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未来予知にもなるが、向こうさんは経験済みなのだ。
敵の正体も解ったが存在は解らない。
ご老体の者が言っていた通りの状況があったようで、シル星に攻撃があったのが火種となり戦闘激化後にホーク陣に救難要請し戦闘区域拡大で、緊急避難命令とAIのシャットダウンも命じられたようだが、完全停止の削除ではなかったようだ。
だが、向こうさんのAIによると、火種になったのは別にあると判断しているようだ。協力関係になったのは王族の訪れがキッカケであり、そこへ獣人族の片割れが戦闘行為を仕掛け、シル星に攻撃を放ち、そのシル星の部隊から発射されたミサイルが別の星まで到達したのが原因ということらしい。
「ふむふむ・・・ミサイルが戦闘行為と見なされて逆に攻撃を受けたと。・・・しかしちょっと待てよ。そのミサイルを撃つ羽目になった原因こそが獣人族じゃないのか?アイツ等アホの集団だから見境もないんだな、未来でも」
シル星にも思い上がりで攻撃してきたアホも居るのは、現在でも知っている。
その視線を浴びて泣きそうなのは、たった1人。シルビアであった。
シル星のAIはないのかと聞くが、シルビアは一言「ありません」と。
あったら勝ちようがない相手に、宣戦布告するはずがないかと納得。
王族の訪れの年が今年であるので、シルビアにまた攻め入るのはソフィ。
「ぇ?・・・あっ・・・来るとしたら・・・第1王女のお姉様かと」
その名はサマンサ・シールド。
現女王はサーシャ・シールドだが、意外と臆病で王宮から出ないが指令は出している。
未来史であるが、敵になり得るのはリンド星という星らしく、方角を確かめる。これまた別銀河のようだが、よくぞそこまでミサイルが飛んだと思えるが、無重力空間なので止めなきゃどこまでも当たるまで飛んでいくであろう。
おかげで今後の対応策が練られるが、現状をもってしても星が荒廃するほどの威力を持った武器を備える敵に、どう対応するかである。皆が考え悩む中、ホークは単純で明快な案を出していく。
「ん~~・・・敵にしなきゃいいんだ。いや、言い方が誤解を招きそうだな。無視するって意味じゃなく、敵に回さないようにしようってことだ。・・・問題はシル星の奴らが聞く奴らばかりじゃないってことだな。序でに獣人族も居て、その敵となりそうな者も武器は凄いが、方角だけで攻撃に転じた勘違いを含んでる司令官がいるってのが大問題だろう」
更に悩みの種が多くなったホーク陣である。
世の中、広い。宇宙はもっと広い。
並行世界として見ても数年先を行っているようだが、分岐点らしき年代が今年のようだ。未来史を聞いてしまったが、回避や対処ができれば、その先を見ていることになる。
いつまで経っても勘違い野郎や、目先のことばかりの者は居るようだ。
ガーネル大佐には獣人族の一掃を目指した惑星隔離を施させ、オリガー参謀にあらゆる戦略を練ってもらうことにした。ソフィには、何れ訪れるであろうシル星の王族とやらとの交渉に立って貰い、マリアンヌには地下空間の管理を任せ、それぞれの識別コードも上位に上がり、特にマリアンヌは★が付くAに仲間入り。
そして地球側に再度向かってもらうのはアイン大佐とマリー中佐。
念のための地球防衛の役割として太陽系に派遣し、地球側とのワープゲートを一時閉鎖するが、艦内との転送は行われるのでワープ自体を閉鎖するわけではない。
第2惑星のガーネット王とも連絡を取り特殊部隊を派遣、エロジジイことジャーマン大将に第3惑星のバークレイ王との連携を頼んだ。
上空にある各コロニーにも戦艦を配置し、今までにない緊張感をホーク銀河内に漂わせていく。
各配置が行われ、360度展開可能になって漸く一段落出来る。
その頃も、もしも敵になった場合の対処法を検討していた。
何しろ、星ごと丸焼きにするほどの武器を持っていると想定しているのと、第3惑星が2つ目の太陽の破壊によって消滅したという仮説も含まれているからだ。その影響が第2惑星と擬似ホーク星の表面を焼いた可能性もある。
小型化した戦艦が主流になりつつあるが、まだ今までの大型艦を分解した訳ではないので残っている。それを本部命令で搭載AIか、司令官1人でも戦闘可能に造り変えるよう早急に命じたホーク。ホーク艦は元々、ホークのみで動くように出来ているので基本はあるので他の艦の改造も出来る。
搭載武器の偵察機も、より一層の戦闘攻撃機に改造されていく。
乗組員は操縦する者以外はアンドロイドのみになる。
人間タイプ、サイボーグも含めた者はコロニー内や、地上戦に駆り出される予定。ゆくゆくはシル星に派遣される者も出てくるであろう。
広範囲サーチも性能アップになり、シル星の近辺まで届くように改良されている。おかげで、シル星の周りに彷徨く輩も位置が判明していく。
その時点で、シル星も何かの電波を捉えたようで交信が再開し、何か放っていませんかと問いが来るが、敢えて何のことかと惚けさせていた。
シル星の交信範囲はまだ限られているので、交信が届くということは近くにホーク艦隊が潜んでいると思っているようだ。
こんな時にホークはまた、ふと思い過る。
『向こうの人達の残りは、どこに行ったんだ?・・・もしや、あのAIがフェイクか?』
もう一度、確かめるかのように向こうから持ち帰ったAI搭載機器を見て、技術陣に音声対応機器以外を一切接続するなと命じた。
更に、ソフィに耳元で「もう一度、向こうに3隻行かせて3方向で調査だ。ステルスモードは解除するな。アンドロちゃんだけで通信は極力避けたいからデータ収集後に戻らせるように」とし、隠密行動の命令と理解したソフィだが『アンドロちゃん』な名称呼びが少々ツボに入っていたようで笑うのを必死に堪えていた。
本部基地からステルスモードで発進させた3隻は、数時間後にBH内に突入していく。通常航法中の艦隊に紛れられるようにし、ワープ航法もせずに向かうので、こちらのAIにすら察知されぬのは容易ではないが危険信号にはならない。
そのこちらのAIにはホークのみが使用可能な管理者権限なるものがある。
仕様変更や司令官の移行など、アップデートに関することは技術陣でも出来るが、ホークの許可が必要としていた。
そのAIと内緒話が出来るようにしていくホーク。
AIの核となる区画に誰も入らぬよう命じて、ホークのみが入る。
この時点で内緒話になるが、他の者が問い掛けた内容によっては例題として出てしまう恐れがあるので、管理者権限を使用し制限を設けた。
AI「了解しました、ホーク様。以後、許可なき者には一切答えません」
「ん、ヨシ。・・・んでだ。もう一度、向こうのが表した歴史に何かおかしな点はなかったか?そもそも、元がオカシイってのは解ってる」
聞かれなければ答えないのがAI。
関連なければ表示もしないが、余程の不具合が生じるものでなければ提案も表示しない。教えられた事とプログラムに沿った事しか出来ないのが、AIの不便さにも取れるが、そこへ臨機応変度を教えるホーク。
人間の管理のほうが難しいので、地球での職が役に立つ。
これをしないと後後に苦しむのは君だよ的に、納得させるのも上手い鷹士であった。完全分離した世界として捉えさせ、向こうのAIが言う歴史を紐解いていく。会話を続けながらも学習させていき、女性声のこのAIをアイちゃんと名付けてしまうホーク。
何故か単純な呼び名であるにも関わらず、気に入っているAIのようだ。
解ったのはホーク陣ではなくマークで判断しているようで、救出した者達はそれを見ていたのだ。よって並行世界のようでも人は同じではない。人が違えば判断も思考も異なるもの。分岐点となり得ることが、もっと昔にあったようだが時空操作は出来ないので過去には戻れない。
だが、似てるとこもあるので一概に、全く別物の世界とは言い切れない面もある。
向こうの思索に乗ったふりをするのも、面白いじゃないかと通称アイちゃんと一緒に目論んでいたホークこと鷹士。この鷹士という本名もアイちゃんしか知らないようにしたので、別の者がホークを装っても厳重なパスワードの役割にもなる。しかもこのホーク星では使用も利用もされていない地球の言語の日本語表記で覚えさせたので、99.9%の者が書けない。残りの1%は訪れてくる中村などである。
向こうに向かわせた3隻のことも、アイちゃんは確認していたが、やはり通常航行に関することと認識していた。向こうの知識も図りたいと言って、隠密行動も理解させた。同じAIを積んでる艦隊なので同期は簡単。すぐにデータ解析が行われ、地球の高性能なスーパーコンピュータなど赤子のようなもの。
答えは出た。
向こうに地球という星は疎か、太陽系という銀河も知らないようだ。
ただし、敵陣の居る銀河は解っているし、他の銀河にも手を伸ばしていることも解るが、そこが太陽系とは限らない。軸をこちらのデータにしてしまうと元からオカシイ天体には当て嵌らない。元から第3惑星と2つ目の太陽はなかったのだから。
現れたBHを閉じることが出来ないので、敵が現れる可能性は高い。
高水準な武器も備える敵に対して、こちらから仕掛けることは無いにしても準備は万端にしておきたい。
向こうとの年代のズレもあるだろうからと、思っていた矢先にシル星からの訪問者が来たようだ。一定の距離に予め、艦隊を要していたのは間違いではないが、シル星を飛び立った艦隊は5隻のみ。
気付かずに近付く艦隊に待ったを架けたホーク側の艦は3隻。
シル星からの5隻は横に並ぶようにして構えたが、後方にも3隻のホーク側艦隊が居た。しかも大型艦がステルスモードを解除し、姿を露わにしたのでシル星からの艦隊は敢え無く戦わずして敗退。
だが、元々ホーク側とは戦わずに交渉で近付いたようだ。
他の艦だったら攻撃していたかも知れないので、無駄な戦闘は避けられた。
乗っていた最高指揮官はシル星の第1王女のサマンサ・シールドであった。
護衛されているのか、捕虜としてなのかは不明のまま、ホーク陣の本部管轄エリアに移動させられたサマンサの艦隊。
そしてサマンサが乗船してる艦だけが別のエリアに移動させられ、コロニーに艦を固定され下船となる。そこから転送され、本部のあるホーク星に直接飛ばされたサマンサと他の付き人らしき2人の合計3人。
交渉役のソフィが出迎えるが、王族相手であろうが変わることがない姿勢。
逆に第1王女なるぞと、身構える2人が居たがサマンサ自身が抑えに入った。
「突然の訪問、申し訳ない。余は・・失敬。私はシル星の第1王女、サマンサ・シールドと申します。以前、大変な御無礼をした模様で、謝罪を兼ねて真相を尋ねに参った次第です。尚、その時に我が同胞・・第2王女の死亡となった戦闘にお・・」
途中で話しを止めさせたことにも、2人の者が怒りを露わにしていた。
「すまんな、話の途中であろうが、その第2王女とやらが出たので止めさせてもらった。おい、入れ」
ソフィが命じてドアから入ってきた者が連れていたのは、捕まった時の衣装を着せられたシルビアであった。
すぐに本人と気付いたサマンサとシルビアであったが、その場の雰囲気で駆け寄ることは出来ずにいたが、サマンサが連れていた2人は即座に膝を折り敬意を示す。
本人同士が近付き、話しを続けさせていくソフィ。
皇居なるこの建物内で働かさせて貰ってることまで話し、無謀な部下の戦闘行為を止められずに自らも出撃した結果の報いを、処刑ではなく生き存えさせ仕事を与えてくださった感謝があると姉のサマンサに伝えるソフィ。
次の瞬間に、サマンサ自身がソフィの方を向き、膝を折って謝罪していった。
「いや、その処置をしたのは我が皇帝であり、私ではないので顔を上げて欲しい」
と、ソフィは言うがサマンサは憤りを感じて姿勢を崩さず、体を震わせていた。他の2人も同じように膝を折り、サマンサの後ろに居た。
自分らの過ちも認め、寛大な処置に感謝したサマンサは如何様なことでも協力すると申し上げつつ、ホーク星の傘下に入れて頂きたいと願った。
シルビアの死亡報告を母星で受けていたのに、紛れもない本人がそこに生身で生きて居るのだから感謝しきれない様子。通信も途絶えて、代わりにホーク陣が出たのだから死亡と断定されても仕方がない。




