わずにいられない習性があり、それも集団認識になるから数も多い。そして弱肉強食を地で行く奴らだから、弱い者は食われるのが当然という思考を持つ。変に知識がある奴がいるようで、野生の勘も重なるから妙に強いとこもある。それに対抗するホーク陣営であるが、戦闘能力もない住民を逃がしながらの戦闘になっていた。目の前に敵だらけなら戦いは単純に決着が付いているであろう。
だが、ホーク自身が命令に組み込ませたのは、新人や階級がまだ低い戦闘員の経験として送り込ませよというのも含まれていた。敵側は知らぬが練習台になっているとは気付きもせずに突進してくるのである。巻き込まれている非戦闘員な住民にはいい迷惑な話しでもある。同じ種族でありながら、そういう文化に生まれた不幸もあるだろう。
避難中であるが、戦闘が行われている地域に大人しい住民はいないのが幸い。よって、取り残されてる者は皆無に近い。だが、横暴な輩のせいで住める地域が狭まっているのは事実であり、戦闘は出来ないが心は敵対心で満たされているのが殆どの草食系獣人が避難民。壊滅に追い込むこともできるが、自然の摂理をも破壊してしまうことになるので抑えるようにしているだけ。単純にいうと避難民は餌な立場になるのだ。
ホーク陣も肉は食うが、それは本当の家畜。
知能が備わっている獣人族を食料にしたことはない。
肉食な獣人族は草食系の獣人族を食料や狩りの的にもしているのだ。よって、今は逆にそいつらを的にしているのがホーク軍の地上戦闘員である。逆にされたらどう思うかなどとという期待を持っても、聞き入れる思考も持たないのが肉食獣人族である。
戦闘区だった宇宙空間から帰還したソフィや他の者は、やっと休める。ホーク星の本部がある特区に戻るのは士官たち。一時終了となったが、敵を全て壊滅させたわけではないので、ある程度の緊張感は作戦部内に漂う。
ホッとしたのも束の間だったのはホーク自身。
地球とは時間の進みも違うので、ほんの数ヶ月が地球側では数年にもなっている。緊急閉鎖していたワープゲートを開くと真っ先に訪れた地球側への代理を勤めていた中村であった。ホークこと大熊鷹士の2つ年上だったはずであるが、もう白髪混じりのシワも増えたオバさんになっていた。染めるなりの改良や他も出来る技術がありながら自然を受け入れているようだ。




