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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第1章:推しに転生

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8/10

1-8:マテリアの王とただ一人の従者

 暁光の巫女に窓から放り投げられ勢いよく落ちていったふわふわぬいぐるみボディの私は、何故か下で待ち構えていたモルに抱き留められ、命の危機を脱することに成功した。


 それは良かったんだけど、落下の勢いあまってモルと一緒に植え込みの中に倒れ込んじゃった。あああごめんモルたん、って口走りそうになったのを慌てて飲み込む。

 さっきモルたんは、このぬいぐるみを「我が君」って呼んだ。ってことは、私はセブとして振る舞わなきゃならない。


「なんでついて来やがった」


 これでいい。私はモルに何も言わずナチュリアに来た。ついて来いとは命じてない。従者としては完全に越権行為だ。

 ぬいぐるみの主を抱き留めた腕に、力がこもる。微かに震え、掠れた声がぽつり、と零れる。


「……うるさい」


 ああ、これ、本気で怒ってる。原作のモルが魂の契りクエストでだけ見せる、主に対する礼節を踏み越えた、怒り。

 心配かけちゃったんだ。外から見たら最高においしいシチュエーションだけど、セブでもない私がモルをこんなに追い詰めちゃいけないよね。


 今すぐにでも全力詫び土下座したい気持ちを、我慢する。あくまでもセブとして、ちゃんと謝ろう。


「……悪かったな。心配かけた」

「……謝ってほしいわけじゃ、ない」


 消え入りそうな声で、モルたんが呟いた。切なすぎる。きっとすっごく心配してくれてて、セブに言いたいことだってたくさんあるだろうに。

 私はセブじゃないけど、セブの言いそうな台詞の中で、今のモルたんが一番聞きたいだろう言葉を言うって決めた。偽者の主だけど、それぐらいはしても許される、よね。


「じゃあ……ありがとな」


 モルたんからの返事はない。けど、何となくだけど、空気が和らいだような気がする。

 許してもらえたのかな。そうだといいな。


 ……さて、とても私から言える雰囲気じゃないんですが、実はこのままここにいるのは非常にまずいんですね。

 ナチュリアの王城敷地内に、敵国マテリアの魔王と従者。一刻も早く身を隠さないと。ただでさえモルたんの容姿は目立つし。


 ちょうど私がそう思い始めた頃、モルたんが私を抱えながら植え込みの中でそっと身を起こした。


「出過ぎた真似をして申し訳ございません、陛下。その体では不自由も多いでしょう。私がマテリアまでお連れいたします。罰は、その後で」


 いやいや罰なんてとんでもないよモルたん!? モルたんが受け止めてくれなかったらこの体は今頃枝という枝に引っかかりまくってボロボロになってたからね!?

 私の脳内ではまだ全力詫び土下座百連発の六十二発目が出たところだけど、あくまでも私はセブとしてモルにお返事する。


「おーおー、とっておきのやつ用意しとくわ。震えて待っとけよ」

「仰せのままに、我が君」


 っはーーーー尊い。「モルにだけは魔王感ゼロで軽口叩けるセブ」という概念、好きすぎる。うまく再現できてるかな。

 モルたんのちょっとフフッて笑う感じのお返事も最高ですね。なんぼでも吸える。

 どう考えても敵国のど真ん中でする会話じゃないけど、どうでもいいや☆


 ぬいぐるみ姿の主を抱えたまま、モルは誰にも見つかることなく城から脱出した。さすがモルたん。しごでき。

 モルたんは原作でプレイアブルにならないから詳しいことは分かんないけど、きっと気配を消す術とか使ってるんだと思う。


 私たち二人は城下町に出た。高く昇った太陽が少し傾き始めている。ナチュリアの繁栄を支える、太陽の恵み。多くの国民でにぎわう町並みを、眩しく照らしてる。


「……」


 モルは私を抱えたまま立ち止まり、城下町を一瞥した。それから気配を消す術をかけ直すと、ヴァニアの転移装置がある裏通りへと歩き出した。


 裏通りの奥にある、一軒の空き家。玄関扉を秘密の手順で開けると、中に転移魔方陣が隠されてるって仕組みだ。

 このことはナチュリア王国の第三王子ヴァニアしか知らない。だから私には、どうしてモルが迷わずここに来て、目の前の扉を開けることができたのかわからなかった。


 そのことをどう尋ねるべきか私が迷っているうちに、モルは躊躇うことなく魔法陣の中央に立つ。

 自動的に転移魔法が発動し、私たちの体はあっという間にマテリア王国へと転送された。


「到着いたしました、陛下」


 マテリア側の転移魔法陣は、木箱や布が無造作に置かれた物置のような場所に設置されている。転移を終えたモルは私を木箱の上にそっと下ろした。


「陛下、その姿のまま行動されますか?」


 モルが恭しく跪き、主に問いかける。どうしよう。アイテムに頼って変化してるから自力では戻れませ~ん、なんて口が裂けても言えない……! 適当な言い訳を考えないと。


「王様がうろついてたら目立つだろ。このまま城まで頼む。ついでに城下の視察も済ませる」

「かしこまりました」


 深く一礼し、モルはもう一度ぬいぐるみの主を抱えなおす。言い訳成功。私はモルに抱えられたまま、物置小屋を出て路地を抜け、城下町へと移動した。


 マテリアの城下町。太陽の光を存分に浴びていたナチュリアとは対照的に、魔晶石のドームに覆われ、色とりどりの蛍石に照らされた薄暗い町。

 ナチュリアよりも機械化された、一見高度に文明が進んでいるようにも見えるこの町は、魔王の底なしの魔力を注ぎ込むことで、辛うじて形を保っている。


 魔晶石のドームの外側では、何もかもを溶かしてしまう強酸の雨が降り続いている。


 マテリアの民は、このドームの中でしか生きられない。全然足りない資源。減り続ける人口。酸の雨でじわじわ削られ奪われていく国土。これが、セブの治めるマテリア王国の現状だ。


 ……モルたんは、ナチュリアの城下町をどんな気持ちで見ていたんだろう?

 奪わなければ、生きられない。巫女が現れなかったマテリアは、ナチュリアから奪うことしか生存の道が無い。

 それさえも時間の問題だ。酸の雨を降らせる黒雲は、いずれナチュリアまでも呑み込んでしまう。


 その行き着く果てが、セブモルが死を迎える通常ルートだ。


 セブモルを救うなら、酸の雨は絶対に止めなきゃなんない。それも、通常ルート・追加ルートのどちらとも違うやり方で。


 やるべきことが山積みでめまいがしてきた。まあでも、原作にないことをしようとしてるんだから、仕方ないか。

 とにもかくにも、まずはこの体をセブに返す。暁光の巫女だろうと何だろうと、使えるものは徹底的に使ってやる。



次回更新は火曜日です!

引き続きよろしくお願いします~!

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